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桂先生の描くromanっ子達が本当に素敵すぎると思います。というかおっさんが素敵だと思います(この発言何度目だろう)
おっさんと幼女で、しかも父子で、犬が一緒だなんて私のツボに入らないわけがない。
次はオーギュストを書きたいけど、書けるでしょうか・・・。
ロレーヌを飲むといつも昔のことを思い出す。軍人だったこと。右腕を奪われて憎しみに取り憑かれていたこと。そしてワロニに暴力をふるっていたということ。誰もが誰も、ろくでもない人生だったと言うだろう。だからこそ、今ある幸せを不思議に思う。
一人でグラスを傾けていると、娘と一緒に寝ていたはずのプルーがかたわらに座っていた。たまに一人で酒を飲んでいると、いつも気が付けば傍に来ている。たぶん私に付き合っているつもりなのだろう。その姿を見ると、ワロニを思い出してしまう。彼女もまた、私が酒を飲んでいると付き合ってくれた。酒なんて飲めないくせに、ただひたすらに夜遅くまでロレーヌをグラスに注いでくれていた。
「お前も飲んでみるか?」
飲みかけのワイングラスを差し出してやると、いらない、とでもいうようにプルーは首をそらした。それでも私が動かないでいると、今度は鼻先でグラスを押し戻してくる。その人間じみた動作がおかしくて、私は小さく笑った。
「本当、頭がいいよな」
グラスをテーブルの上に置いてから、プルーの頭を撫でてやる。すっと目を細め、気持ち良さそうな表情になった。
時々、本当に人間の言葉がわかるのではないかと思うことがある。おそらく人の細かい心の動きに敏感なのだろう。良い犬をもらえてよかった。エトワールの良き友達でありパートナーになっているし、私の相手にもなってくれている。まるで本当にワロニがそこにいるような錯覚を覚えるときすらあるのだ。
「毛色が黒いのがいけないんだよなぁ」
手を離してやると、プルーは知性を宿した瞳でこちらを見上げてきた。まるで私の話に耳を傾けているかのようだ。
ワロニは綺麗な黒髪の持ち主だった。頭を撫でてやると、照れたように頬を赤らめながら笑った。少女のように幼い笑みだった。
「俺にはもったいないぐらい、良い女だったんだ」
後悔してもしきれないほど、昔は酷いことをしていたと思う。自分を愛し、世話をしてくれていた彼女に暴力をふるっていたのだから。私は確かにワロニを愛していたし、酷いことをしたくはなかった。しかしそれ以上に、私の中にあの赤髪の男に対する憎しみがあり、強い衝動が抑えられなかった。酷いことをした後、泣いて謝ると彼女はいつも少し困ったように笑って私を許してくれた。
いったい私のどこが良くて、あんなに愛してくれていたのかはわからない。一度彼女が私の元を去ったときも、結局はよりを戻してくれた。
ワロニと再会を果たしたとき、彼女の腹はもうずいぶんと大きくなっていた。私が最後に彼女を見たときはまだぺしゃんこだったというのに。人間の体の神秘に感動したものだ。昔から多くの科学者や錬金術師がやろうとしてきたことを、女性はたった10ヶ月で、しかも自分の胎内で行ってしまうのだから。
しかしあと1ヶ月で出産というところで、だんだんとワロニの体調は悪くなっていった。
「子供を産んだら死んでしまうんじゃないかと、みんなそう思った・・・」
肘をテーブルに付きながら、手で顔を覆ったせいで声がくぐもった。しかしやはりプルーはこちらに耳を傾けている。
まるで腹の中の子供がワロニの精気を吸い取っているようだった。少なくとも私にはそう見えたし、ワロニもそう感じていた。だからこそ、彼女は痩せた手で毎日愛しげに自分の膨らんだ腹を撫でていた。私はその光景をただなにも出来ずに見守るだけだった。
結局ワロニはエトワールを産んですぐに亡くなった。その晩はエトワールの産声と、私の泣き声がずっと響いていた。
違和感に気が付いたのは、エトワールが産まれて1ヶ月ほどしたころからだった。疑惑が確信に変わったのは、エトワールが物心ついたころからだった。彼女は目が悪い。大人になる前にすべてが見えなくなってしまうほどに。私はエトワールがワロニの精気を吸い取っていたのではなくて、すべての元凶は自分にあると知った。
「ずっと後悔してたんだ・・・エトにもワロニにも、いくら謝ってもたりないほど」
嗚咽が私の口から漏れた。あとからあとから涙が溢れてくる。
昔に私がワロニに暴力をふるっていたからこうなってしまったのではないかと思うのだ。私があの頃からワロニを大切にしていれば、彼女は死ななくてすんだし、エトワールの目も星を捉えることが出来ていたのではないかと。そう医師に告白してみたことがある。だがそんなはずはないと慰められた。だがしかし、私の中の罪の意識は消えることはない。
肩を震わせて泣いている私の腿の辺りになにかが当たる。見ればプルーがそこに鼻先をくっつけながらふんふんと鳴いていた。まるで私を慰めようとしているようだ。それでも涙はとどまることを知らず流れ続ける。それに気が付いたプルーは、いったん体を離してからじっと私を見据えた。そして大きく口を開き、ワンッ、と一つ鳴く。別室にいるとはいえ、エトワールが眠っているときにこんなふうにして鳴くのは初めてだった。驚いて顔を上げると、続けざまに声を張り上げる。
「プルー、どうし・・・」
「お父さん?」
私が言い終わる前に、眠っていたはずのエトワールの眠たげな声が聞こえた。声のした方を見ると、頭に少し寝癖をつけた彼女がいる。気が付くとプルーは吠えるのをやめていた。エトワールを呼んでいたのだと、すぐに気が付く。
「どうしたの、お父さん。泣いているの?」
こちらに近づいてきた彼女は、私の頬を両手で包むようにしてからずいと顔を近づけてくる。その温かさに安心して、私はまた涙を流した。すがるようにして片腕でエトワールの体を抱きしめる。
「エト、ごめん・・・大切にするから、たくさん愛すから、だから・・・」
どこにも行かないで欲しい。私の罪を許してもらおうとは思わない。それは許されないものだろうし、その罪さえ私の生きた証なのだから。ただ私の傍にいて欲しいのだ。もうワロニのときのように手放してしまいたくはない。
「お父さん、どうしたら泣き止んでくれるの?私がいるから泣かないで」
「ありがとう・・・」
小さな腕を伸ばしてエトワールが私の背中をさすってくれる。私は嗚咽の合間に何度もありがとうと繰り返した。ワロニを大切に出来なかった分、この子を大切にしてやらなければと強く思う。目が悪いのが私が原因なら、なおさらだ。
ふと思い出して、視線をプルーの方に向ける。プルーは優しげな瞳で、私達親子を見つめていた。その様子を見て、やはり私はそこにワロニがいるようだと思って、心の中で何度も礼と謝罪を繰り返した。
END
星屑の時って時代背景的にはどのぐらいの年代なんだろうと思いつつ、錬金術なんて言葉を使ってよかったのだろうかと・・・。
エトワールの母親がワロニという事実にすごく安心します。ちゃんとレイヨンと和解したんですね。
そう考えるとやっぱり星屑ラストのレイヨンは50前後じゃなくて40代ぐらいなんでしょうか。
どちらにしてもすごく良いと思います(^q^)
エトワールの目が悪い原因はレイヨンのせいなんじゃないかとも思えてしょうがない。
妊婦だったワロニを殴ってたせいだとか。たぶん関係ないんでしょうけど、でもレイヨンはそう思いこんでてエトワールに甘いんじゃないでしょうか。
romanを読めば読むほどオーギュストの子供=風車の敵に捕まった女の子なんですが。
まさかね、そんなことないよね。そんな悲しい展開やめてください・・・。
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