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おっさんと人外を中心によろずっぽく。凄くフリーダム。
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クリスマスフリー小説です。
サイトなどに展示するさいは、私が書いたのだとわかるように表記して載せてください。




 クリスマス・イヴを3日後に控えた今日、リゾットはディアボロに会いに来ていた。目的はただ一つ。来たる聖夜を一緒に過ごすという約束をとりつけるため。
 普通の恋人同士ならなんの問題もないのだが、残念ながら二人はそんな関係ではなく、今のところリゾットは数いるディアボロのセックスフレンドの中の一人だ。しかもリゾットの片想いときている。なのでなんとかディアボロを口説き落とさなくてはいけない。クリスマス云々の話をする前から、彼の嫌そうな顔が頭に浮かんでいるが、それくらいで諦め、くじけていてはディアボロに片想いなんてしていられない。
「ボス、イヴの日は一緒に過ごしてくれ」
 なんの飾りも付けず、直球に言う。案の定、彼は嫌そうな顔をした。
「わかった。24日の日は貴様に仕事を入れておこう」
「ついさっき、任務を終えて帰ってきたばかりだが」
 そうなのだ。リゾットはつい先ほど任務を終えたばかりで、その足でディアボロのところへ来た。
 元々ディアボロは、今年一杯はかかる任務を押し付けたはずだった。こうやって自分を誘いにくるとわかっていたから。しかし予定が狂ってしまった。予想よりも一週間ほど早く、リゾットは任務を終らせてきた。手を抜いたわけではなく、いつものように完璧な暗殺だったので文句も言えない。愛の力というのは恐ろしい。
「その様子じゃあまだ元気だろう、遠慮するな。報酬ははずんでやる」
「知っているか?クリスマスの日は自殺者が多いそうだ。そんな日にわざわざ死体を増やすこともない」
 だからどうした、というふうにディアボロが鼻を鳴らす。彼にとって自分の知らない人間が生きようが死のうが、どうでもいいことだった。リゾットだってそんなことはどうでもいい。ただもし本当に仕事を入れられたら、ストライキをするつもりでいた。
「どうせ24日に会ったって、ヤるだけだろ」
「最終的な目的はそうだな」
 今更隠すこともないので、素直に頷く。
「私にしてみれば、相手がお前である必要はない。他のセフレでいい」
「そうしたら死体が一つ増えることになるな」
「さっき自分が言った言葉も忘れるくらいボケたか?」
 ディアボロは呆れたようにため息をつく。能力は高い、顔も好み、そのうえ従順でセックスも上手い。リゾットはディアボロにとって申し分ない相手だ。しかしこういうところが物凄く煩わしい。
「なんにしても、24日は無理だ。先約がある」
 この言葉に、リゾットの眼光が鋭くなった。犬モードから、暗殺者モードへ。
「相手の男は誰だ?今から先約を破棄させてくる」
 力ずくで、という言葉は飲み込んだ。
「違う、そっちじゃない。相手はトリッシュだ」
 意外な人物の名前をあげられて、リゾットは一瞬面食らったような顔をした。
「いくらボスでも娘相手というのは引くぞ」
「ぶち殺されたいのか?貴様の尺度でものを考えるな。夕食を一緒にとるだけだ、二人でな」
 最後の一言を殊更強調していう。そこには邪魔をしたら本気で殺すぞ、という凄みがあった。
「ボスから誘ったのか?よく彼女が承諾したな」
「私も意外だった。言ってみるものだな」
 リゾットもまさかあのファザコンでありながら素直ではないトリッシュが、自分の前に立ちはだかるとは思わなかった。いつもならディアボロに誘われたら突き放すだろうに。まさか自分対策なんじゃないか、とか考えてしまう。イヴの日に父親と自分を会わせないための。
「そういうわけだから、24日は邪魔をするなよ」
 そう言われ、リゾットはもうくいさがらなかった。彼がなによりもトリッシュを優先させるということを知っているから。
 結局この日、リゾットはこれ以上はなにも言わずにディアボロの前から立ち去った。


 24日の夜、ディアボロは無事にトリッシュと夕食をともにした。全てディアボロの手作りでありながら、そこら辺の店にまったく見劣りしない豪華なメニューに彼女も満足をしていたようなので安心する。たまには家族らしいことができてよかった。
 しかしここまで無事にことが運ぶと、逆にリゾットが気がかりだ。絶対に邪魔をしてくると思っていたというのに。まぁ来たら来たで、容赦なくスタンドで殴りつけていたが。
 そんなことを考えながら食器などの後片付けをしたり、風呂に入ったりをしているうちに、23時近くになってしまった。トリッシュの方はすでに自室で休んでいる。ディアボロもドライヤーで長い髪を乾かしてから、2階の自室に向かった。
 部屋に灯りを付け、これからどうするか考える。このまま一人で寝るか、それとも誰かを呼ぶか。リゾット辺りなら、こんな時間だろうが呼べば喜んでやって来そうだ。元々来たがっていたわけだし。そんなふうに思うくらい、今のディアボロは機嫌が良かった。邪魔をしにこなかったことだし、少しくらいは褒美をやってもいいだろうとすら考える。
 携帯電話に手を伸ばそうとした瞬間、窓にコツンとなにかが当たる音がした。そちらに目をやると、もう一度音がする。どうやら石がぶつかったようだ。ディアボロの部屋は2階なので、当然誰かが当てようとする明確な意志がなければ石はここまで飛んでこない。
 窓の傍まで歩みより、開け放つ。冷たい空気を肌に感じながら下を見た。そこにいた黒い影に、思わず苦笑してしまう。
「変質者か」
「あながち間違いではないな」
 白い息を吐きながら言うディアボロに、黒いコートを羽織ったリゾットは同じく白い息を吐きながら答えた。
「いつからそこにいる?」
「3時間前くらいだな」
「よかったな、警察を呼ばれなくて」
「まったくだ」
 全身黒ずくめの男が3時間も家の前にいれば、端から見れば完全に変質者だ。おそらくずっとこの寒空の下、ディアボロとトリッシュの食事会が終るのを待っていたのだろう。
 ディアボロは一旦窓を閉めると、コートを羽織って下に降りた。近くでリゾットを見れば、普段から白い顔を更に白くさせていた。だが本人は気にしていないらしい。元々、暑さや寒さには無頓着な男だった。それでも、3時間も外にいれば体は芯から冷えるだろう。
「他の暗殺チームのメンバーとクリスマスパーティーでもしていると思っていたが」
「していたが、途中で抜け出してきた」
 相変わらず暗殺チームは仲が良いな、とディアボロは思った。抜け出す際に、散々リゾットがメンバー達から彼女のところへ行くのかとはやしたてられていたことを、彼は知らない。そしてそんなメンバー達に、リゾットが意気揚々と頷いたことも。
「ボス、手を出してくれ」
 なんの脈絡もない言葉に、ディアボロは若干警戒を孕んだ目でリゾットを見る。自分はそんなに信用がないのかと軽くショックを受けながら、リゾットはいいから、と促した。
 渋々といった様子で手を差し出してくる彼の手に、リゾットはずっとコートのポケットに入れておいたものを渡す。
「メリークリスマス」
 それは銀の指輪だった。シンプルながらも控え目に模様が彫られていて、一見で特注だというのがわかる。しばらくそれを眺めていたディアボロは、やがてリゾットを見た。
「これをはめてお前を殴れと?」
「一応メリケンサックじゃなくて、指輪のつもりなんだがな」
「普通、こういうのはラッピングをして渡さないか?」
「そうしたらあんたは中身を見ずに捨てるだろ」
 リゾットの言うとおりだったので、ディアボロはそれ以上は言わなかった。
 流石なもので、ちゃんとリゾットはディアボロの好みを熟知していてこの指輪も嫌じゃない。ただ一つ不満があるとすれば、
「どうして内側に『ディアボロ・ネエロ』と彫られている」
「ちょっとした茶目っ気だ」
 眉間に皺を寄せて言うと、リゾットは微かに笑った。
「気に入らなかったら捨ててくれてもかまわない。ボスに渡せることに意味があるんだからな。まぁ、ただの自己満足だ」
「最初から捨てられる覚悟で来たか。いい心がけだ」
 ディアボロもまた、微かに笑う。
「それに免じて、内側の文字を削ってから使ってやろう」
 まったく予想をしていなかった言葉に、リゾットが目を丸くしながらフリーズする。普段はあまりそんな表情をしない男なので、ディアボロはそれを見ておかしげに喉を震わせて笑った。
 やがて衝撃から回復したリゾットは、ディアボロの顎を捕えると間を置かずにいつもより冷たい唇でキスをした。ここが外だというのも忘れて、舌を絡める。だが顔を離した瞬間に、思い切り殴られてしまった。キスをされている最中にはめたのか、人差し指にプレゼントした指輪がはめられていたため頬にひっかき傷のようなものができてしまう。腫れて熱を持ったそこに手をそえると、ディアボロがつまらなそうに鼻を鳴らした。
「場をわきまえろ、馬鹿め」
「本当に指輪をはめて殴るなよ。いい雰囲気がぶち壊しじゃないか」
「貴様と雰囲気なんて出してどうする」
 照れているのではなく、本気でそう思っているのだからタチが悪い。時折、リゾットどうしてこんな人間に惚れてしまったのか自分でもわからなくなる。恋は盲目とはこのことか。
「それじゃあ、雰囲気の出るところに行くか」
 言って、リゾットはディアボロの手を取った。
「どこへ?」
「ホテルを予約してある」
「私の家でもいいのに」
 暗に行くのが面倒臭いと言っていた。だがリゾットもここは譲れない。勘付いたトリッシュに、最中にデバガメをされては興ざめだ。子供はもう寝る時間。せっかくの聖夜を邪魔させはしない。
 ブツブツと文句を言いながらも、リゾットが手を引くとディアボロはついてきた。どうやら今夜は付き合ってくれるらしい。嬉しさに頬がゆるみそうになったが、なんとかこらえる。あんまりゆるんだ顔を見せると、彼も呆れるだろうから。
 美しいイルミネーションのほどこされた街を二人で歩く。ふと、ディアボロが思い出したように口を開いた。
「私がホテルに行かない、もしくは一人で寝ると言ったら、どうするつもりだったんだ?」
「メタリカであんたを弱らせてからホテルへ運ぶつもりだった」
「最低だな」
「結果オーライなんだからいいだろ」
 聖夜に無理矢理というのもいいだろう。だって性夜だし。そんなことを言ったら今度はスタンドで殴られるだろうから、あえて言わない。
「明日、ペットショップに行くからついてこい」
「動物でも飼うのか?」
「指輪のお礼に、お前に首輪を買ってやろうと思ってな」
「それは楽しみだ」
「いや、冗談だしそこは断るところだろ」
 はたして本当に首輪を買うかどうかは、その時になってみないとわからない。


END
 

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シノハ
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女性
自己紹介:
1月14日生まれの新潟県民。

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最近はfkmt作品に手を出してます。
乙一作品と三原ミツカズ作品と藤田和日郎作品も好き。
節操なしの浮気性です。
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