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そんなわけでゲフェパシ前提のレイ+ゲフェです。
いろいろ突っ込んでたら負けかなぁ、と思います。ネタをネタとして楽しめる方のみお読みください。

 

 

 

 戦が今日になってようやく終わりを迎えた。今回は比較的小さな戦だったので、あまり疲労は感じない。しかし時間が時間だったため、フランドルに戻るのは翌日の朝ということになった。
 宿営地で仲間の軍人達が酒を片手に勝利を喜びあっている。俺も程よく酔いが回って、良い気分になっていた。しかし不意に宿営地から逃げるようにして遠ざかっていく黒い影を見つけて、頭が冴えてくる。こんな時間に出歩くとは、なんの用だろうか。それとも、捕虜が逃げ出したのか。俺は確かめるために、一人で黒い影を追った。
「おい、なにをしている」
 軍で使用している馬の手綱に手を掛けていたその人物に声をかけた。相手は一瞬動きを止める。闇に紛れるようにして真黒なローブを着ていた。おまけに目深にフードをかぶっているものだから顔がわからない。やはり捕虜が逃げ出そうとしていたのだろうか。しかしそれにしては、俺に声をかけられても相手は動揺など微塵もしていなかった。
「レイヨンか・・・。いいのか?大好きなアルヴァレス将軍の傍にいなくて」
 皮肉を孕んだ声には、聞き覚えがあった。男はフードを脱ぐ。月明かりの下にその顔が明らかになった。そこにいたのは、やはりゲーフェンバウアーだった。
 いつもどこか人を遠ざけるような、ギスギスとした雰囲気を発している男。プロイツェンの捕虜ということも手伝って、あまり彼に関わろうとする人間はいなかった。関わろうとしても、無視をされるか手酷く拒絶される。なので軍の中では彼を良く思ってない奴が多かった。
 たぶんゲーフェンバウアーは極度の人見知りなんだろうな、と思う。接してみれば、少し冷たいところはあるが案外普通の男だった。アルヴァレス将軍を嫌っている、ということを除けば。
「そういうお前こそ、馬になんか乗ってどこに行こうとしてたんだよ。明日にはフランドルに戻るんだぞ」
「そう騒ぐな。夜明けになるころには戻ってくる。誰も逃げようなんてしないさ」
 自嘲するように唇を歪める。そんなふうに言われると、彼の出身国のことを思わずにはいられない。
 プロイツェン。アルヴァレス将軍が率いる軍隊が殲滅させた国。俺はその頃、将軍の軍隊にはいなかったが、かなり徹底的に国を滅ぼしたと聞く。その時の捕虜が、このゲーフェンバウアー。おそらく彼が将軍を嫌っているのも、そのことがあったせいだろう。ならばなぜ、他の国に亡命もせずにわざわざこのフランドルにいるのだろうか。彼の考えは俺にはわからない。
「この国の近くに知り合いでもいるのか?」
「まぁ、な」
 いくらそれほど疲労の残らない戦だったとはいえ、そんな今すぐにでも会いたいという相手は誰だろうか。というよりも、ゲーフェンバウアーにそんな相手がいるということ自体が驚きだった。
「なんだ、女か?」
 純粋な好奇心と、そしてからかいを含めて尋ねてみる。すると、ゲーフェンバウアーはわずかに表情を和らげて笑った。いつものような誰かを小馬鹿にするような笑い方ではなく、相手を心底から想っている笑みだった。彼の無表情と、不機嫌そうな表情と、相手を小馬鹿にするような表情以外を見るのは初めてだったので、俺は驚いてしまう。
「少し違うが・・・そんなところだ」
 そう言う頃には、いつものなにを考えているのかわからない無表情に戻っていた。あまりのギャップに、まさか俺は夢でも見ていたのではないかと思ってしまう。
 ゲーフェンバウアーが会いに行くという人物は、いったいどんな人なのだろうか。彼にあんな表情をさせるほど親しい人間。野暮なのは承知で、聞きたくなってしまう。
「その人、どんな奴なんだ?」
 俺の問いに、彼はわずかな間口を閉ざした。言うかどうか迷っているのだろう。ややあって、再び口を開く。
「そんな貴様の思っているような奴ではない。ただのセックスフレンドだ」
「セッ・・・?!」
 顔が引きつったのが自分でもわかる。そんな俺を見て、ゲーフェンバウアーはおかしげに唇を歪めて笑った。
 まさか彼にそんな相手がいるとは思っていなかった。しかし、本当にただのセックスフレンドだろうかと思う。ただ体だけの関係の相手が、ゲーフェンバウアーにあんな表情をさせられるとは思えない。口ではああ言っておきながらも、おそらく彼にとっては大切な人間なのだろう。
「ゲーフェンバウアーの方からわざわざ行くんだから、よっぽどいい女なんだろうな」
「女?」
 俺の言葉に、ゲーフェンバウアーは怪訝そうにそう呟いた後、なにがおかしいのか喉を鳴らして笑い始める。本当におかしそうに笑うので、俺はなにか間違ったことを言ってしまっただろうかと思った。
 ひとしきり笑っていた彼は、やがて真実を口にする。
「俺が会いに行くのは女なんかじゃない。パーシファルという名のブリタニア軍人・・・男だ」
 彼の告白に、再び俺は驚く。それは先ほどの比などではない。いったいどこから突っ込めばいいのだ。男で、しかもセックスフレンドって、つまりゲーフェンバウアーはそういう人間なのか。いや、それはまだいい。そんなの人の自由だ。問題は、相手の男がブリタニアの軍人だということだ。
 ゲーフェンバウアーもわかっていないわけではないだろう。フランドルとブリタニアが、今どのような状況なのかを。文字通り一触即発、いつ戦が始まってもおかしくはない状況だ。そんな国の軍人に会いに行くなど、正気の沙汰ではない。まさか、フランドルの情報を漏らしているのではないだろうか。もともとゲーフェンバウアーはフランドルの人間ではないどころか、フランドルに恨みを持っていてもおかしくはない立場にいる。考えられない話ではない。
 俺は思わず、ゲーフェンバウアーの胸元に掴みかかった。
「貴様っ・・・まさかブリタニアのスパイなんじゃないだろうな!」
 俺の瞳をゲーフェンバウアーが冷めた瞳で覗いてくる。いや、よく見れば冷めてなんかいない。その瞳の億には、たぎるほどの苛つきや怒り、そして憎しみがあった。それがどろどろに混ぜ合わされて、こんな冷めたように見えるのだ。
 どうやったらそんな目ができるのだと、ぞっとしてしまう。
「貴様の思う通りに解釈をするといい。だが一つ言わせてもらえば、勝手に戦争を始めたのはこのフランドルだ。俺達は戦争が始まる前から、互いの国を行き来していた。今まで通りのことをしていてなにが悪い?このくだらない戦争のために会えなくなるなど、馬鹿馬鹿しいではないか・・・!」
 胸元を掴んでいる俺の手を振り払いながら、噛みつくようにして言う。その瞳は獰猛な獣のようだ。彼がこんなにも感情をむき出しにして声を荒げたのは、俺の知る限りでは初めてだった。
 戦争がくだらないなんて、軍人にあるまじき言葉だ。というよりも、言ってはいけない。どんなに戦争がくだらなく、そして虚しいものとはわかっていても、俺達軍人は上からの命令は絶対だ。俺達は国を、そして人間を侵略し、時には滅ぼして金をもらっている。それをくだらないというのは、滅ぼしてきた国や人間を否定してるようなものだ。
 でもきっと、ゲーフェンバウアーは本当にそれらのものをくだらないと思っているのだろう。彼が会いに行くという男の前では、なにもかもが霞むのだろう。祖国を滅ぼされた彼には、もうその男しか残っていないのだから。
「どうする?」
 一言尋ねられ、俺は思考をゲーフェンバウアーに戻す。簡潔すぎて、質問の意味がわからなかった。そんな俺に、彼はもう一度、どうする、と尋ねる。
「俺がブリタニアの軍人に会いに行っているというのを、報告するか?アルベルジュに」
 最後の一言は低く低く、しかしはっきりとした声で言う。そこにあらん限りの憎悪が込められているのに気が付いて、俺は背に冷たいものが走ったのを感じた。
「俺は・・・」
 彼の目を見ていられなくて、俺は顔を背ける。そしてどうするべきか考えた。普通に考えれば、報告すべきだ。まさかゲーフェンバウアーがブリタニアのスパイとは思わないが、それでも少しでも不安の種は解消しておくべきだ。
 だが、できない、と思った。俺にはそんなことできない。戦友や家族、そして祖国を失ったゲーフェンバウアーの大切なものを、これ以上奪うことはできなかった。
「俺は、言わない。黙ってる・・・」
 その言葉が予想外だったのか、ゲーフェンバウアーはわずかに驚いたような顔をした。だがすぐに、あの人を小馬鹿にするような笑みを浮かべる。
「甘いな、レイヨン。軍人として、あまりにも甘い。人のことを庇っているようじゃ、そのうち足元を掬われるぞ」
 言いながら、彼は馬に跨った。俺を見下ろしながら、言葉を続ける。
「せいぜい、地獄を見ないよう用心するんだな」
 せっかく彼のためを思って黙っていると言ったのに、ゲーフェンバウアーのあまりの言いように思わずムッとしてしまった。
「そういうお前はどうなんだよ」
 戦争はどんどん過激になってきている。そのうち必ず、フランドルとブリタニアの間で戦が始まるだろう。そうすれば、いつまでもこうやってこっそりと国境を越えることなんてできなくなるだろうし、その前に軍人同士が密会をしているというのがどちらかの国にばれたら大事だ。重い罰が待っている。最悪、死刑だろう。
「俺か?」
 目に見えて、ゲーフェンバウアーの顔色が真青になってゆく。無意識なのか、体が小刻みに震えていた。それを抑えるように、彼は自分の肩を抱く。
「地獄ならもう、貴様の敬愛するアルベルジュに見せられた」
 あの時以上の地獄など、存在しない。
 震える声で、ゲーフェンバウアーが言った。その震えは恐怖からなのか、それとも怒りからなのか、俺には判断することができなかった。
 俺が言葉を失っていると、彼は馬の腹を蹴った。疾風のように馬は駆け出し、闇に紛れて姿は見えなくなる。俺はいつまでも、その場に唖然と立ち尽くした。
 その後、アルヴァレス将軍はブリタニアに亡命し、そしてゲーフェンバウアーに殺された。思えば、彼はそのためだけにフランドルに残っていたのではないかと思う。ずっとアルヴァレス将軍を殺す機会をうかがっていたのだ。
 そしてそのゲーフェンバウアーも、パーシファルに殺された。ゲーフェンバウアーはなにを思って、愛する男に殺されたのだろう。そしてパーシファルはなにを思って、愛する男を殺したのだろう。当然、そんなことは知る由もない。
 ただ思うのは、アルヴァレス将軍もゲーフェンバウアーもパーシファルも、他に道がなかったのだろうか。ゲーフェンバウアーの言った通り、俺は確かに一度地獄を見た。だが今はこうやって、愛しい星を残った腕に抱いている。人を斬ったことのない腕で。
 彼らもまた、どこかに愛しい者をその腕に抱きしめられる道があったのではないだろうか。それなのに、どうしてこんなに悲惨な結果になってしまったのだろう。道を選べないほど、ゲーフェンバウアーのアルヴァレス将軍に対する憎しみが強かったのだろうか。今となっては、想像することしかできない。
 せめて、と思う。せめて長きに渡る戦争を生き残った者達に幸多からんことを、と。これ以上、彼らのような人間が増えないで欲しい。俺は空に一際輝く星を見上げながら、強くそう願った。


END
 

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シノハ
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女性
自己紹介:
1月14日生まれの新潟県民。

ジョジョラーでケモナーでおっさん&おじいちゃんスキーでSHK国民。
最近はfkmt作品に手を出してます。
乙一作品と三原ミツカズ作品と藤田和日郎作品も好き。
節操なしの浮気性です。
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