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以前書いた猫なリゾットの続きです。
そんなに長くはならないと思いますが、一応男と猫シリーズとでも銘打っておきます。
書いたのが昔すぎてどんな話にするか忘れてしm(ry)
ラストはどうするかギリギリ覚えているので、その記憶を頼りに書いていこうと思います。
一話目は↓から。
http://nandemonai000.blog.shinobi.jp/Entry/174/
どこかで、見たことがあるような気がした。初めて見た時から、そう感じていた。だから最初は普通の猫のふりをして、男を観察していた。
数百年ぶりに普通の猫のふりをしながら、生きてきた過去400年の記憶を探った。しかし一番古い記憶は、まだ普通の猫だった時の記憶は霞がかかっているようで、はっきりとしなかった。思い出すのは、ただだらだらと生を長らえてきたことだけ。
自分は果たして、どんな飼い主に飼われていたのだろうか。男だったのか、それとも女だったのか。それすらも思い出せない。
やがて猫は考えるだけ無駄だと、思考を一時中断させた。
「重い・・・」
うめくような、寝惚けたような声で男が言う。やっと起きたか、と猫は眠っている男の胸の上に座りながら思った。
「案外、鈍いな」
声を掛けると、男はまだ半分眠っているような瞳で猫を見る。そして一気に覚醒をしたように、目を大きく見開いた。
なにか言いたげに口を開いて、また閉じる。驚きのあまりに言葉が出ないのか、それとも単純に言葉を探しているのかはわからない。
「・・・鈍くない」
やがてそれだけを、不機嫌そうな声で返した。
事実、男は鈍くないはずだった。むしろ他の人間よりも鋭い方だと自負している。知らないうちに背後に立たれるだとか、寝込みを襲われるなんてことは、今まで一度もなかった。この化け物が異常なのだ。そう内心で思う。
睡眠を邪魔されて不機嫌そうな男とは裏腹に、猫は機嫌が良かった。上半身裸の男の胸を尻尾で幾度もゆるゆると撫でる。
あの夜、男とわかれてから一度も食事をしていなかったから、ずいぶんと腹を空かしていた。一度この男の血の味を知ると、もう他の人間の血なんて飲めたものではない。元々、人間の血は好きではなかったのだ。ただ生きるために飲んでいたにすぎない。しかし今は、男の血を進んで飲みたいと思っていた。
あの時の味を思い出し、空腹も手伝って猫の口内に唾液が溜まる。それを意図して嚥下し、すぐにでも男の首筋に噛みついてやりたいのを我慢しながら、猫は口を開いた。
「久しぶりだな」
普段なら人間となんてほとんど話さない。餌と会話をしてもしょうがないから。口を開くのは、上手く二人きりになれる場所に行けるように誘い込むときだけ。だから本当なら、二人きりであるこの状況で会話は必要ないはずだった。男が眠っている時に、血をもらってもよかった。
会話をする気になったのは、少なからずこの男に興味を持っているため。この自分と同類の、誰かの命を奪ってまで生きようとしている人間。ただ餌にするだけでは、勿体無いように思うのだ。
「もう来なくてよかったのにな」
男が憎まれ口を叩いたので、猫はおかしくなって口端をわずかにつり上げて笑った。こらえきれなくて、喉を鳴らす。それを見て、男はますます不機嫌そうな顔をした。
「嘘だ」
断言できる。男は自分が来るのを待っていた。そうでなければどうして用心深いこの男が、窓を少し開けたまま眠るだろうか。まるで、猫が入ってこれるように開けられた隙間。
「俺を待っていたのだろう?」
「自意識過剰な畜生だな」
「そういうお前は素直じゃないな。俺が来ないで寂しかったと言えばいいものを」
からかってみた。実際は、彼もまた己と同類である猫に興味があっただけだと知っている。ただそれだけでも、待っていたという事実には変わりはないので、単純に嬉しいのだ。ここに来ることを自分だけが許されたような気になる。その嬉しさが転じて、からかってしまう。
キッと男の目じりがつり上がったかと思うと、硬く握られた拳がとんできた。猫は人間の姿になると、瞬時に男の手首を掴んでしまう。猫の動体視力を持ってすれば、造作もないことだった。
男は鋭く舌打ちをする。
「重い、退け」
獣のような金色の瞳で睨みながら言う。そりゃあ姿だけなら成人男性にいつまでも胸の上に馬乗りになられていれば重いだろう。
だが猫は男の言葉を無視してゆるりと笑うと、ざらざらとしたブラシのついた、人間とは違う舌で彼の指を舐めた。何度も何度も執拗に、それこそ愛撫をするように舐められて、男の背筋がざわざわとしてくる。それが不快感からくるものではなく、快楽からくるものと知っているから、男はもう一度舌打ちをしたくなった。
化け物が、なにを考えている。
「おい、なにをしている、離せ」
快楽を悟られないように、撫然とした声色で言う。しかし猫には気付かれているだろう。
「噛みつかれてただ痛いだけでは嫌だろう?代わりに気持よくしてやる」
「貴様に血をやるなんて言ってない」
「連れないことを言うな。もう空腹の限界なんだ。これ以上血を口にしなかったら、今度は俺が体の中にいるムシどもに喰われてしまう」
「勝手に喰われていろ」
男に体を重ねるようにして横たわると、可愛いげのないことを言うその口を塞ぐ。舌を絡めながら裸の胸を撫でると、大袈裟なくらい体が揺れた。いくらなんでも、敏感すぎる。彼は慣れているのだろう、男相手に。
そう思うと、なんだかわけのわからない奇妙な感覚が猫を襲った。胸の辺りがむかむかとする。男の性生活なんて、自分にはどうでもいいはずなのに。
猫はむかむかとした気分のまま、舌を男の首筋に滑らせた。男性らしく筋ばっているが、肌は女のように滑らかだ。時々赤い跡を散らしながら、しばらくその肌を舌で、そして指先で堪能する。
だがやがて、我慢できなくなったように、その肌に深く深く自らの牙を埋め込んだ。
汗の臭いと精の臭い、そして血の臭いが部屋中に充満していた。体力を使い果たし、そのうえ大量に血を吸われてぐったりとしている男の代わりに猫は立ち上がると、部屋の窓を全開にして換気を試みる。すでに空は白み始めていて、澄んだ空気が心地良かった。
恐ろしくよかった。驚くほど、猫と男の体の相性は抜群だった。今まで何度も人間を抱いているが、ここまで我を忘れて誰かを抱いたのは初めてだ。
おかげで自制がきかず、予想以上に大量の血を吸ってしまった。男もかなりよがってはいたが、このままでは間違いなく文句を言われてしまう。最悪、殴られるでは済まないかもしれない。
どうしようかと考えて、結局猫は元の姿に戻った。四足歩行で男がぐったりとしているベッドまで戻り、跳び乗る。
人間の姿よりは、猫の姿の方が怒りは半減するかもしれない。猫は男が猫好きであることを祈った。
「調子はどうだ?」
仰向けで首元を真っ赤に染め、蒼白い顔で瞳を閉じている男に尋ねる。彼が眠っているわけではないというのは、気配でわかった。
「死ね」
第一声が、それ。やはりそうとう機嫌が悪いな、と猫は思う。
「済まなかった。流石に血を吸いすぎた」
おかげでこちらは満足だが。
「でもあんたもずいぶんと気持ちよさそうだったから、よかったじゃないか」
その言葉にパチッと男の瞳が開かれる。噛み殺さんばかりに、横目で睨まれた。
元の姿に戻っていてよかったと思う。この調子では、人間の姿でいたら確実に殺されていた。
なんとか男の機嫌を良くしようと、猫は彼の頬を舐める。先ほどとは違い性的なものではなく、労るようなものだった。
それが功を奏したのか、やがて男は疲れたように深いため息を吐いた。そしてまた瞳を閉じる。
「もういい、寝る。今度は私が起きるまで起こすな」
「わかった」
シャワーを浴びる気力もないらしい。余程疲れていたのか、すぐに寝息が聞こえはじめた。猫はその寝顔をジッと見つめる。
やはり、自分はこの顔を知っている。しかしどこで見たのかが思い出せない。
しばらく思い出そうとしていたが、結局思い出せないまま、猫は諦める。
まぁそのうち思い出すだろう。
そう思い、猫は男の横で丸くなり、一つ欠伸をすると瞳を閉じた。
END
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