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ボスとボスの母親の話。母親が軽く電波だったりボスがヤンデレだったりで大変精神的に悪い感じです。
母親と息子の愛ある(?)話。
ボスがボスじゃないですが、それでも許せる方はどうぞ。

 

 

 

 

 数年ぶりに見た息子は、刑務所から私をさらいそのまま口をふさいでコンクリートの下に埋めた。埋めたといっても、身動きが取れないぐらい、もしくは呼吸ができないほどではなく、どちらかというとコンクリートで上から蓋をした、という表現の方が正しいのかもしれない。少年の力でも、私の上を覆っているコンクリートは動いた。
 産まれてからすぐに他の人間に引き取られたため、私は息子の名前を知らない。しかしその少年の美しいピンク色の髪は見まごうことはなかったし、なにより直感的にわかった。彼が、自分の息子だということを。たぶん、血の繋がりのおかげだろう。
 コンクリートの下に私を埋めてからほとんど毎日、日に何度か息子は私に会いに来た。来るたびに彼は私の頬に小さく口付けをした。そのたびに彼を愛しいと思う自分は、果たして異常なのだろうか。誰かに確認したかったが、あいにく息子以外が私に会いに来ることはなかったたし、口をふさがれていたため彼自身に確認はできない。しかし、こう思うのは普通のことのように思えた。このコンクリートで囲まれた世界で、私はもはや息子以外になにも持っていなかった。自分の命ですら、彼の手の中にあるのだ。自分の唯一の持ち物に愛着が湧くのは、普通のことだ。そしてなにより、自分の血を分けた子供なのだから。
 本当は、息子の頬にも口付けをして挨拶を返してやりたいのだが、今の私は口をふさがれているし、もう何年も寝たきりの状態のため筋力が弱まり、体を起こすことすらできない。だから、私は精一杯の愛と慈しみを込めて息子を見た。目が合うと、まだ少年である彼は愛らしく笑った。
 いったいどうやって、彼は私の中に宿ったのだろうと考える。私が服役していた刑務所は女性しかいないし、そんな環境で私は投獄されてから2年後にこの子を産んだ。どう考えたって、計算が合わない。なにか、人の起こすことのできないような、特別な力が働いたのではないかと思う。たとえば、聖書中に出てくる聖母マリア。彼女はあのイエス・キリストを産んだ時、処女だったという。男と交わったことがないというのに、子供を産んだのだ。それは神様からイエス・キリストの命を授かったため。つまり、そういうことなんじゃないかと思う。私の産んだ子供は、神様から与えられた子供なのではないかと。そうじゃなければ、説明が付かない。息子はきっと、選ばれた人間なのだ。将来は必ず、なにかを成し遂げるに違いない。そう思うと、そんな子を産んだ自分を誇りに思ったし、よりいっそう息子を愛しく思った。
 私の元にくる時、息子は食事だったり、私が暇にならないようにと本を持ってくる。食事は私のわずかに開いた口の隙間からねじ込み、本は読み聞かせてくれた。日に日に成長していく姿や、可愛らしい少年の声から低く美しい声に変わっていくのがよくわかり、私は毎日彼が成長していく様を見ると幸せだった。
 そして時折、彼は食事や本の変わりに、私を殺すための道具を持ってきた。それはナイフだったり銃だったり、首を絞めるための縄だったり。あれこれ趣向を尽くした、人の命を奪うためのものだった。食事に毒を盛られたこともある。あの時は、本当に辛かった。体の震えと吐き気が止まらず、涙を流して苦しんだ。しかし、もうこれで死ぬのかと思ったところで、息子は私に解毒剤を飲ませた。その後で、何度も何度も泣きながらごめんなさいと呟いた。息子が声変わりをする前の出来事だった。
 彼が私を殺そうとしているのは、火を見るよりも明らかで、そのためだけに刑務所から私を連れ出したのだと考えるのも難しくはない。はじめはなぜ、息子が自分に対してそんなことをするのだろうと不思議に思ったが、それが必要なのだからするのであって、私は彼の好きなようにすればいいと考えた。息子のために死ねるのならば、母親としては最高のことだろう。
 ある日、息子はいつものようにやって来た。その頃には、息子はすでに声変わりを終えていて、見た目もずいぶんと大人びていた。それでもどこかまだ少年らしい面影をどこか残していたから、正確な年齢はわからないがおそらく10代半ばぐらいなのだろう。その手には茶色の麻縄が握られていた。
 彼はいつものように私の頬に口付けると、私の腹の上に馬乗りになった。見上げれば、酷く青ざめた顔をしている。どこか体の具合が悪いの?そう尋ねたかったが、やはり口がふさがれているのでそれはできなかった。だから精一杯、相手を心配しているような、気遣うような視線を向けた。それに気が付いた彼は、小さく笑おうとした。しかし顔が引きつってうまくいかないのか、酷く歪な笑みだ。やはり、どこか悪いのではないのだろうか。そう思っていると、息子は手に持っていた麻縄を私の首に回し、紐の両端を手に持つと、力一杯、私の首を絞め上げた。首の骨が折れてしまうのではないかと思うぐらいの力だった。
 いっそのこと、折れてしまえばいいのにと思う。そうすれば、私はすぐにでも死ねるだろう。息子はもう、私を殺さなければいけないという心労はなくなる。少しでも彼の人生に心配事や恐怖がなくなればいいと、私は日頃から願っていた。息子は選ばれた人間なのだから、自分の好きなことをして、そして何事も不自由なく生きていればいい。
 酸素が足りずに、目の前がちかちかと点滅していた。このままでいい。きっと、死はもうすぐそこまで来ている。あとは、彼がこのまま力を緩めないでくれていればいい。しかし結局のところ、またしても私が死ぬようなことはなかった。
 息子は急に首を絞める力を緩めると、両手で顔を覆う。嗚咽を漏らしながら、不規則に肩を揺らした。泣いているのだと気が付く。私のせいで、彼は泣いていた。あの時と同じだ。毒を盛られたときと、一緒。
「なぜ、殺せない」
 手にさえぎられて、くぐもった声で呻くように言う。
「たった一人の女を、何年も殺せないでいるなんて」
 息子の涙が彼の腕をつたい、そして私の頬に落ちた。
「母さん・・・」
 顔を覆っている手をどかすと、喘ぐような声で彼が言う。止め処なく涙が流れ落ちていた。
 どうしたらいいのかわからない、そんな顔をしている。悲しくなった。私のせいで、愛する息子が苦しんでいる。ためらうな、と言ってあげたかった。私はあなたのためなら死ぬのは怖くはないから、だからためらってはいけないと。それができないのなら、もう私の元には来てはいけない。完全に、忘れてしまえばいい。そうすれば、私はあなたを想いながら安らかに死ねることだろう。
 その言葉が伝えられずに、歯がゆかった。それどころか、今の私は息子を抱きしめることすらできない。抱きしめて、なにも不安に思うことはないのだと示してあげることができない。
 筋力が衰え、そして酸素が回らなくなって痺れている腕を必死に動かした。少し動かすことすら重労働だった。ゆっくりと時間をかけて、息子に手を伸ばす。腹の上に跨ったままでいる彼の涙を、指先で拭ってやった。少しでも、私の想いが伝わればいいと願いながら。
 私の行動に彼は驚いたような顔をする。そして涙を拭っている私の手に自分の手を重ねると、もうなにも言わずにただただ泣き続けた。
 その日から、息子は私を殺そうとはしなくなった。かといって、もう私の元にやってこなくなったわけではない。ただいつものように食事や本を持ってきて、私の頬に口付けた。どういうつもりなのか、私にはわからない。殺すのを諦めたのかもしれないし、機会をうかがっているのかもしれない。でも、もう私の前で泣くことはなくなったため、これでいいのだろうと思った。
 私には時間の感覚がなくなっていたため、今自分が何歳なんだとか、息子の正確な年齢だとかはわからない。それでも、彼の成長を見ながら、なんとなく漠然とはわかっていた。息子はもう少年と呼べる歳ではないだろう。誰が見ても立派な、美しく成長した青年だった。
 ある日、誰かが私の上を覆っているコンクリートを破壊している音が聞こえた。息子ではない。息子なら、コンクリートは破壊せずに蓋を取るようにして持ち上げる。ならば、今この場にいるのは誰だろうか。ここ数年間で、息子以外の人の気配を感じたのは初めてだった。
 やがてコンクリートが破壊され、私の肌を蛍光灯が照らす。見れば、そこにいたのは知らない男だった。私を見て、驚いたような顔をしている。かと思えば、その顔色は恐怖に変わった。失礼なものだと思う。人の顔を見て、そんなに怯えるなんて。文句を言ってやろうと思ったが言えないまま、結局男は逃げるようにしてこの場を去っていった。
 男が去ってから約一時間ほど後に、息子が私の元にやって来た。その姿を見てぎょっとする。両手が赤く染まっていた。体のいたるところにも、赤い斑点が飛び散っている。それが血だということに、すぐに気が付いた。長い時間、酸素に触れていたのか、その血はどこか黒ずんでいる。
 怪我でもしたのかと、心配そうな目で息子を見た。彼の顔色は悪い。私を殺そうとした時と、同じ顔色だ。
「育ての親は、こんなにも簡単に殺せるのにな」
 私の視線を感じたのか、彼はなんでもないというように首を左右に振ってから、小さく呟いた。それからこちらに近づいて、いつものように私を抱き上げるようにして上半身を起こさせると、頬に口付けをする。
「私の本性が、この村のみなに知れ渡ってしまった。もう、ここにはいられない」
 本性、とは、私をここに隠している、ということだろうか。それのなにが悪いのだと、私は疑問に思った。しかし、息子にとって重大なことなのだろう。また私のせいで彼に迷惑がかかったと思い、落ち込んだ。
「私のこれから先、やろうとしていることは、とても大きなことだ。その際に、私の過去を知っている者や、私自身を知っている者がいると、困る」
 私を抱き上げたまま、息子は私の口をふさいでいるそれを取り始めた。今までそんなそぶりなど一切見せなかったため、驚いた。
「あなたに生きていられるのも、困るんだ。私は今日、この村を出る。でも、あなたは・・・」
 その先は言わなかった。でも、なにが言いたいのかわかった。
 これでいいのだと思う。ずっと、息子が私に対してしようとしていたことなのだ。今までずっと、保留になっていただけ。だから私は後悔も恐怖もない。あるのはただ、息子に対する愛情だけだ。
「あなたの好きなように生きなさい・・・それが、私の唯一の願いだから」
 数年ぶりに声帯を震わせた。その声は、本当に自分の声なのか疑いたくなるほど、酷くひび割れたものだった。
 どうか、と神様に祈る。どうか、この子の生きる道が、祝福されていますようにと。この選ばれた子供が、幸福に暮らせますようにと。心の中で、何度も何度も神様に願った。
 腕を動かして、息子を抱きしめる。そして、はじめてその頬に口付けをした。これだけできれば、もう思い残すことはない。彼は私の行動が以外だったのか、驚いたような顔をした後、照れたように小さく笑った。人を一瞬にして魅了させるような、艶やかな笑みだった。
 息子は私をまた地面に寝かせると、あらかじめ用意しておいたのか、なにかの液体を私にふりかける。臭いで、それがガソリンだとわかった。それを部屋中に撒いている。なにもかも、燃やしてしまうつもりでいるのだということがわかった。私だけではない。息子のことを知っている、この村ごとを。
「お願い、最後に・・・名前を教えて」
 自分が息子の名前を知らなかったことを今更ながらに思い出して、慌てて尋ねる。彼はしばらく言うか言うまいか迷ったように沈黙したあと、口を開いた。
「ディアボロ、だ。母さん」
 その名を聞いて、私は祈る相手を間違っていたということに気が付いた。息子は神様の子ではなく、悪魔の子だったようだ。ならば、と私は祈る相手を悪魔に変え、聖書にあるように息子が鎖に繋がれ、自由を奪われて地に落とされないことを願った。
 ディアボロ、私の愛しい息子。たとえあなたの人生に立ちはだかるのが神のような強大な力を持つ者であっても、それらを滅ぼしつくして生きていって。私は死んでもなお、地獄の悪魔にそれを祈り続けるから。

 

END

 

 

正直、ジョルノの生命を生み出す能力って、神の力ですよね。

以前拍手で、ボスも母親に対して歪んではいるけど愛情を抱いていたのではないか、とかそんな感じのコメントをいただいて、私もそう考えていたので、じゃあもうこれは書くしかないな、と思って・・・。
結局ボスは、自分に一番近い所にいた女性(母親、恋人、娘)を殺せてないんですよね。

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シノハ
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女性
自己紹介:
1月14日生まれの新潟県民。

ジョジョラーでケモナーでおっさん&おじいちゃんスキーでSHK国民。
最近はfkmt作品に手を出してます。
乙一作品と三原ミツカズ作品と藤田和日郎作品も好き。
節操なしの浮気性です。
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