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ボス猫話の続きです。





 目が覚めてまず真先に、閉じよう閉じようとする瞼を必死にこじ開けながら時計を確認する。午後7時過ぎだ。逆算すると、9時間近く眠っていたことになる。仕事明けとはいえ、よく寝たものだ。強張った首筋と肩をゴキゴキと鳴らしてほぐしながら、ディアボロはどうしているだろうかと考える。
 ベッドからおりようと床に足を付いた。はずだった。しかし、固いはずの床は、何故か柔らかくぐにゃりとしている。不思議に思い視線を下に向けると、そこには大量の剃刀と、顔を真青にさせて気を失っているメローネが倒れていた。
 一瞬敵襲かと身構えたが、すぐに考えを改める。どうやら、自分自身がやってしまったらしい。大方、メローネが寝ている俺に手を出そうとして、無意識にスタンドを発現させてしまったのだろう。無意識だからこそ、手加減というものができず、相手は鉄分不足で倒れてしまったらしい。
 とりあえず部屋に剃刀が散らばっていると危険なので、落ちているそれをすべて鉄分に戻してメローネの体内に戻す。しばらくすれば、自分で起き上がってくるだろう。そう思いながら、自室をあとにした。
「はよー、リーダー。ちょうどよかったな、飯できてるぜ」
 本日の食事当番であるホルマジオが、俺の顔を見るなり言う。彼は、メンバーの中で二番目に料理が上手い。意外だが、一番上手いのはメローネだった。おそらく、『作る』のが好きなのだろう。
「ディアボロはどうした?」
 尋ねると、彼は少し苦笑いをしながら親指で一点を指差す。目でその先を追うと、ソファに座っているイルーゾォの膝の上に上半身を乗せ、下半身をソファに預けてぐったりとしている猫がいた。本当に、『ぐったり』という形容以外が当てはまらない。そんな彼の横で、プロシュートとギアッチョが手に猫用の玩具を持っている。まだ遊び足りない、というのが、雰囲気で伝わってきた。それを見て、理解する。どうやら、ディアボロは二人に遊ばれすぎたらしい。なんだかんだで、一番ディアボロを気に入ったのはあの二人のようだった。メローネは別として。
「ディアボロ、こっちへ来い」
 俺が寝ている間にまた人間の姿に戻っていなかったことに安心しながら、名前を呼ぶ。すると、疲れたように垂れ下がっていた耳が、ぴんと立った。起き上がり、こちらを見る。明らかに、助かった、という顔をしていた。いったいどんなハードな遊びをしたんだろうかと、考えてしまう。
 彼は一旦、床の上におりると、こちらに向かって歩いてくる。自分の足で歩いていることに、少し感動した。朝は、あれだけ動物のように四本足で歩くのを嫌がっていたというのに。もしかしたら、そんなことがどうでもよくなるほど、早くプロシュートとギアッチョのそばから離れたかったのかもしれない。
 ディアボロは俺のもとまで来ると、俺の脚に尻尾を絡めながら体をこすり付けてきた。ずいぶんと、猫の姿が板についてきている。なんて言ったら、怒られるのだろうが。
 俺はしゃがんでから、彼と視線を合わせた。
「俺の部屋に行って休んでいろ。あとでまた行く」
 彼は頷くと、リビングから去っていった。それを確認してから、ホルマジオが用意した料理が並べられているキッチンに向かう。他のメンバーも、ぞろぞろと集まってきた。椅子に座り、一息つく。その瞬間、俺の部屋のほうからすさまじい声が聞こえてきた。
「ふぎゃああああぁぁぁぁ!!」
 喉から搾り出したような、甲高い声。というよりも、悲鳴。
 何事かと、プロシュート達が声のする方へ駆け出す。しかし俺はその現場を目撃しなくても、なにが起こったのか察しがついた。
「そういえば、俺の部屋にメローネがいたのを忘れていたな・・・」
 とりあえずメローネはプロシュートかギアッチョ辺りがなんとかするだろう。そう思い、俺は目の前に並べられている料理に手を伸ばした。

 

「最悪、だ!」
 風呂上りで体から湯気を立ち上らせている俺の横で、ディアボロが叫ぶ。俺が自室のベッドの上に腰掛けているため、彼もならってベッドの上で伏せの姿勢をとっていた。
 あのあと、俺の食事中にメローネ以外の全員がすぐに戻ってきた。ディアボロは、ホルマジオの腕の中で震えていた。おそらく、生理的嫌悪と怒りで。
 メローネがどのような制裁を受けたかは興味がなかったので、特に聞かなかった。しかし彼がキッチンにやってこないところを見ると、また俺の部屋で気を失っているのだろうか。部屋から出すのがめんどくさいな。そう考えたが、それは杞憂に終わった。あのあとすぐに、メローネが自らの足でキッチンにやってきたのだから。全身がずぶ濡れだったところを見ると、ギアッチョに氷付けにされたらしい。それでもピンピンとしながら食事を取っていたのだから、本当にタフだ。
 あれからディアボロは、俺について歩くようになった。どうやら俺といる時が、一番安全なのだと学習したようだ。俺が風呂に入っている時は、イルーゾォやホルマジオと一緒にいた。彼らが次に安全ということらしい。
「なかなかに、猫の体というものは大変なようだな」
「大変なんて言葉で足りるものか!動くものを見ると勝手に体が反応するし、遊ばれるし・・・。それに、あの変態のせいで余計疲れる」
 いったいあの時、メローネになにをされたのかは、言いたくなさそうだったので聞いてない。ただ、あのディアボロがあそこまで声を上げるほどなので、よほどのことをされたのだろう。変態とは、怖いものだな。
「明日から、本格的にボスをその姿にしたスタンドの本体を探さなくてはいけないな」
「あぁ」
 手慰みに頭を撫でてやる。すると、気持ち良さそうにスッと目を細めた。無意識なのか、ごろごろと喉が鳴っている。黙っていれば、本当に可愛らしい猫だ。この場合、猫が可愛いのが世界の常識だからであって、別に彼が可愛いというわけではない。彼が可愛いというのならば、その人間は眼科へ行くのが賢明だろう。
 眠たそうにうとうととし始めたディアボロを見ながら、俺はふと好奇心にかられて指を彼の口の中に突っ込む。グッと苦しげに小さく呻いてから、相手はこちらを睨みつけてきた。それを無視しながら、口の中を指で探る。尖った歯と、長い舌があった。それは、猫特有のザラザラとしたブラシのようなものがついている。そういえば、彼も毛づくろいとかするのだろうか。プライドの高い彼だが、動くものを追いかけてしまう辺り、猫としての本能も持っている。もしかしたら、意外と気を抜いた瞬間に体を舐め始めるのかもしれない。
「舌、ちゃんとザラザラしているな」
 指を引き抜きながら呟くと、彼はこちらを見上げた。
「そうか?自分では気が付かなかったが」
 一度、座りなおしていわゆるお座りの姿勢になる。しばらくなにかを考えるように沈黙していたが、やがて笑うようにして目を細めた。立ち上がり、俺の脚の上に前足を乗せたかと思うと、先ほどの表情のままこちらを見上げる。ちらりと、赤い舌を覗かせた。それと一緒に、白い牙も覗く。
「朝は途中まですらも出来なかったからな。この舌で・・・舐めてやろうか?」
 どこを、なんて、聞かなくてもすぐに理解できる。風呂から上がってきたばかりなのに、と思いながら、もう一度その赤い舌を見た。そのザラザラとした表面を持つ舌で舐められれば、間違いなく今までにない快感を得ることだろう。しかし、ディアボロが人間だと頭では理解していても、今はその姿は猫だ。モラルだとか良心だとか、動物愛護精神だとかが、俺の心の中に生まれる。そして最終的に、獣姦と言う言葉。いくら暗殺者といえど、そこまで人の道を踏み外すこともないだろう。
「・・・遠慮しておく。誤って歯を立てられたら洒落にならん」
 事実、本当に洒落にならない。この歳でまだ不能になりたくはない。
 ディアボロがなにか言いたげに口を開こうとしたが、その前に俺は彼を両腕の中に抱きしめてしまう。そのまま、仰向けにベッドに沈みこんだ。猫の体温は高くて心地よい。
「相変わらず、お前は体温が低いな」
「ボスはいつもより、高いようだがな」
 ベッドに横になると、すぐにうとうととしてくる。昼間にあれだけ寝たというのに、十分に眠れそうだ。チームのメンバー全員が、俺は寝汚いという。別にいいではないか。いつまた、緊急に任務が入ってくるのかがわからない。寝れる時に、寝ておかなくてどうする。
 俺の腕の中で、ディアボロが大きく口を開けて欠伸をした。彼もまた、眠そうだ。相当、今日一日だけで疲れたのだろう。肉体的にも精神的にも。
「お休み、ボス。また明日」
「あぁ・・・」
 胸の上にディアボロを乗せてから、腕を伸ばして布団を手繰り寄せる。部屋の電気をつけたままだったが、また起き上がるのがめんどくさいのでそのままにしておいた。誰かが気が付いて、消しに来るだろう。そんなことをうつらうつらと考えているうちに、小さな寝息が胸元から聞こえてくる。それを聞きながら、俺もすぐに眠りについた。

 


END

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女性
自己紹介:
1月14日生まれの新潟県民。

ジョジョラーでケモナーでおっさん&おじいちゃんスキーでSHK国民。
最近はfkmt作品に手を出してます。
乙一作品と三原ミツカズ作品と藤田和日郎作品も好き。
節操なしの浮気性です。
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