忍者ブログ
おっさんと人外を中心によろずっぽく。凄くフリーダム。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


まったく甘くないバレンタイン話です。
なんでジョジョを書かなかったんだろうと自分でも不思議に思いつつ久しぶりに神森。
神森は数ヶ月に一度書きたくなるから不思議です。

 


 目の前に黒っぽい色をした薄い長方形のものを突き出され、僕は一瞬また手帳か、と思った。しかしよく見るとそれはスーパーやコンビニなど、どこにでも売られているようなチョコだった。パッケージにはカカオ98%と書かれている。味や食感において悪名名高いチョコだ。僕自身は食べたことがないが、以前それを口にしていた母と妹を見て、一生食べないと誓ったものでもある。
 いったい何事かと、僕はそれを突き出している森野の方を見る。今日の彼女は、なぜか朝から機嫌が悪かった。放課後となった今でも、ずいぶんと機嫌が悪そうだ。
「あげるわ」
 僕の視線に気が付いた彼女は、ぶっきらぼうに言ってから無理やり僕の手を取ってそれを握らせた。どういう風の吹き回しだろうか。彼女が僕になにかをくれるなんて。カカオ98%のチョコを買ったはいいが、結局美味しくはなかったので僕にくれたということだろうか。しかし箱は封をしたままで、開けられた痕跡はない。
 そこまで考えて、僕は今日がなんの日だか気がつく。あまりにも自分に縁のない日だったので、忘れていた。今日はいわゆるバレンタインデーというやつだ。お菓子業界が肥えるためにある日。しかしそれにしても、いや、それだからこそ、やっぱり意味がわからない。彼女はそんななにかのイベントごとに便乗するようなタイプではないのだ。
「まさかきみが世間の流れに乗るとは思わなかった」
 純粋に感心をしたふうに言うと、彼女は心外だ、とでも言うふうに眉をわずかにひそめる。
「勘違いしないで。今朝、家を出る前に母に言われたのよ。ちゃんとあの男の子にチョコあげるのよ、って。そんなんじゃないって言ってるのに、なにか勘違いしてるみたいで困るわ」
「僕もカカオ98%とか困るから」
 一度だけ会ったことのある森野の母親を思い出す。彼女とは違い、ハツラツとした印象のある女の人だった。そしてなぜか、僕が森野の彼氏だと勘違いしている。
 しかしこれでやっと朝から森野の機嫌が悪い理由がわかった。おそらく朝にしつこく僕にチョコを渡すように言われたのだろう。明るい母親と、陰のある森野が言い合っている姿が目に浮かぶ。なんとも異様な光景だ。
 無理やり持たされたチョコを見れば、箱にコンビニのシールが貼ってあるままだった。この学校の前にあるコンビニでこれを一つだけ買ってから学校に来たのだろう。バレンタインフェアでどこか浮き足立っている店内で、いったいどんな顔をしてこんな凶悪なチョコを買ってきたのだろうか。パッケージをよく見れば、甘いものと一緒に食べてください、と書いてある。どうやって食べろと…?
「無理してくれなくてもよかったのに」
「無理なんかしてないわ。ただの八つ当たりよ」
「返品は?」
「不可」
 即答されてしまう。どう考えたって、一番の被害者は僕だ。森野に貰ってしまった以上、捨ててしまうわけにもいかない。そう思ってしまっている僕に、彼女は気が付いているのだろうか。まぁ、彼女に限ってそんなわけはないのだけれど。
「あなたにそれを渡したら、少しは気分がすっきりしたわ」
「・・・役に立てて光栄だよ、八つ当たりのね」
「学校を出たらコンビニに寄って甘いチョコを買っていきましょう。あなたにはもうあげないけど」
「はいはい・・・」
 このあと、なぜか彼女の買い物に付き合わされた僕は、時間を持て余して普通のチョコを買った。今日という日に男である僕が、しかも女性と一緒に店内に入ってきた僕が、一人でチョコを買っているのを見て、店員は不思議そうな顔をしていた。


 どこか疲れたような気分で家に帰ると、すでに帰宅していた妹がリビングで犬と遊んでいた。
「お帰り、兄さん。森野さんからチョコはもらえた?」
 なぜか森野が僕の彼女だと思っている妹は、どこかわくわくした様子で尋ねてくる。ちなみに彼女は、昨日から大量にチョコを手作りしていた。男ではなく、友達に渡すそうだ。
「もらえたよ。カカオ98%のやつをね」
 僕が言うと、妹は昔食べたそれの味を思い出したのか、苦虫を噛み潰したような顔をする。しかしすぐに気を取り直したように笑みを浮かべた。
「流石森野さんね。兄さんが甘いもの苦手なのを知ってるんだわ」
「世の中には限度というものがある。これはどう考えても悪意のある選択だろう」
「そんなこと言っちゃって、ホントは嬉しいんでしょ」
「まさか」
 自分で買ったチョコを彼女に投げる。確かに僕は甘いものが苦手だ。だからチョコなんて普段は食べない。
「僕が買ったチョコだ。あげるよ」
「まさかバレンタインデーに兄からチョコをもらえるとは思ってなかったわ」
 空中で箱をキャッチする。妹の手の中にあるそれを、犬が興味深そうに鼻を近づけて匂いをかいでいた。あなたは食べられないのよ、と妹が犬の鼻先を押し戻す。
「兄さん」
 なに、と妹の顔を見ると、彼女はにやりとどこか意地の悪そうな顔で笑った。
「どうせ普通に甘いチョコでも、森野さんからもらったものなら食べたんでしょう?」
「・・・・・・」
 妹の言葉に返事を返さない。二階にある自室に行くために、僕は彼女に背を向けた。
「ホワイトデーの時は、ちゃんとお礼しなきゃね」
 八つ当たりで渡してきたものにお礼とはどういうことだ。僕はそう思ったが、やはりなにも言わずにリビングをあとにする。
 結局、森野からもらったカカオ98%のチョコは、何日かかけてコーヒーに溶かしながら完食した。

 

END

 


なんか知らないけど勝手に神山君は若干シスコンが入ってると思ってます。

よく考えたら神山君と森野さんって両家族公認の仲なんですよね。森野さんのお母さんと桜は二人が付き合ってると思ってるみたいだし、森野さんのおじいちゃんにいたっては神山君が森野さんの婚約者かなんかだと思ってる。
あとは本人達次第ですね。

PR

Comment
Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
[56] [55] [54] [53] [52] [51] [50] [49] [48] [47] [46
«  Back :   HOME   : Next  »
カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

メール(☆を@に)
リンク
当サイトは同人サイト様のみ、リンクフリーとなってます。
管理人>>シノハ。 または篠葉 零
サイト名>>なんでもない


BKM
Na-2
風人インク
ROAM青
Nonsense
SAVA味噌
Red field
Caucasia
△デルタ▽
Beneath the Surface
Curtain-fall
Ng
無断とか本当にすみません…

その他
なんでもない
管理人の創作サイトです。
おっさん・人外・幼女中心で携帯観覧推薦。
現在こちらをメインに更新中。
プロフィール
HN:
シノハ
性別:
女性
自己紹介:
1月14日生まれの新潟県民。

ジョジョラーでケモナーでおっさん&おじいちゃんスキーでSHK国民。
最近はfkmt作品に手を出してます。
乙一作品と三原ミツカズ作品と藤田和日郎作品も好き。
節操なしの浮気性です。
忍者ブログ [PR]