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おっさんと人外を中心によろずっぽく。凄くフリーダム。
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シュガーとリンゴォで短い話。
シュガ+リンは書こうと思っても私にはハードルが高すぎました。
なので短い話とパラレル設定でちょっとずつ書いていこうと思います。
簡単な設定を。
時代的にはSBRと同じぐらい。
リンゴォは果樹園を経営してて、シュガーは親の都合でリンゴォの家に預けられてる。
仲良し擬似親子。逆にシュガーが無防備になついてきすぎてリンゴォはちょっと戸惑ってる。でも嬉しい。
大木のスタンドは彼女自身のスタンドとして健在。桶とか水を溜められる場所でスタンドを発現させると底から水が湧き出てきて、その中にものを落とすとあとはお決まりの台詞。
使いきる云々の設定は無視。でも嘘をつくとやっぱり舌を木の根で引き抜かれる。木の根はシュガーの使っている杖から伸びてきます。
使いきる云々の設定がないので非常に便利なスタンドだけど、大木ではなくシュガーの精神力に依存するためあまり複雑なものや多くのものは作り出せないし、よく失敗して変なものを作り出している。スタンドパワーを大量に使うっぽい。
そんな感じです。
捏造だらけでも許せる方はどうぞ。









「リンゴォ、ちょっとよろしいですか?」
 背後から声をかけられ、リンゴォは振り向いた。そこには両手を後ろに回しながら、こちらを見上げているシュガーがいた。なにか悪戯を考えたような、子供っぽい表情をしている。だが根が真面目なリンゴォは、そんな彼女の表情に気が付くことはなかった。
「どうした?」
「これ、見てくださいな」
 後ろに回していた手を胸の前に持ってくる。その手には、リンゴォの経営している果樹園でなっている真赤なリンゴが一つあった。
「リンゴォに、リンゴをプレゼントします」
 にこりと、可愛らしい笑みでシュガーが笑う。差し出されたリンゴに、リンゴォは彼女の意図がわからずに不思議そうな顔をした。
「ありがとう?」
 差し出されたリンゴをシュガーの手からもらった。だが礼の言葉にどうしても疑問符が付いてしまう。どうしてわざわざ果樹園になっているものを自分に渡すのか、わからなかった。そんな彼の顔を、シュガーはよく見えてはいない目でじっと見つめる。あまりにも熱心に、しかもなにかを期待するような目で見られ、リンゴォは居心地が悪くなってしまった。
「どうした、シュガー。食べたいのか?」
 彼女の視線に耐え切れなくなったリンゴォは、先ほどもらったばかりのリンゴをまたシュガーに差し出した。その反応を見て、シュガーは小さくため息を付く。どこかがっかりとしたような顔だった。
「リンゴォはユーモラスのセンスがないわね」
「は?」
 先ほどまでにこにことしていたシュガーにいきなり真顔でそんなことを言われ、リンゴォはどうしていいかわからなくなってしまう。自分はなにか彼女の気に障ることをしてしまっただろうか。
「シュガー、俺はなにかしてしまっただろうか?」
「いいえ、なんでもないですよ。それよりも早くリンゴを剥いてくださいな。リンゴが食べたくて、あなたにそれを渡したんですから」
 どこか棘のある言葉に内心で首をかしげながら、リンゴォは言われたとおりに危なげのない手つきでナイフを使ってリンゴの皮を剥く。どこかムスッとした顔で切り分けられているリンゴを食べているシュガーを見ながら、リンゴォは年頃の女性というのは難しいな、と思った。



END



たぶん二人は普段からこんな感じ。
意図的にしても天然にしてもボケるシュガーと、ボケを流れっぱなしにさせるリンゴォ。それでもうまくやって行けるのが二人。
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ボス猫シリーズで短い話。
生きていくうえでまず大切なこと。








「・・・なんだ、これは」
 怒りのせいで声を低くしながら、ディアボロは目の前でしゃがみながらこちらと視線を合わせているリゾットを睨んだ。一匹と一人の間には、皿に盛られたキャットフードが置かれている。
「もちろんボスの餌・・・じゃなくて、食事だが」
 言った瞬間、目の前を鋭い爪が横切った。だが十分に予想できた反応だったので、リゾットは十分に余裕を残しながら首を少し後ろにそらして爪をかわす。そして、引っかいてきたその前足と、地面についていたままのディアボロの前足を掴んで抵抗できないようにした。
「せっかくプロシュート達が買ってきたんだ。食わないと勿体無いだろう。今のボスならキャットフードを食ってもなんの問題もない」
「殺すぞ貴様!人間としての尊厳に問題があるわ!というかさりげなく肉球を触るな!」
 前足を捻って拘束をなんとか外そうとするが、しょせん今は猫一匹の力なのでびくともしない。
「まぁそう怒るな。ほんの冗談だ。ちゃんとボスの食事も用意してある」
「いいや、嘘だな。絶対にあわよくばキャットフードを私に食べさせようとしてただろ」
 ぎゃいぎゃいとわめく相手を無視しながら、そしてちゃっかりと肉球をふにふにしながら、リゾットはところで、と尋ねるように言った。
「今のボスに玉ねぎは大丈夫なんだろうか」
 その言葉に、ぴんと耳を立ててディアボロは固まる。そしてリゾットを見上げた。
「人間と同じように食べて死んだなんて言ったら洒落にならないぞ」
「それは・・・」
 猫の姿になってから玉ねぎなんて食べたことはないので、ディアボロは答えるに答えられない。万が一のことも考えれば試してみよう、というわけにもいかない。
 大人しくなったディアボロの前足をリゾットは放してやる。そして、キャットフードの盛られた皿を彼の鼻先に近付けた。
「やはりその姿の時はこっちだな」
 次の瞬間、怒号と同時にくりだされたネコパンチによって、キャットフードは床の上へぶちまけられた。
 結局、ディアボロの食事はリゾットが彼のために玉ねぎを抜いた皿を与えることにしたという。




END









いい機会なのでさりげなくボスを虐めるリゾットの図。
まだ暗チに猫の正体がばれる前だと思ってください。

これで相手がジョルノだったら無理矢理食べさせられてるレベル。玉ねぎもキャットフードも。

ジョルノとジョルノ母です。
この二人は親子というか友達感覚だったら良いと思います。

ノリ的には、僕の彼女を紹介します、的な感じです。









 いつもは学校の寮かパッショーネのアジトで寝泊まりをしているため、家に帰るのは久しぶりだった。まだ若い母が少女のような笑みで出迎えてくれるのを見て、ジョルノはやはりなんだかんだで自分の帰る場所はここなのだな、と思ってしまう。
 今は料理がからきし苦手な彼女のためにカルボナーラを作り、二人でテーブルを囲んでいた。まだ外は少し明るく、少し早い夕食だった。
「ハルノ、あなたそろそろ彼女ができたんじゃないの?」
「・・・母さんは毎回、会うとそれを聞くね。飽きない?」
 フォークを片手に握りながら、好奇心を隠しきれないという様子で尋ねてくる彼女に、思わずため息が出た。どうやらジョルノの彼女と一緒に買い物をしたり映画を見にいったりして女性同士で仲良くするのが夢らしい母は、ジョルノが帰宅するといつも同じ質問をしてくる。嫁姑問題の心配をしなくてもいいというのはありがたいが、こうも毎回だとため息しか出てこない。
 特に今回はやたらと表情が期待の色に満ちている。最近は組織の方が忙しくて以前ほど家に帰れていなかったから、事情を知らない母はおそらくそれはジョルノに彼女ができたからだと勘違いしているのだろう。
 どうしたものかとジョルノは考える。頭にはピンク色の髪を持つ中年の男が浮かんでいた。彼のことを母に紹介をしてもいいが、そうするとあのファザコンな娘が煩そうだ。そうでなくともただでさえ自分と彼の間を邪魔してくるというのに。
 ジョルノはしばらく思案して、まぁ後々は誰がなんと言おうとあの男を手に入れる予定だし、それならば先に母に紹介をしておいていいだろう、という結論に達した。
「まぁ、好きな人ならいるよ」
 この一言に、母は一瞬驚いたような顔をしたあと、興奮したように頬を少し赤く染めた。
「やっぱりそうだったのね。どんな人なの?今度、家に連れてらっしゃいよ。母さんが料理を作ってもてなすわ」
「・・・母さんが、料理を」
 矢次早に喋っていたのを聞き流していたが、流石に最後の言葉は聞き流せなかった。息子が夕食を作ってあげなければいけないくらい、母は料理が下手だ。壊滅的だ。たとえどれだけ飢えていようと、母の手料理だけは食べまいとジョルノは日頃から思っている。
「なによ、その反応」
 ジトリと睨まれてしまった。
「いや、別に」
 不自然にならない程度に目をそらす。相手はしばらく納得がいかないような顔をしていたが、やがて諦めたように小さく息を吐いた。
「それで、どんな人なの?」
「なんていうか、猫みたいな人だよ」
「へぇ、意外ね。ハルノは従順な犬タイプが好みだと思っていたのに」
 母の言葉を無視しながら、ジョルノは言葉を続ける。
「気まぐれだし我が侭だし、自分の主人にしか気を許さないで甘えないくせに、色気ばっかりは振り撒いてる人。正直、触るなって方が無理だ」
 猫が腹を出して寝ていたら撫でてやりたくなるのが普通だ。しかし撫でようとすると爪を立ててこちらをいかくしてくる。しかもその飼い主までこちらをいかくしてくるからたまったものではない。少しくらい触らしてくれてもいいのに、と思う。ジョルノの場合は触ったら触ったで少しでは済まされないのだろうが。
 悩ましげにため息を吐くジョルノに、彼女は同情半分好奇心半分の視線を向ける。大人びて見えるけど、こうやって恋愛事に悩んでいる姿はやっぱり子供ね、と思った。
「ハルノはなんでもそつなくこなす子だと思っていたけど、また厄介な人を好きになったものね。母さんわくわくしちゃう」
「なにそれ。所詮、他人事ってこと?仮にも母親なんだから応援するとかないの?」
「じゃあ逆に、私に応援されて嬉しいの?」
 問い返され、ジョルノは言葉に詰まってしまう。確かに自分の恋愛事を彼女のお楽しみの対象にされるのは腹立たしいが、この母親らしからぬ母親に応援されるというのも腹が立つ。結局のところ、どうしようもない。
 ジョルノが疲れたようにため息を吐くのを尻目に、母はなにかを思い出したような顔をした。
「やっぱり、血かしらね」
「なにが?」
「あなたの実の父親も、報われない恋をしてたのよ。なんでも義兄を好きになったけど、恋は実らないまま最終的にはその義兄と殺し合ったらしいわ」
 いやまだ報われないって決まったわけじゃないし、いきなりそんな写真でしか知らない父の暴露話はいらないから。ジョルノはそう言いかけたが途中で口をつぐむ。よく考えるとあまりにも実父と自分の状況が酷似していた。男同士だし、殺し合っちゃったし。
 今自分がうまくいかないのはお前のせいか、とジョルノはおかど違いな逆恨みをしてしまう。もし実父が生きていて、この先、万が一にでも会うことがあるのなら、真っ先に文句を言ってやろうと思った。口より先に手が出ないという保証はないが。
「ハルノの彼女、ぜひ見てみたいわ。写真とかないの?」
「あるよ。ほら」
 いつも持ち歩いている写真入れを母に手渡す。そこには以前なら実父の写真が入れられていたはずだが、別の人物の写真に入れ替えられていた。しかし吸血鬼の子供を産んでしまうような、良くいえば器の大きい、悪くいうば無頓着な女である彼女はそんなことなど気にしない。
「あら、ずいぶんと美人さんな男性ねぇ。ハルノもセンスがいいじゃない」
 そしてたとえ息子の片思いの相手が自分と同じほどの年齢の男であっても、アングル的にどう考えても隠し撮りな写真でも、一切気にしないし気にならない。
「絶対に家に連れてくるのよ」
「なに?わたさないよ」
「狙うかどうかは私が実際に彼と会ってから決める」
「娘が嫌がるかも」
「娘さんもいるのね。じゃあその子も連れてらっしゃい」
「・・・まぁ機会があったらね」
 一応、結婚をしている身で、しかも息子の片思い中の相手をそんなふうに言うなんてなんて母親だ。ジョルノはそう思ったが、こういうところで彼女と自分は本当に親子なんだな、と感じる。マイペースで自由奔放な性格が似すぎている。
 母の背中を見て育ったわけではないのに、やはり血というのは凄い。そして話を聞いた今、父親の血のことも考えると先行が不安になってくる。だがそれよりも、今は目先の不安を解消しなければいけない。
「二人を連れて来るときは言ってね。私、腕をふるって料理をしちゃうわ」
 どうやって母の作る料理を口にするのを回避しようかと考えながら、ジョルノはフォークですでに冷たくなってしまったカルボナーラをつついた。



END






ジョルノ母を書いているといつもこの人が最強なんじゃないかと思ってしまう。色んな意味で。
たぶんドナテラ様といい勝負です。

ちなみにこの場にというか、家に義父はいたけどジョルノが無視してるだけです。食事も二人分しか作ってません。
それが当たり前なので母は気にしない。

早人と吉良で短い話。
早人の片思い。





 並んで歩く。僕は登校。彼は出社。彼が乗る駅に着くまで、僕達は毎朝並んで同じ道を歩いている。
 決まって彼は僕の少し後ろを歩く。いつも変わらない神経質そうな革靴の足音が少し後ろから聞こえた。
 彼に悟られないようにしながら、僕は横目でちらりと彼をうかがい見る。黒い目は真直ぐ前を見据えていた。なにを考えているのかよくわからない。
 視線を動かして彼の手を見た。綺麗な肌と、美しく整えられた手と爪。彼のように特殊なフェティッシュを持っていない僕でも、その手は美しいと思う。たぶん彼自身が美しいから、手も必然的にそうなるのだろう。
 手を繋ぎたいな、と思う。手を繋いで、彼と並んで歩きたい。でも目立つのが嫌いな彼はこんな道の真ん中でそんなことをしてくれないだろう。
「つまんない・・・」
 僕の小さな呟きが聞こえたのか、真正面を見据えていた彼の視線が動いた。僕と視線が合う。彼は手も美しいが、この吸い込まれるような真黒な目も美しいと思う。
「なにか言ったか?」
「別に。ただ、いつもあんたは僕の少し後ろを歩くな、と思って」
 僕の言葉に、彼はわずかに表情を変える。それがどういった意味の感情なのか、僕にはわからなかった。
「父親を殺した殺人鬼と、並んで歩きたくはないだろう?」
 それはその言葉通りの意味なのだろうか。それとも僕と並んで歩きたくないからただの口実だろうか。どちらにしても、やはり僕にしてみればつまらない。
「おい、早人・・・?」
 不審げな声で彼が僕の名を呼ぶ。しかし僕はそれを無視したまま歩き続けた。僕の手には、彼のネクタイが握られている。手が握れないのなら、せめてこれだけでも。
「目立つだろうが、やめろ」
「やだよ」
「なにが目的だ?」
「あんたにはわかんないよ、絶対に」
 素直に彼と手が繋げたら、そして好きだと伝えられたらどれだけいいだろう。でもきっと、言ったところで彼に僕の気持ちは伝わらない。なら最初から言うこともないだろう。僕が彼と手を繋げないように、僕と彼の心が繋がることは絶対にない。
 今日も彼は僕の少し後ろを歩く。たぶん明日も明後日もそうなのだろう。


END




うちの吉良は早人は嫌いじゃなくて、むしろ好きです。でもそれは家族的な意味で、恋愛感情になることはありません。
早人はそれがわかってるから、もやもやしてる感じです。
吉良は昔叶わなかった普通に普通の家庭を築きたいんですよ。


拍手お返事は週末にしますすみません。

リンゴォとシュガーはセットで出てくると、思っていた時期が私にもありました。
正直本気で8巻を読むまではそう思ってましたよ。悔しいのでシュガー+リンゴォを。
リンゴォはSBRで一番かっこいいキャラにして可愛いキャラ。シュガーは女性キャラで一番可愛い。つまり可愛い+可愛い=もっと可愛いということ。

読んでると私が二人のキャラをつかめてないのがよくわかります。というかリンゴォの口調がわりません。
絶賛捏造中。

 

 

 

 断続的に聞こえる銃声で目をさました。長くこの場所で過ごしてきて気が付いたことの一つに、この森にはあまり人がこない、というものがある。実際、もう少し人が多く訪れていればシュガーはとっくにこの巨木の絶対的なルールから解放されていたことだろう。
 何事かと思い、眠い目をこすりながら巨木にできた洞穴の中から顔を覗かせる。その時、また一つ銃声が聞こえた。それ以外はいつもの通り、森は静かだ。
 なにかを狙って撃っているというよりも、ただ銃の調子を確かめるために撃っているような印象を受ける。シュガーはしばらく思案してから、杖を手に持って外へ出た。銃声からしてそれを扱っている人間とはあまり距離は離れていない。まさかいきなりこちらに向かって撃ってくることはないだろうから、少しぐらい見に行っても大丈夫だろうと考える。それに、今度こそ自分を解放してくれるかもしれない。
 雪を踏む音と、時折聞こえる銃声を耳にしながら歩く。目はほとんど見えていないはずだが、もう何十年もこの森をこうやって杖一つを頼りに歩いているのでシュガーの足取りに危なげはない。
「誰だ?」
 少し離れた所から男性の声がした。そちらに目を向けると、ぼんやりとした輪郭の人間がいる。はっきりとは見えないが、こちらに銃を向けているのが雰囲気でわかった。思っていたとおり、いきなり発砲はしてこなかったのでシュガーは安心する。
「邪魔をしてしまってすみません。銃声が聞こえて、気になったものですから」
「お前、目が見えないのか?」
 銃を向けられているのにまったく動揺しなかったせいか、それともシュガーの持っている杖を見てそう思ったのかはわからないが、男はそう尋ねてきた。シュガーはうなずいて肯定を示しながら、どちらかというと自分と対峙している相手の方が動揺しているように感じられた。それもそうだろう。こんな雪の積もっている森に、女の子が一人で現れたのだから。
「あなたは旅人さんですか?どこから来て、どこへ行くんですか?」
 数歩男に近づく。すると、相手は銃を持つ手に力を込めた。それに不穏なものを感じて、シュガーはいったん止まる。
「近づくな」
「どうして?」
「警戒しているからだ。お前は俺の傍に来た瞬間、襲ってくるかもしれない」
 その言い方に、なんとなくムッとしてしまう。女の子に向かって襲ってくるかもしれないだなんて、失礼もいいところだ。
「失礼な人ですね。あたしは人は襲いません。だからあなたも撃ってこないでくださいね」
「俺は自分を殺しにかかってくる人間にしか撃たない」
 男の言葉を聞いて、シュガーはにこりと笑みを浮かべる。
「じゃあ、いいじゃないですか。あたしはあなたを襲わないし、だからあなたもあたしを襲わない」
 止めていた歩をまた進める。男の前に立ち、彼を見上げた。やはりぼんやりとにしか見えないので、どんな顔立ちをしているのかはわからない。しかし悪い人ではないと思う。彼がもし悪人なら、自分はとっくに死んでいるはずだから。
 男が緊張しているのが雰囲気でわかった。自分はそんなに、不審な女に見えるだろうか。それとももともとの彼の性格だろうか。シュガーはしばらく考えてから、杖を地面に置いた。手を伸ばし、銃を持っている男の手を包み込むようにしてとる。
「なっ?」
「震えてますね」
 先ほどまでは気が付かなかったが、男の手は小刻みに震えていた。寒さで震えているわけではないというのにすぐに気が付く。この寒さの中、緊張のせいか彼の手は少し汗ばんでいた。
 ならば怖いのだろうか。なににだろう。自分が攻撃されることか。それとも誰かを撃つことか。どちらにしても、それならば銃なんて持たなければいいのにとシュガーは思う。
「お腹、すきませんか?」
「なに?」
 脈絡もない言葉に、男は間抜けな声を上げる。そんな彼を見上げながら、シュガーはにこりと笑った。
「震えながら襲われるのを待つよりも、向かい合って温かい食事を一緒にとったほうがずっと健康的です」
 男は答えない。だがしばらくして、体の緊張を解くように一つ息を吐いた。
「・・・そうかもしれないな」
「えぇ、絶対にそうです」
 ぴたりと男の手の震えが止まる。それに気が付いて、シュガーは彼の手を解放してやった。男はしばらく自分の手をじっと眺めていたが、やがて腰につけているホルダーに銃をしまう。
 その間にシュガーはしゃがみこむと手探りで地面に置いた杖を探した。白い雪の上にブラウン色の杖なので、すぐに見つけることができる。
「あなた、なにか食事は持っていますか?簡単なものでいいんですけど」
「持っているが」
「なら、あたしが朝食をご馳走しますわ。すぐそこにあたしの住んでいる巨木があります。付いてきてください」
 なぜ最初に食事を持っているか聞いたのか、その意図がわからないようだったが男はうなづいた。少し離れたところにいた馬の手綱を引いて、シュガーの横にくる。その時になって初めて、シュガーは近くに馬がいたことを知った。確かによく考えれば、こんな辺鄙なところは馬がいないとこれないだろう。この森の近くに街はないから、荷物も運んでもらわなくてはならない。
「よく、転ばないものだな」
 危なげのない足取りで普通の人間とかわらないように歩くシュガーを見て、男が感心したように言った。
「慣れてますもの。もう50年、この森を歩いてる」
「50年?なにかの冗談か?」
「さぁ、どうでしょう」
 楽しげに喉を鳴らして笑うシュガーを男は不思議なものを見るような目で見る。どう考えても、目の前にいる女の子は10代半ばほどにしか見えない。結局、なにを聞いても曖昧な言葉しか返さないシュガーに、男は諦めたようだった。
 そうしているうちに、巨木の元に辿り着く。見たこともないような大きな木に、男は圧倒されたようにそれを見上げた。そんな彼を残し、シュガーは駆け出すとやはり危なげのない足取りで木を登り、洞穴の中に入っていく。男はそれに気が付き、馬を止めるとその後を追った。
 大きな木にある大きな洞穴の中を覗き込むと、そこには地面に膝と両手をつけたシュガーがいた。男と目が合うと、シュガーは深々と頭を垂れる。
「改めまして、わたくし、シュガー・マウンテンと申しまする。シュガーとお呼びください」
 予期せず丁重に挨拶されてしまったため、男は慌てて洞穴の中に入るとシュガーのように膝と両手を地面に付き、頭を垂れた。
「リンゴォ・ロードアゲインです。よろしくお願い申し上げます」
 シュガーの方もまた、同じように挨拶を返されるとは思っていなかったため、一瞬面食らってしまう。そして次の瞬間には笑い声を上げてしまった。どうやらこのリンゴォという男、なかなか面白い性格をしているようだ。しかし本人はいたって真面目だったのか、笑い転げているシュガーを見て不思議そうな顔をする。
「リンゴォは面白い人ですね。こんなに笑ったのは久しぶりだわ」
「そんなことはないと思うが」
「あ、そこ寝室なので踏まないよう気をつけてください」
「す、すまない・・・」
 シュガーの言うところの『寝室』から足をどけたリンゴォを満足げに見てから、彼女はなにか食べ物を巨木の近くにある水溜りに投げ入れるよう頼んだ。突拍子もない彼女の願い出に、リンゴォは不思議がる。先ほどから不思議に思うことばかりだ。変な女だな、と思ってしまう。
「いいから、早く投げ入れてきてください。あたし、お腹がすいてるんです」
 半ば追い立てられるように再び洞穴の外に出たリンゴォは、言われたとおりに馬に積んでいた食料を水溜りというには少し大きな穴に投げ込む。食料が水溜りの底に落ちたのを確認してから、シュガーの元に戻った。そして、先ほどとは違う光景に驚いてしまう。洞穴の中には、シュガーと先ほどまではなかった豪華な料理が並べられていた。
 何事かと思っていると、リンゴォはシュガーにあのお決まりの質問をされる。そしてその質問に正直に答えた。すると彼女は嬉しそうに笑う。
「正直に答えたあなたには、ここにある食事すべてをあげましょう」
「すごいな、スタンドか?」
「スタンド?」
 耳慣れない言葉にシュガーは鸚鵡返しする。彼女が本気でスタンドというものを知らなそうだったので、リンゴォはなんでもない、と呟くように言った。
「さぁ、朝食にしましょう。すべて食べてくださいね。すべて、ですよ」
 念を押すように言われる。先ほどまで嬉しそうな表情とは違い、それは真剣そのものだった。やはり、この少女は不思議だとリンゴォは思う。
 促されるまま、リンゴォは料理に手をつけた。どのような能力のスタンドなのかはまったくわからないが、それは出来立てのように温かい。リンゴォが一口目を嚥下したのを見て、シュガーも料理に手を伸ばした。
「うまいな」
「それはよかったわ。やはり同じ料理でも、一人で食べるのと誰か他の方と一緒に食べるのとでは違いますものね」
 それは暗にシュガーがいつもこのような豪勢な料理を食べているということを示していた。どうやって用意しているのだろうか。彼女いわく50年もこの森に居るというし、しかも両親らしい人物も見当たらない。他にもまだまだ気になることはたくさんあったが、リンゴォはもはや突っ込んで尋ねない。この少女は自分の理解できない世界に身を置いているのだ。そう自分に言い聞かせながら、食事を続ける。
「リンゴォはこれからどこへ行くんですか?まさか、ただ銃を撃つためにここへ来たわけではないでしょう?」
 シュガーの問いに、リンゴォは言ってもいいのか、それとも言わない方がいいのか考える。だが結局、この少女は50年この森にいると言うし、これからもたぶんそうなのだろうから、言ってもなんら問題はないだろうと思った。まさか彼女が聖人の遺体を持っているわけがないだろう。
「仕事があるんだ。ここからまた、何日間か馬で走らなくてはいけない」
「お仕事、ですか?」
「あぁ。神聖で、とても大切な仕事だ」
 相槌を打ちながらシュガーは彼の話を聞く。仕事の内容までは教えてくれなかったが、彼の話し方からとても大きく、そして大切な仕事なのだろうということがわかった。大変ね、とシュガーは他人事のように思う。シュガーもシュガーで、ある意味大変な仕事をしているのだが。
 リンゴォはあまり自分から進んで喋るような男ではなかったが、シュガーがなにか尋ねると他愛のないことでも丁重に答えてくれた。この洞窟の中で挨拶をされ返した時に気が付いていたが、改めて真面目な男だと感心する。きっとこういうタイプの人間は、仕事も完璧にこなさないと満足できないのだろう。きっと自分が納得するまで、命を顧みずに遂行するのだ。
 真面目だが、不器用そうだ、と思った。手先とかではなく、生き方が。しかしそれゆえに、美しく見えることもある。自分の信念を曲げずに、ただひたすらに生きている。かっこいいなぁ、と思った。
 しかしそれはシュガーが勝手にそう思っているだけで、実際そうとは限らない。ましてや、出会ったばかりの男なのだ。彼のことをもっとよく知りたいと思う。これからどこへ行くのだとか、彼の性格だとか、いったいどうして、銃を持ちながらもあんなに不安そうに震えていたのだ、とか。今はまだ巨木から解放されてはいないが、もし近いうち解放されるのなら、彼と一緒に旅をしてみたい。
「仕事が終わってからは、なにか予定はあるんですか?」
 料理を全て食べ終わってから、シュガーは尋ねた。
「予定はないが、いつ終わるのかわからないし、もしかしたら終える前に俺が死ぬかもしれない」
 どうして、とは尋ねなかった。ただなんとなく、彼が死ぬかもしれないというのを当たり前にとらえてしまった。きっと昔からそういう生き方をしてきたのだ。シュガーがなにかを言う義理も権限もない。
 リンゴォが立ち上がったのが気配でわかる。出発するのだと思い、見送ろうとシュガーも立ち上がった。洞窟の外へ出て向かい合う。
「あたしは今、この森を出ることは出来ません。しかしもしも出れたのなら、どこへ行けばリンゴォに会えるかしら?」
「すまない、それすらもわからないんだ。俺に定住している家はない」
 本当に申し訳なさそうに言われる。リンゴォの回答に、シュガーは少し落胆した。しかしそれが彼の生き方ならしょうがない。
「なら、もう運命に任せるしかないのですね」
 シュガーは再び、腕を伸ばしてリンゴォの手を両手で取った。それを自分の胸元へ引き寄せ、少しうつむいて目を瞑る。
「あたしとリンゴォの運命が、再び交わりますように・・・」
 祈るように、厳かな声で呟いた。するとわずかに相手が息を呑んだのが伝わる。どこか戸惑っているような雰囲気だった。何事かと、シュガーは彼の手を解放してやりながら顔を上げた。
「どうしました?」
「いや・・・。ただ、ずいぶんとあなたに気に入られてしまったな、と思って」
「迷惑でした?」
 リンゴォは軽く頭を左右に振ってシュガーの言葉を否定する。
「嬉しい、かもしれない」
 予想外の彼の言葉に、シュガーは一瞬固まってしまう。だが次の瞬間には、顔に笑みが浮かんだ。
「もし仕事が終わったら、もう一度この森に、あたしのところに来てください。その時にもしあたしがいなかったら、あたしはこのアメリカのどこかであなたを探していることでしょう」
「わかった、約束しよう」
 リンゴォが外に待たせていた馬に跨る。出発の時間だった。シュガーはこの森に50年いて初めて、人と別れるのが寂しいと感じる。でもきっとまたどこかで会えると、心の中で自分に言い聞かせた。大丈夫、お互いが死なない限り、また会えるだろう。彼は自分が死んでしまうかもしれないみたいなことを言っていたが、今までこうして生きてこれたのだ。今回に限って、死ぬなんてことはないはずだ。ほとんど祈るようにして、シュガーは思う。
「さようなら、リンゴォ。またどこかで会いましょう」
「あぁ、またどこかで・・・」
 リンゴォが馬の腹を軽く蹴る。すると馬は一ついなないて、軽く雪の積もった大地を駆け出した。シュガーはぼんやりとした視界でそれを見送る。蹄の音が聞こえなくなるまで、手を振っていた。

 

END

 

 

リンゴォはあんまり人に懐かなそうだけど、シュガーには懐いてたら可愛いよね、ということです。というかシュガーが懐いて、ほだされてる感じ。私はどれだけリンゴォを可愛い存在だと思っているんでしょうか。
ジャイロ×リンゴォでもいいのですが、ジャイリンを考えるとジャイロに迫られて少年時代のトラウマのスイッチが入って持病を再発させてるリンゴォしか頭に浮かびません。
キスなんてされたらきっと口の中切れまくりで呼吸ができなくなると思う。
ところで書き終わってから気が付いたんですが、リンゴォが全てを使い切る、っていう条件をクリアしたのにシュガーたち解放されてませんね。ナンテコッタイ・・・。
でも遺体を守ってる巨木で、それを回収してないわけだからいいかな・・・駄目?
もうパラレルでいいからもっとシュガリン書きたいです。カプでもコンビでも可。見るのも良い。シュガリンに飢えてます。
ジョジョは女の子もおっさんも足りないから見つけると全力で追いかけます。


川尻親子で短い話。
ボスとトリッシュの親子もいいけど、川尻親子も大好きです。誰かください。








 高校生になった今でも、朝に学校へ行くために家を出る時は吉良吉影と一緒だった。そして相変わらず息子が見ている前でも、母は彼にいってらっしゃいのキスをかかさなかった。
「いってらっしゃい、あなた」
「あぁ」
 母が彼の頬にキスをすると、彼もお返しに母の頬にキスをする。もう何年も見ている光景なので驚きはしないが、ここは確かに日本だろうかと思うことが時折ある。仲が良いのは良いことだ。しかし毎日この瞬間だけ、なんとなく僕が蚊帳の外にいるような錯覚に陥る。これはただの子供じみた嫉妬なんだけど。どちらに、ということではない。どちらにも、なのだ。
「父さん」
「なん・・・」
 なんだ、と反応を返す前に、僕は寸分の乱れもなく結ばれているやたらとセンスのいい彼のネクタイをぐいと引っ張った。僕は小学生の頃に比べればずいぶんと成長したが、未だに彼の身長を越すことはできないでいた。
 引っ張られた勢いで少し前かがみになった彼の頬にキスをする。ぺろりと小さくその頬を舐めてから、僕は彼を解放してやった。
 最近知ったことだが、彼は予想外すぎるできごとに弱い。きっといつも何事も完璧に、そして理想通りに物事を動かしてきたから、予想外の出来事というのに耐性がないのだろう。
 母の見ていないところで彼にキスをしたことは何度もあったが、今日は母がいる。いったいどんな反応を示すだろうかと、僕は様子をうかがった。彼は黒目がちな目を開いたまま、まばたきもせずに固まっていた。いつもならキスをするとなにかしら文句を言ってくるのに。やはり予想外の出来事に対する耐性がないよな、と思う。
「ちょっと、早人!」
 名前を呼ばれ、僕は母の方を見た。わずかに目じりをつり上げ、すねたような顔をしている。
「パパにばっかりずるいわ。ママにもいってきますのキスをしてよ」
 言いながら、母は僕に自分の頬を突きつけてくる。彼にもこれくらいの適応能力があってもいいのに、と思った。
 僕は母の望み通りに、今度は触れるだけのキスをする。すると母は嬉しそうに、少女のように笑った。息子の僕がいうのもなんだが、母は美人だと思う。とても高校生の息子がいるとは思えない。
「じゃあ行ってくるね、母さん。ほら、父さんもボーっとしてないで行くよ」
 未だに固まっている彼の手首を掴み、半ば引きずるようにしながら玄関を出る。それを母はやはり笑顔で見送った。
 しばらく引きずられるようにして歩いていたが、やがて気が付いたように彼は僕の手を振り払う。そして僕に舐められた頬を手の甲で拭った。失礼だな、と僕は思う。
「マザコンの上にゲイだなんて・・・世も末だな」
「手フェチの殺人鬼に言われたくないんだけど」
 お互いがお互いに自分の性癖や性格を熟知しているので、それ以上の言い合いにはならない。ただ僕としては、マザコンというのは認めるけどゲイというのはあまり認めたくない。僕はただたんにこの人が好きなだけで、他の男には魅力なんて感じたことなどないのだから。でも彼は母が好きだし、僕だって母が好きだ。
「世の中って上手くいかないものだよね、吉良さん?」
「まったくだ」
 朝から疲れたように彼がため息を付く。その表情がとても色っぽくてまたキスしたくなったが、流石に家の外だと母以外の誰かに見られるのはまずいので、僕はぐっとその欲をこらえた。



END





うちの早人は基本的にマザコンです。そして吉良も大好きです。
なのでラブラブなしのぶさんと吉良を見て悶々としてるといいです。どっちも好きだからどっちも切り捨てられないんです。
川尻家は早吉良に吉良しのに早しので一度に三度美味しいです。

短い話用に書いていたのですが、中途半端に長くなってしまいました。
駄目な父親しかいません。

五部ナレフって三部と同じノリで書けばいいのかそれとも落ち着いた感じに書けばいいのかわかりません。
どっちがいいんでしょうか。







 珍しくディアボロが自分の元へ来たと思ったら、いきなり相談事をされてしまった。プライドの高い彼がそんなことをするのは意外だったが、それだけ彼にとって重要なことなのだろう。しかしだからといって、いくらディアボロより自分の方が少しばかり年上だからといって、ポルナレフにしてみれば困る質問だった。
「娘とどう接したらいいか、なんて聞かれても困る。私には娘どころか家族もいないからな」
 相談できるような相手が自分ぐらいしかいないというのはわかるが、やはりこればかりはしょうがない。下手なことを言ってギクシャクしつつもなんとか上手くやっているディアボロとトリッシュの家庭を乱すわけにもいかない。
「おそらく、私以外に相談したところで、ディアボロの満足するような回答は得られないだろう。お前のところはその・・・ちょっと複雑だからな」
 本人もそのことをよく理解しているのか、ディアボロはなにも言わなかった。ただ悩ましげに一つだけため息を付く。こうやって見ると巨大なギャングの組織を束ねていた元ボスもただの父親だな、とポルナレフは思った。彼のトラウマを抉ることもないので、口に出しては言わないが。
 大嫌いなジョルノと遭遇する危険もあるため来たくもないパッショーネのアジトへわざわざ来て、自分に相談を持ちかけてきたのだからなにかしてあげたいのは山々だ。どうしたものかと、ポルナレフはしばらく考える。すると、脳裏にいつも帽子をかぶった一人の男が浮かびあがった。
「私はお前の相談に乗ってやれないが、良いアドバイスをくれそうな人物に心当たりがある」
「本当か?」
 ディアボロは顔を上げてポルナレフを見た。
「あぁ。お前と同じ一人娘を持つ父親で、優秀な海洋学者だ。頭も良い」
「学者だと?お前にそんな大それた知り合いがいたとはな」
 馬鹿にしているように聞こえるが、これが彼の素なのでしょうがない。そろそろ付き合いも長いので、ポルナレフもディアボロの性格に慣れつつあった。
「意外でもないだろう?現に私にはネアポリス一の巨大組織の新旧どちらのボスとも知り合いじゃないか」
「嫌味か、貴様」
「別にそんなつもりはなかったが・・・」
 相手をあしらいながら、ポルナレフはポケットから携帯電話を取り出して旧友の携帯電話にかける。忙しい身の男だ。今は時間が取れるだろうか。
 小さなそれを耳元に当てているポルナレフを見て、今時の幽霊は携帯電話なんて使うのかとディアボロは思った。そういえば普通に食事もとっているようだし、彼は本当に幽霊なのだろうか。本人に尋ねようと思ったが、確かに自分がこの手で殺した記憶があったので、ディアボロは黙ったまま相手の様子をうかがった。
 しばらく呼び出し音が鳴った後、携帯電話が繋がる。
「承太郎、久しぶりだな。少し時間が取れるか?聞きたいことがあるんだが・・・」
 親しげに発せられたポルナレフの言葉を聞いて、ディアボロは驚く。承太郎、とは、あの空条承太郎のことだろうか。確かヒトデの論文で博士号をとった日本人だ。なんだってそんな海洋学の世界で有名な人物とポルナレフが知り合いなのだろうと、ディアボロは不思議に思った。
「その前にお前の話を聞いてくれって?別に構わないが。珍しいな、承太郎からそんなことを言ってくるなんて」
 承太郎がなにを言っているのか、ディアボロの耳にまでは届かない。ただ、わずかにポルナレフの眉間に皺が寄ったのを見てとった。
「この間、2ヶ月ぶりに家に帰ったらジョリーンちゃんに真顔で、あんた誰?って言われた?まぁ子供の記憶力はあてにならないからな。それにあまり家には帰ってないんだろう?」
 ポルナレフの言葉を聞いて、ディアボロのテンションが一気に下がる。ジョリーンというのは、話の流れからして承太郎の娘の名前なのだろう。誰、だなんて、きついな、とディアボロは思う。承太郎にしてみれば、15年間娘を放置していたディアボロに同情されたくもないだろうが。
「おい、いい歳をして泣くな。・・・泣いてない?わかったから鼻をかめ。グズグズうるさいぞ」
 携帯電話からかすかにすすり泣いているような音がもれ聞こえた。果たして今、ポルナレフが電話をしている相手が本当に自分の知っている空条承太郎なのかとディアボロは疑ってしまう。彼の論文を何度か読んだことがあるが、その文面から受ける印象と今、電話越しにすすり泣いているであろう彼との印象が違いすぎる。
「とりあえず、一回電話切るからな。そしたらジョリーンちゃんに電話してやれ。私相手にそんな泣き言を言っているよりはずっといいと思うぞ。・・・私の用事?・・・いや、やっぱりなかった。なんでもない」
 どんな偉大な海洋学者も、やはり娘の前ではただの父親であるらしかった。
「じゃあな、家族は大切にしろよ。・・・あぁ、ジョリーンちゃんやジョースターさんによろしく」
 携帯電話を切り、ポルナレフは深いため息を付く。予想外すぎた。まさかあの承太郎が娘に手を焼いているとは思わなかった。しかしよく考えてみれば、あのタイプの男が甲斐甲斐しく娘を可愛がっているというのも想像できない。可愛がりたいのは山々だが、どう接していいのかわからないのだろう。そういう意味では、ディアボロと承太郎は一緒だ。そんな彼に相談をしてもしょうがない。
「すまない。ちょっと予想外のことが起きた」
「あぁ。なんとなく、そんな感じが伝わった」
 もう一度、今度は二人同時にため息を付く。つくづく、この世の中は上手くいかない。
「まぁお前の場合、トリッシュから父親として認識されているんだからまだましなんじゃないのか」
 どんなに考えても、そんな慰めの言葉しか出てこない。そんな簡単に15年間の穴と、娘を自分の手で殺そうとしたという事実が消えるわけではないし、そう考えるとディアボロの今の状況は物凄くましなんじゃないかと思えてくる。下手をしたら逆に娘に殺されていてもおかしくはないのだから。おそらく承太郎から見れば、今のディアボロは羨ましい限りだろう。
「上には上が・・・いや、下には下がいる、ということか・・・」
「そう考えて自分を慰めるしかないな」
「鬱だ・・・」
「死ぬんじゃないぞ。ただでさえ死にやすいんだから」
「昔の私と一緒にするな」
 横目で睨んでくるディアボロを流しながら、ポルナレフは自分の周りにはろくな父親がいないな、と思った。




END






個人的にボスとポルナレフが仲が良かったらすごく萌えです。
「お互いがお互いのせいで一回死んでるし、もう昔のことは水に流さね?」みたいな感じだったらいい。
二人でたまに酒盛りとかしてればいいと思います。酔ったボスがポルナレフにトリッシュ自慢したりジョルノの愚痴を言ってたりすればいい。

最近ボスとか書いてなくてすみません。最近はずっと創作&人外のターンです。
私の中で版権を書きたい時と創作を書きたい時の周期がはっきりしてて、版権と創作を両立できません。
たぶん来月になればまた版権のターンになると思いますが・・・。
それまでは先月まで書き溜めてたものを。

久しぶりにボス猫話です。
ブチャラティはいい男。今回はそんな感じの話です。ブチャ+ディア表記にすればいいのかブチャ×ディア表記にすればいいのか非常に悩みます。

 

 

 ディアボロが本当は人間だと説明し、それでもチームメンバー達の好意でしばらくは彼を家に置いてもいいということになった。それどころか、彼を猫の姿に変えているスタンド使いを探すのを手伝ってくれるという。なんだかんだでチームメンバー達はディアボロを気に入ったようだ。もしくはただたんに猫の姿にほだされただけかもしれない。自分の横で歩くたびにその振動で尻尾を揺らしている猫を見ながらリゾットはそう思った。先ほどまで鉄分不足でぐったりとしていたが、今はずいぶんと調子が良さそうだ。
「なんだ?」
 視線に気が付いたディアボロは相手を見上げる。相変わらずその可愛らしい姿に低い男の声は不釣合いだったが、そろそろ慣れつつあった。
「いや・・・ただ昨日の今日でちゃんと自分の足で歩いているボスに感動してな」
 適当に当たり障りのない言葉を返したが半分は本心だ。昨日は動物のように歩くのが嫌だといってリゾットに抱かれて移動していたというのに、今は普通に四速歩行をしている。普通の猫よりも大きく、中型犬ほどのサイズ(といっても猫らしく犬よりはほっそりとした体をしているが)の彼を抱いて歩くというのはなかなか重労働だったため、ずっとこうして自分の足で歩いていてくれればリゾットとしては大変助かる。
 リゾットの言葉に、ディアボロは少し顔をしかめたが、やがて諦めたように息を吐く。彼の感情に合わせて尻尾が動くのが面白い。
「自分の足で歩かないのならついてくるなと言ったのはお前の方だろう。人のことを散々重い重いと言って、失礼だ」
「実際、体が大きい分、重いんだからしょうがないだろう」
 確かにそう言ったのはリゾットだ。しかしそんなに嫌なのなら家で留守番していればよかったものを、と思う。だが結局はなにも言わない。自分の足で歩くよりも、家にいてリゾットのいない間にチームメンバー達に遊ばれる方がもっと嫌だからこうやってついてきたのだと知っているから。
 ディアボロが人間だったのだとみなに説明した後、プロシュートの作った朝食をとったリゾット達はまたいつディアボロが人間の姿に戻ってもいいように、彼の服を求めて街に買出しに来ていた。買い物をしている最中にまた人間の姿になってしまったらという心配もあったが、きっと本人が気にしていないようなのでいいのだろう。誰かに裸体を見られて恥らうような歳でも性格でもないだろうし。ただもし本当に人間の姿になってしまったら、目立ちたくはないのでディアボロと距離を置かせてもらうが。
「しばらくの間、ここで待っていろ。勝手にどこかへ行くなよ」
「子供じゃあるまいし行くか。早く買って来い」
 服屋の前で言い聞かせるようにして言うリゾットに、ディアボロは鬱陶しげに返すと尻尾で早く行けと示す。それに促されるようにしてリゾットは店へ入っていった。本当ならディアボロも一緒に行って服を選べばいいのだろうが、流石に猫が店に入るわけにも行かない。
 自分の服の趣味をリゾットが理解してくれていると願いつつ、ディアボロは店の出入り口の端の方で伏せの体勢をとると前足の上に顎を乗せて目を閉じる。しかしそれでも道行く人々の好奇心を孕んだ視線を感じた。奇抜な色の毛と猫にしては大きな体のせいで先ほどからずっと悪目立ちしてしまっている。人前で目立つことを嫌うディアボロにとって、その視線はあまり気持ちの良いものではなかった。たまに体を撫でようと寄ってくる人間を威嚇して追い払いながら、ただひたすらにリゾットが戻ってくるのを待つ。
「うっわ、ブチャラティ見てみろよ。でっけぇ猫がいるぜ」
「そうだな。それにずいぶんと珍しい毛色をしている」
 こちらに近づいてくる二つの足音を聞いて、ディアボロはまたか、とため息を吐きそうになるのをこらえながら顔を上げた。近づいてくる人間を追い払おうと思ったが、相手らの顔を見て固まる。相手はブチャラティとナランチャだった。なんて間の悪い時に出会うんだと舌打ちしたくなる。
「首輪してないけど野良か?そのわりには毛並みがいいみてぇだけど」
「この店の前にいるんだ、飼い主でも待っているんじゃないのか」
 誰が野良だ。誰が飼い主だ。ディアボロはそう思ったが、口には出さない、出せない。ただどうやって彼らを追い払おうかと考える。普通に威嚇しただけでは相手は引いてくれないだろう。
 ナランチャがディアボロの前にしゃがみこむ。そして手を伸ばすとディアボロの両前足の脇の下に手を添えた。そのまま手を上げると、前足を前に突き出した格好でディアボロの体が持ち上がる。なんていうか、長い。
「おぉー、胴体なげー」
 感動したようにナランチャが言う。彼が腕を揺らすと、持ち上げられているディアボロの胴体も左右に揺れた。それを見てナランチャがおかしそうに笑う。
 この下っ端が…!
 玩具にされ、ディアボロは内心で叫ぶ。普段は隠れている爪を無意識に出した。しかしあとは力を込めてナランチャの肌を引っ掻くというところになって、横から伸びてきた手に抱かれ、そのままその腕の中にすっぽりとおさまってしまう。見上げれば、すぐ近くにブチャラティの顔があった。
「駄目だろう、生き物をそんなふうに扱ったら」
 たしなめるようにナランチャに言ってから、ブチャラティは瞳を覗き込むようにしてディアボロを見る。あまりにも真直ぐな瞳なので、なぜだか後ろめたくなってディアボロは視線を逸らしてしまった。相手のそんな反応にブチャラティは意に介したふうはなく、器用にディアボロを腕に抱いたまま指先で彼の額を撫でる。それが気持ちよくて、ディアボロはすっと目を細めると無意識にごろごろと喉を鳴らした。
「ブチャラティ、俺も俺も!」
 その様子を見ていたナランチャは、立ち上がると腕を伸ばして抱かせてくれとねだる。だが相手の手が体に触れそうになったとたん、ディアボロは目を開くと腕を振るった。鋭い爪がナランチャの皮膚に食い込み、痕を残す。彼の手の甲からだらりと血が流れた。その瞬間、先ほどまで年齢よりも幼く見える表情を見せていたナランチャは、キッと目じりをつり上げてディアボロを睨んだ。
「この・・・糞猫がッ!」
 彼の叫び声と共に、ナランチャの背後からエアロスミスが発現した。ミサイルの標準をブチャラティに抱かれたままのディアボロに合わせる。まさかあれだけでスタンドを出されるとは思っていなかったので、ディアボロは驚いて目を見開いた。だが彼がスタンドが見えているということに、二人とも気が付かなかったらしく、ブチャラティがナランチャを制そうと口を開きかける。しかしその前にナランチャの背後に誰かが立った。
「なにをしている」
 あまり抑揚のない声がして、ナランチャは反射的にそちらを振り返った。ブチャラティとディアボロもそちらに目を向ける。そこには買い物が終わったのか、片手に紙袋を持ったリゾットがいた。助かった、とディアボロは心の底から安堵する。
 リゾットはエアロスミスは見えていたが、自分がスタンド使いだと相手にばれるとめんどくさそうだったので、見えない振りをした。
「騒がしくして悪かったな。連れが猫に引っ掻かれたといって腹を立てていただけだ」
 言いながらブチャラティはナランチャにすぐにスタンドを消せと視線を送る。それに気が付いたナランチャは、すぐにエアロスミスを解除した。
「この猫の飼い主か?」
「飼い主・・・といえば、今のところはそうかもしれないな。普段は野良みたいなものだが」
「そうか」
 リゾットの言葉に反論したかったが、ディアボロはそれをぐっとこらえる。とりあえず今は、早いところブチャラティとナランチャのいないところに行きたかった。
 ディアボロの願いが通じたのか、ブチャラティの腕の中から体が地面に下ろされる。すぐにリゾットの傍に寄ると、今度は彼に抱き上げられてしまった。重いといって抱くのを嫌がっていたリゾットだけに、そうされるとは思っていなかったためディアボロは驚いて相手を見る。しかし彼はいつものように涼しい顔をしていた。
「勝手に抱き上げたりして悪かった。可愛い猫だったんでつい、な」
 帰るぞ、とブチャラティがナランチャに言う。この頃にはナランチャの手の甲からも血は止まっていて、彼自身も落ち着きを取り戻したようだった。
 ブチャラティはディアボロに向かって小さく手を振ってから背を向けて歩き出す。ナランチャもそれに続いた。だんだんと小さくなっていく背中を見ながら、ディアボロは大きなため息を吐く。どうして服を買いにきただけなのにこんなに疲れなくてはいけないのか。これならまだ家に残っていた方が楽だったかもしれない。
「さっきの二人、スタンド使いのようだがパッショーネの人間か?」
「あぁ。あいつらのチームはお前のチームと一緒で全員スタンド使いだ」
 言ってから、ディアボロはリゾットを睨む。
「それよりもなぜ早く戻ってこなかった。私があのガキに玩具にされるのを見ていただろう」
 気が付いていたのか、とリゾットはやたらと鋭い猫を見ながら思う。
「ボスが楽しそうだったから、邪魔するのは悪いと思ってな」
「楽しそう?貴様の目は節穴か?」
「腕に抱かれて頭を撫でられて、ずいぶんと気持ち良さそうだったじゃないか」
 その言葉の中にどこか棘があって、ディアボロは目を丸くする。リゾット自身もそれに気が付いて、自分を落ち着かせるように息を吐いた。ディアボロが悪いわけじゃない。これはただの八つ当たりだ。ただ、自分以外に抱かれて大人しくしている彼が気に入らなかっただけ。
「怒ってるのか?」
「・・・怒ってない」
 今はもう怒ってないのは本当だ。だが呆れている。たったあれだけのことで心を乱した自分に。
「ボスの服も買ったし、帰るか」
「・・・あぁ」
 リゾットがなぜ急に機嫌が悪くなったのかがわからないまま、ディアボロはうなづく。
 紙袋を腕に掛け、ディアボロを抱いたままリゾットはブチャラティ達が行った方とは別の方向に歩き出す。一定のリズムで揺られながら、ディアボロはリゾットを見上げた。
「重くはないか?」
「重い」
 即答で返されるが、それでも体を地面に下ろされる気配がない。いったいなんなんだと思いながら、ディアボロはリゾットの腕に抱かれたまま暗殺チームのメンバーが集まる家に帰った。

 

END

 

 

敢えて言おう、ブチャディアもありであると。
しかしどう絡ませていいのかわからないので結局書けません。
私の中でブチャとリゾットはボケもツッコミも、受けも攻めも出来る優秀な子です。流石リーダー。
ちなみにうちのリゾットはツンデレじゃないです。目指しているものは素直クールです。素直クールが大好きです。

ジョルノも出すはずだったけど、あんまり話に絡んでこなかったので保留。
いつか出せるといいです。


馬で短い話を。
スロー・ダンサーの疑問。

 

 

「ずっと、思っていたのだけど」
「なんだ?」
「ヴァルキリー、というのは、元々、北欧神話の戦乙女達のこと、だよね」
「・・・・・・」
「このレースは、ある意味、戦場みたいなものだから、その名前を付けられるのも、わかるんだけど・・・」
「・・・頼む、それ以上言わないでくれ」
「ずっときみのことを、坊やだと、思っていたけれど、でもまさか、お嬢さんだった、なんてことは」
「そんなわけあるか!名前のことなんてジャイロに聞けよ!」
「もしそうなら、私はずっときみに、失礼なことをしていた」
「俺の話を聞けって」
「本当に、申し訳ないね、お嬢さん」
「・・・最近知ったけど、お前は時々物凄く性格が悪い」

 

END

 

 

拍手のコメントをいただいて、女のヴァルキリーもいいなぁ、なんて。
むしろなんでヴァルキリーという名前を聞いて真っ先に女の子だ、って思わなかった私がいたんだろうと疑問に思ってます。
1thステージのヴァルキリーがかっこよすぎたのがいけない。
うちのヴァルキリーが女の子になったらきっと男の時にあったヘタレさがなくなります。がんがんスロー・ダンサーを攻めると思います。
そういうのもいいなー。


馬で短い話を。
SBR14巻を読んで馬には無限の可能性があることを知りました。

 

 

 

 


 荒い呼吸を整えていたヴァルキリーは、やがて一際大きく息を吐いた。
「ジャイロもジョニィもいったいなに考えてんだよ!無理だろ、あんなワイヤーの上を渡るとか。なんか行かなきゃいけない雰囲気だったから渡っちまったけど無理だろ!」
 つい先ほど道とは呼べないような道を渡り、ずっと下の方に見えた地面を思い出しながら、ヴァルキリーは一気に言った。普段から多少の無茶をする飼い主だったが、まさかあんな綱渡りめいたことをするとは思わなかった。しかも全力疾走で。
「なんだかんだ言って、ちゃんと渡ってこれたじゃない。えらいえらい」
「子供扱いすんじゃねぇ!」
 どこか機嫌よさそうに言ってくるS・Dに、ヴァルキリーはほとんど条件反射的に言い返す。
 ワイヤーを渡る直前までこの二匹の馬の間で、行けだの無理だのという嵐のような問答が続いていたことをジャイロ達は知らない。
「つーか、なんでそんなに楽しそうなんだよ」
「うん?だって、あんな体験、めったにできない、じゃない。だから、嬉しくって」
 あれはもう走るのを楽しむとかそういう次元ではなかったと思うのだが。ヴァルキリーはそう思ったが、結局なにも言わない。きっと、彼とは頭の作りが根本的に違うのだ。
 ヴァルキリーが諦めたように深いため息を吐いた横で、S・Dはふとこちらに駆け寄ってくるような蹄の音を聞いてそちらに目を向けた。見れば黒い毛色に額に白い筋を持った馬が近づいてきている。ポコロコのヘイ!ヤア!だ。
「なぁなぁ!あんた達すげぇな!さっきの、どうやって渡ったんだ?」
 ハイテンションで話し掛けられる。うるさいのがきた、とヴァルキリーは思った。
「渡るとき、怖くなかったか?どうしてあんなとこを渡ろうと思ったんだ?」
 次々と質問を投げ掛けられる。しかしS・Dは気分を害したふうはなかった。
「怖くない、わけじゃないけど、でも、マスターと一緒、だったから。マスターと一緒なら、そこに道があるかぎり、走るよ」
「おぉ!かっこいいな、お前」
「ありがとう」
 気分を害するどころか、さらに機嫌が良くなっているようにヴァルキリーは見えた。もともとどの馬とも仲良くできる彼だが、ヘイ!ヤア!とは殊更相性が良いらしい。当然、ヴァルキリーにしてみればおもしろくない。
「つまんねぇ・・・」
 そんな小さなつぶやきを聞き逃さなかったヘイ!ヤア!は、今度はヴァルキリーに質問の矛先を向けた。
「なにが?なんでさっきのレースで一位だったのにそんなに元気がないんだ?」
「うるせー!ちょっと黙ってろ!」
 怒鳴られてしまい、どうしてヴァルキリーが怒っているのか理由がわからないヘイ!ヤア!は目を丸くする。
「スロー・ダンサー、なんで俺、怒られたんだ?」
「さぁ、どうしてだろう。ヴァルキリーに、聞いてごらん」
 この一言で、ヘイ!ヤア!の質問責めに拍車がかかる。ヴァルキリーはS・Dを睨んだ。間違いなく、S・Dはこの状況を楽しんでいる。
「そろそろ、シルバー・バレットがゴールする頃、だろうから、私は様子を見てくるね。脚の調子も、気になるし。二人とも、仲良くね」
 きびすを返そうとするS・Dを、ヴァルキリーは慌てて呼び止める。ヘイ!ヤア!とは二人きりになりたくないし、S・DとS・Bを二人きりにしたくない。
「待てよ!なんで俺がこいつと仲良くなんて・・・」
「ヴァルキリー」
 瞳を覗き込むようにして目を合わせられ、ヴァルキリーは思わず口をつぐんでしまう。
「仲良く、ね」
「・・・はい」
 有無を言わさぬ声色で言われ、ヴァルキリーはぎこちなくうなずいた。それに満足したのか、S・Dは今度こそきびすを返してゴール付近まで歩いて行く。
 その後、ヘイ!ヤア!のマシンガントークと質問責めは、S・DがS・Bと共に戻ってくるまで続いた。


END




 

ヘイ!ヤア!は子供っぽくておしゃべり大好き、というイメージがあります。もちろん男の子。
スロー・ダンサー達も敵に襲われたりワイヤーを渡ったりで無茶なことしてるけど、ヘイ!ヤア!も岩を上ったり牛で滑ったり無茶なことしてますよね。

ところでポコロコのスタンドはたいへん可愛らしいと思います。もう名前って出たんでしょうか。
ジャイロの守護精霊(?)も好きです。いつになったら再登場するんだろう。
六部のスタンドは全体的にがっかりだったけど、SBRで盛り返してきて嬉しいです。能力的にもデザイン的にも。


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シノハ
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女性
自己紹介:
1月14日生まれの新潟県民。

ジョジョラーでケモナーでおっさん&おじいちゃんスキーでSHK国民。
最近はfkmt作品に手を出してます。
乙一作品と三原ミツカズ作品と藤田和日郎作品も好き。
節操なしの浮気性です。
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