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そんなわけで、私の妄想に則ったネス+ギーグ話です。全て妄想なんで本気にしてはいけません。妄想についてはhttp://nandemonai000.blog.shinobi.jp/Entry/263/から。
私の中では1のギーグ≠2のギーグなんですが、実際はどうなんでしょうね。

 

 

 


「ネスサン・・・」
 名前を呼ばれる。苦しげで、そして酷く酷く悲しげな声だった。
「ネスサン・・・ネスサン」
 すがるようにぼくの名前を呼ぶ。
「ネスサンネスサンネスサンネスサン・・・」
 ぼくはこの声を知らない。知らない、はずなんだ。でもどうしてか、聞いたことのあるような気がした。いったいどこで?
 思い出そうとする。思い出そうとすればするほど、この声を知っているのだという確信が深まってくる。そう、確かにぼくは知っているのだ。今のように、何度も名前を呼ばれた。あの時も小さな子供がぼくにすがるような、弱々しいものだったが、でもこんなふうに苦しげではなかった。
 もう喉元まで思い出しかけている。しかし確信は深まるものの、肝心の記憶が呼び起こされない。ぼくの心の世界、マジカントでもこの声の主、ギーグには会わなかった。それは忘れているということ。心の中に深く残っている声のはずなのに、覚えていない。もどかしい。
「ネスサン・・・クルシイ・・・タスケテ」
 どうしてそんなに苦しそうなのか。どうしてぼくに助けを求めるのか。きみはぼくを殺すつもりなんだろう?なのにどうして…。
 ポーラの祈りによってダメージを受けるのが苦しい?自我が崩壊してしまっているのが苦しい?それとも、ぼくを殺そうとするのが苦しい?
 このどれも答えではないのかもしれない。この全てが答えなのかもしれない。もしくは、自分でも気が付かないうちに、無意識に繰り返しているだけなのかもしれない。先ほどからうわごとのようにぼくの名前を呼び続けているように。
 あまりにも苦しそうに助けを求められて、胸が苦しくなった。お願いだから、そんなふうにぼくに助けを求めないで。助けたくなってしまう。手を差し伸べてあげたくなってしまう。でも、できないんだ。もうここまで来てしまったから、お互い引き返せない。どちらかが滅びなければいけない。先にそうなるように仕向けたのは、ギーグ、きみだろう?それなのに、なんで今更…。だから、お願いだから、そんな声でぼくに助けを求めないで。
「ネスサンネスサン・・・ドウシテ・・・アノトキミタイニ・・・テヲニギッテクレナイノ?」
 そう言われて、なにかを思い出したような気がした。でもまだはっきりとしない。ただ頭の中に、ある場面が一瞬だけ浮かんだ。子供の手と、青い色をした誰かの手。それが、手をぎゅっと握り合っていた。
 なんだかわけのわからない衝動に突き動かされて、ぼくはポーラの肩を掴んだ。驚いた様子でポーラと、そして祈っている彼女を守るためにギーグと対峙していたジェフとプーがぼくを見る。
「ネス、どうしたんだ?」
 ジェフがぼくに問う。そんなの、ぼくが聞きたい。ただあまりにもギーグが苦しげだから、これ以上酷いことをしてはいけないと思ったのだ。ぼくが彼を守ってあげなくては、と思った。
 なんでもないよ、と告げて、ぼくはポーラの肩を離す。すると彼女はまた気持ちを込めて祈りはじめた。
 そうだ、よく考えるんだ、ぼく。なにも酷いことをされているのは、ギーグだけではない。ギーグだって、いろいろな人を苦しめている。ぼくらの地球を、そして未来を侵略しようとしている。そのせいで苦しんだ人達が数え切れないほどいるはずだ。これは身から出た錆。同情をしてはいけない。
 でも、と思う。でもギーグが苦しんでいる時に、傍にいてあげられる人がいない。他の人達は、誰かが傍にいて、温かい手でこちらの手を握ってくれる人がいるだろう。心配ないから。大丈夫だから。私が傍にいるから。そうやって、母のように慈しんでくれる人がいるだろう。
 だけどギーグは?ギーグが苦しんでいる時に、誰が彼の傍にいるの?彼は一人だ。部下はいても、信頼している者はいない。たぶん、ぼく以外に。
「おいネス、どこにいくんだ!」
 ジェフの声を無視して、ぼくはふらふらと足を踏み出した。まるで夢遊病者のような足取りで、ギーグの傍に近づく。
 知っている、知っている。ぼくはギーグを知っている。出会っている、どこかで。過去じゃない。だからマジカントにギーグはいなかった。過去に出会っていないのならば、未来だ。きっと未来のぼくが、ギーグと出会っている。自由に時間を行き来することのできるギーグだ。ありえない話ではない。
 先ほど一瞬だけぼくの頭に浮かんだ光景は、きっと未来の光景なのだろう。未来のぼくとギーグなのだ。いったいどういう経緯で、あんなふうに手を握り合ったのかはわからない。しかしはっきりとわかるのは、そこには敵意も殺意もなかったということ。
「ネスサン・・・クルシイ・・・テヲ・・・」
 両手を差し出す。真黒な闇が手を握るように、ぼくの両手を包み込んだ。冷たい。生きているものとは思えないほど、冷たい手。ぼくはこの体温を知っている。
 急に悲しくなって、ぼくは涙を流した。断片的に、ぼくの中にぼくの知らない光景が流れ込んでくる。これはギーグの記憶だ。髪の長い、青い肌をした男の人と、野球帽をかぶった15歳前後の少年。ギーグと、未来のぼくなのだろう。
「アァ・・・ネスサン・・・アタタカイネスサン・・・ワタシノ・・・トモダチ」
 次々とギーグの記憶がぼくの中に流れ込んでくる。それに比例して、ぼくの涙も大量に溢れてきた。
 ぼくとギーグが一緒にいる。一緒に会話をしている。一緒に街を歩いている。一緒にヨーヨーで遊んでいる。一緒に図書館で本を読んでいる。一緒に眠っている。一緒にママの手作りハンバーグを食べている。そして、手を繋いでいた。まるで、本当に仲の良い友達のように…。
 きっと、そうなのだ。未来のぼく達は、友達なのだ。やはりどういう経緯で友達になったのかはわからない。でも、確かにお互いに信頼し合っているのがわかる。
「ネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサン」
 壊れたテープレコーダーのように、ギーグはぼくの名前を呼び続ける。そしてぼくの涙も流れ続けた。
 どうしてぼくときみは、倒さなければいけない敵同士としてこの場に立っているんだろうね。きみの記憶の中のぼく達は、こんなにも仲良しなのに。どこできみは道を誤ってしまったの?それとも、最初から決まっていたことなの?ちえのリンゴに未来を予言されなかったら、ぼく達はずっと友達のままでいられたのだろうか。
 自身の力が大きくなりすぎて、自我を保っていられなくなったきみ。きっと地球を侵略したいというその欲望は、自我の崩壊からきたんだろう。そして、まだ今よりも自我が残っている時に出会ったのが、ぼくだったんだね。自我が完全に崩壊してもぼくのことを覚えているくらい、ぼくのことが好きだったんだね。
 今やっと、なぜ最初からきみが自身でぼくの命を狙いにこなかったのかがわかったよ。直接手を下したくなかったんだ。だから次々と部下を送り込んできた。でもごめんね、それはぼくを心と体とともに強くすることしかできなかった。
 ぼく達は未来で出会わなければよかったのだろうか。そうすれば、互いに悲しまずにすんだのだろうか。でもぼくは、幸せそうな未来のぼくときみを否定することができない。
「ネスサン・・・クルシイ・・・カナシイ・・・タスケテ」
 ぼくの両手を包み込んでいた闇がうごめく。闇がぼくの腕を登ってきた。ぼくの体を包み込もうとしている。背後で名前を呼ばれた。仲間がぼくの心配をしている。
 わかってる。ぼくたちのどちらかが滅びなければいけないのは。そして、滅びるのはギーグ、きみの方だ。
 ポーラの祈りのせいで苦しいだろう?ぼくを殺さなければと思って、悲しいだろう?だから助けてくれとぼくに言うのだろう?大丈夫、今楽にしてあげるよ。息も絶え絶えに喘いでいるきみを、せめてぼくが…。
「さよならだよ、ギーグ」
 ぼくはありったけの念動波を、直接ギーグに流し込んだ。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!」
 絶叫が上がる。闇がのたうつ。それはだんだんと縮んでいった。
 涙が止まらない。死ぬ、ぼくの親友が死ぬ。ぼくの手によって、死ぬ。
「ネスサン・・・ネスサン・・・アリガトウ」
 最後に一言そう言うと、ギーグは消滅した。
 これで未来は変わるだろう。ぼくとギーグが将来、出会うことはなくなった。それでも、きみがぼくに残してくれた記憶は忘れない。ぼくはいつまでも、ぼくときみが親友同士だったということを忘れないだろう。


END

 

 

 


未来で出会ってるネスと擬人化ギーグを書いてみたいわけですが、でもそこまで行くともうMOTHER2関係なくね?という感じになってくるわけで。
そしてこの二人はホモじゃないです。あくまでも友達です。

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自己紹介:
1月14日生まれの新潟県民。

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最近はfkmt作品に手を出してます。
乙一作品と三原ミツカズ作品と藤田和日郎作品も好き。
節操なしの浮気性です。
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