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未来の15歳ネス+擬人化ギーグです。
私はギーグに夢を持ち過ぎてると思う。突っ込んだら負けです。
ギーグとネスの脳内設定は過去ログを参考に。
なにをするあてもなく、オネットの街中に遊びに来ていたネスは、ふと街の地図が描かれている看板の前で立ち尽くしている人を発見した。全体的に髪が長く、前髪が顔を覆ってしまっているため表情も性別もわからない。ただ、青い色をした肌はやたらと目に付いた。
声をかけた方がいいのだろうか、とネスは考える。途方に暮れたように看板を眺めるその姿は、迷子そのものだ。ずいぶんと困っているのだろうというのが傍目から見てもよくわかる。
しかし大抵、肌の色が青ざめている人は(あの人の場合本当に青いが)、声をかけると襲いかかってくる。ネスもそれを体験済みだ。
どうしようか、と思い、ネスは改めて相手を見る。まるでこの世に独りだけ取り残されてしまったような雰囲気だ。基本的に困っている人を見ると放っておけない性格のネスは、助けてあげたくなってしまう。
ポケットの中を探った。そこには家を出る前に入れてきたヨーヨーが入っている。
もし襲ってきたらこれでなんとかしよう。
そう思い、ネスは声をかけることにした。
「どうしたの?」
ビクッと、大げさなくらい相手の肩が跳ね上がった。長い黒髪を揺らしながら、こちらを見る。
「ソノ・・・エエト」
いきなり声をかけられたからなのか、ずいぶんと慌てているようだった。小さく紡ぎ出されるその声は、若い男性のものだがずいぶんと頼りない。
「迷子?」
「ア・・・ハイ。ほてるノ場所ガワカラナクテ・・・」
イントネーションが微妙に違う。外国の人だろうか。このオネットに観光で来たのか、それとも仕事で来たのかはわからないが、どちらにしても珍しいことだ。
「よかったらホテルまで案内しようか?どうせこの近くだし」
「エ?」
緊張したように彼がネスを見る。思わず、苦笑してしまった。
「そんな身構えなくても、別にとって食べたりはしないよ」
言ってから、ネスは歩き出した。20歩ほど歩いてから彼が自分についてきていないことに気が付いて、振り返る。そして手招きをした。ハッとしたように彼は肩を揺らすと、小走りに近付いてくる。
なんか飼い主に駆け寄る仔猫とか仔犬みたいだ。
ネスがそう思いながら待っていると、あと数歩でこちらに着くというところで彼の体が大きく揺らいだ。倒れる、と思った瞬間には、もうネスは動いている。数歩踏み出し、倒れてくる彼の体を抱きしめるようにして支えた。ネスよりも身長は高いはずなのに、ずいぶんと華奢で軽い体だった。
近くだと前髪の間から彼の目が見えた。綺麗な金色の瞳が、驚いたように揺れている。ネスもまた、表情には出さないものの、予想以上に冷たすぎる彼の体温に驚いた。
「大丈夫?」
「ス、スミマセン・・・!マダ、コノ体ニ慣レテイナクテ・・・」
「え、体?」
「ア、イエ・・・ナンデモ、ナイデス」
彼の体を放すと、ネスは相手の冷たい手を握った。わずかに緊張をしたように手をこわばらせる彼に、ネスは安心させるように笑いかける。
「これなら転びそうになっても大丈夫だよね」
言ってから、二人は並んで歩き出した。
ネスが自己紹介をすると、彼はギーグと名乗った。最初は話しかけてもどもるばかりだったが、緊張が解けてきたのかしだいに普通に喋るようになってきた。しかし相変わらず、イントネーションが微妙に違っていて、ネスはやはり外国から来た人なのだろうと思った。
「ギーグって凄く低体温だよね。寒くない?」
「ソウ・・・デスカ?私ハコレガ、普通ナノデスガ。ネスサンガ、高スギルノデハ?」
彼の言葉に、ネスはぷぅと頬を膨らませてみせる。
「なに?それってぼくが子供体温だ、って言いたいの?」
「ソ、ソンナコトハ・・・」
ネスの機嫌を損ねたと思って慌てるギーグに、思わず噴きだしてしまう。そして、嘘だよ、と笑いながら言った。
そうこうしているうちに目的地にたどり着き、二人は一度ホテルの前で立ち止まる。
「ネスサン、ココマデ案内ヲシテイタダイテ、アリガトウゴザイマシタ」
腰を折りながら丁重に礼を言われる。少し親切にしただけなのにここまでかしこまられて、ネスはなんだか気恥ずかしくなってしまった。それほど大したことはしていない。ここまで丁重に礼をされると、不思議な気分になる。
「そんなかしこまらなくていいって。ぼくだって好きでやったんだから」
なんだか、ギーグという人は放っておけないのだ。ネスよりも歳上だろうに、どこか雰囲気が不安定で支えてあげたくなってしまう。独りにしておいたら壊れてしまうのではないかというほど、不安定で繊細な印象を与える人物だった。
「それより、一人でチェックインできる?」
ホテルにたどり着くまでに気が付いたことの一つに、ギーグは物凄く人見知りだということがある。ネスが顔見知りの人に挨拶をするたびに、彼は緊張をしたようにこちらの手を強く握りしめてきた。
この問いにギーグが困ったような顔をしたので、ネスは無言で彼の手を引いた。彼の代わりに部屋を取り、チェックインをする。それからまた手を引いて、部屋まで案内をしてあげた。
部屋に着くと、やはり彼は丁重に礼を言ってくる。それに応えてから、ネスは部屋を見渡した。なかなか良い部屋だ。お金持ちだな、と感心する。しかしよく見ればギーグは手ぶらだ。荷物らしいものを持っていない。
「ねぇ、荷物はどうしたの?まさかどこかに置いて来ちゃったんじゃ・・・」
「荷物?」
ギーグは一度小首を傾げ、すぐに納得をしたような顔をする。
「地球デ生活ヲスルニハ、必要ナモノガアルノデスネ。ソレナラ、コノ街デ買オウト思イマス」
「ならぼくもついて行くよ。街の案内もできるし、それに見せたい場所があるんだ」
そうと決まれば、とネスは彼の手を引いた。
「イ、イインデスカ?ソコマデシテイタダイテ・・・」
「別に予定があるわけじゃないし、乗りかかった船だから気にしないで。きみが迷惑なら別だけど・・・」
「ソ、ソンナコトアリマセン!ゼヒ、オ願イシマス」
こうしてネスは再びギーグを外へつれだした。街の案内をしながら、生活必需品を買ってゆく。やはり人見知りの気があるようだが、それでも楽しそうでネスはなによりだった。
どうやら見るもの全てが珍しいらしく、なにかを見つけてはこれはなにかと質問をしてくる。その表情は子供のようで、興奮のせいか頬が赤く染まっていた。これほど楽しんでもらえると、ネスとしても案内のしがいがある。
昼食は一旦ホテルに戻り、ピザを注文して二人で食べた。ギーグは溶けたチーズが伸びるのを見ていたく感動をしているようだった。
午前中のうちに必要なものは全て買ってしまったので、午後からはオネットの観光がメインとなる。オネットには観光らしい観光をできるところはないが、それでもギーグは楽しんでいたようなので、ネスは安心する。
「ソウイエバ、ネスサンノ見セタイ場所ッテドコナンデスカ?」
日が傾きはじめた頃、オネットの西にある雑木林を並んで歩いていると、思い出したようにギーグは尋ねた。
「それは・・・」
ネスが言いかけたところで、どこからか低い唸り声が聞こえた。二人同時にそちらに目を向けると、そこには野良犬が鼻に皺を寄せて牙を剥き出しにしながらこちらを睨んでいた。テリトリーに入ってしまったのだろうか。時折いるのだ。やたらと人間に襲ってくる動物というのが。
まずい、っと思った瞬間、犬はより近くにいた方のギーグに襲い掛かった。
「ギーグ、危ない・・・!」
慌ててネスが彼を突き飛ばす。ギーグは尻餅をつき、そしてネスは彼の代わりに犬に左手を噛み付かれた。ネスはすぐにそれを振り払うが、噛まれたところからは皮膚が裂けてだらだらと血が流れ出す。犬はまたいつでもこちらに飛びかかれるように、姿勢を低くしていた。
「ネスサン!」
自分をかばって怪我をしてしまったネスを見て、ギーグは上ずった声を上げる。そして、犬を睨んだ。
「コノ犬・・・!」
長い前髪のしたで、金色だった彼の瞳の色が赤く染まった。風もないのに、ギーグの髪がゆらゆらと蠢き始める。不穏なものを察して、犬は彼を見た。そして怯える。動物の本能なのか、自分が今とてつもなく強大なものを敵に回してしまったと理解したらしい。
犬は金縛りにあったかのように動かなくなる。ギーグはそれに手を伸ばしかけた。だがその瞬間、犬の鼻先に丸い物体がぶつかる。キャン、と悲痛そうな声を上げた。その衝撃で体が動くようになったのか、犬は一目散に駆け出して逃げてゆく。
ギーグがネスの方を見ると、ネスは右手にヨーヨーを持っていた。それで攻撃をしたらしい。
「突き飛ばしちゃってごめんね。怪我はない?」
ヨーヨーをポケットにしまい、ネスは未だに尻餅をついたままの彼に手を伸ばす。手首を取ると、引っ張り起こした。
「ワタシハ大丈夫デス。ソレヨリモネスサンガ・・・」
「ぼくも大丈夫だよ。ほら」
ネスはギーグの前に左手を差し出す。先ほどまでは血が流れていたはずなのに、すでに止まっていた。というよりも、血の跡だけで傷跡が綺麗に消えている。どういうことだ、とギーグは首をかしげた。
「ぼくはちょっとした超能力を使えるから、簡単な傷なら治せるんだ。だから、あれぐらいは平気なんだよ」
ギーグはネスの左手を取り、まじまじと見る。指先で皮膚にこびり付いた血をこすった。その下には、やはり傷跡は残されていない。人間にもこんな不思議なことができる者がいるのかと、ギーグは感心した。
そんな彼をネスはじっと見つめた。彼の顔は相変わらず前髪で隠れているせいでよく見えない。
「ド、ドウシタンデスカ?」
無言で見つめてくるネスに、ギーグはどぎまぎしながら尋ねる。傷は治ったとはいえ、やはり自分のせいで怪我をさせてしまったことを怒っているのだろうか、と考えた。
「その前髪、邪魔じゃないかなぁ、と思ってさ」
言いながら、背負っているリュックサックをおろし、なにかを探し始めた。そして目的の物を取り出す。
「午前中に行った雑貨屋で、これ買ってきたんだけど・・・」
出てきたのは女の子が使うような、赤いヘアピンだった。腕を伸ばし、ギーグの前髪を留める。その頃には彼の目の色は元に金色に戻っていたので、ネスはギーグの正体を疑うことはなかった。
ようやくまともに見れた彼の顔は、ネスが思っていたよりも整った顔立ちをしていた。
「よかった、凄く似合ってるよ」
言われて、ギーグは軽くヘアピンに手で触れた。
「それあげるよ。よかったら使ってね」
「エ・・・?」
「ギーグにプレゼントする、ってことだよ」
その言葉に、嬉しさのせいか彼はうっすらと顔を赤くした。
「ア、アリガトウゴザイマス・・・!」
あまりにも彼が嬉しそうな顔をするものだから、ネスはこちらまで嬉しくなって笑った。まさかヘアピンだけでここまで喜ばれるとは思っていなかった。もっと他のものをプレゼントしたらいったいどんな反応をしてくれるのだろう、と思ってしまう。
「視界もよくなったことだし、それに時間だし、行こうか」
「時間?」
歩き出すネスの背中を追いかけながら、ギーグは問う。
「この先にクチバシ岬ってところがあってね、海が一望できるんだよ。そこを見せたかったんだ」
「海、知ッテマス。青インデスヨネ。一度近クデ見テミタカッタンデス」
はしゃぐギーグに、ネスはこれからの彼の反応を想像して可笑しくなった。
しばらく木々ばかりが続いていたが、やがて視界が開く。さえぎるものがなにもないそこは、広大な海を一望することができた。
「凄イ・・・」
ただ一言、ギーグが感嘆の言葉をもらす。彼の予想に反して、海は青い色をしていなかった。その代わり、海に飲み込まれるようにして沈んでゆく夕陽の光を浴びて、オレンジ色に染まっている。空も海と同じ色をしていた。太陽によって染め上げられたそれらは、想像していたものよりもずっと美しい光景だった。
二人は無言で沈む夕陽と、徐々に闇に染まっていく海と空を眺めていた。やがて完全に太陽が沈みきる前に、ネスが口を開く。
「これを見せたかったんだ。ぼくがオネットで、一番好きな場所と光景を」
ギーグはネスの方を見た。感動と興奮が混ざり合ったような表情をしていた。今にも涙さえ流しそうだ。
「地球ニハ、私ノ知ラナイモノガ沢山アルノデスネ。コノ地ヘ来テヨカッタデス。ネスサンニモ出会エテ、本当ニ嬉シイ・・・」
深く感動したような、わずかに震える声で言った。
ネスとギーグは元来た道をたどって歩く。完全に太陽が沈んで真暗になる前に、雑木林を抜けなければいけない。足元が暗くて危ないからと、ネスは再び彼の手をしっかりと握った。ギーグもまた、それを握り返しながら歩く。どちらも無言だった。先ほど見た光景を胸の中で思い返している。
雑木林を抜ける頃には太陽はすでに沈みきっていた。しかし街の灯りのおかげで、歩くのに不便はない。そのままネスはギーグをホテルまで送る。
「今日ハ、本当ニアリガトウゴザイマシタ。トテモ楽シカッタデス」
「ぼくもギーグが素直に楽しんだり喜んだりしてくれるから、楽しかったよ」
ギーグは小さくうつむいた。暗がりにいるせいではっきりとはわからないが、顔を赤くしているようだった。なにか言いたいことがあるのか、小さく口を開いたり閉じたりしている。彼の意図を察して、ネスは先に口を開いた。
「なに?」
「アノ・・・私ハシバラクココニ滞在ヲスル予定ナノデ・・・モシヨカッタラ、マタ・・・会ッテイタダケマスカ?」
顔を小さく上げて、うかがうようにしてネスを見た。断られたらどうしよう、という顔をしている。そんな彼の不安を打ち消すように、ネスは笑った。
「もちろんだよ。じゃあまた明日ね」
「明日・・・」
手を振ってから駆け出すネスに、ギーグも慌てて振り返す。
明日、とは、明日も会ってくれるということだろうか。
背を向けて走るネスの背中を見送りながらそう思い、ギーグは小さく口元をほころばせた。
END
そんな感じの捏造出会い話。まだほぼ10割自我が残っているので情緒は安定しているようです。これからだんだんと自我が崩壊していくんだと思います。
なんか雰囲気が物凄くホモホモしい。ネス←ギーグでもいい感じです。
私はギーグをなんだか物凄く可愛い生き物と勘違いしてます。
KAITO兄さんの歌うSMILES and TEARSが好きです。お勧め。
http://www.nicovideo.jp/watch/nm3554678
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1161710
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