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ぎんぎつねの連載を望みつつまこ銀を。
銀可愛いよ、銀。
 

 

 


 無駄に長い、石で作られた階段を登りきると、そこには中型犬ほどの大きさの見慣れない生き物がお社の前で前脚と後ろ脚をだらんと横にだして寝そべっていた。ぐっすりと眠っているのか、遠目から見てる分にはこちらに気が付きそうもない。
 見たところ首輪もしていないようだし、野良犬だろうかと思いながら近づく。それでもなお起きない犬の前にしゃがみこみ、顔を覗き込んだ。左目の上の辺りに見慣れた傷跡を見つけ、私はようやくこの生き物が犬ではないと知る。いつも獣と人を掛け合わせたような姿をしているから気が付かなかった。この狐は銀太郎だ。きっとひがな一日やることもないため陽なたぼっこをしていたら寝入ってしまったのだろう。
「こんなお社の真ん前に寝て、誰かに踏まれたらどうするんだろうね」
 まぁ平日にはほとんど人の来ることのないような神社だから大丈夫なんだろうけど。そもそも神の使いである彼が踏まれる、なんてことがあるのだろうか。それは肉体がある、ということになる。
 私は手を伸ばして銀太郎の腹を撫でた。
「もこもこだー」
 思わず顔に笑みが浮かんでしまう。
 手の平からは確かに柔らかい毛皮の感触と、彼の少し高めな体温を感じた。ということはやはり銀太郎には肉体があるのだろうか。しかしこれはただたんに私が手触りだとか体温だとかを感じている、と思い込んでいるだけという可能性もある。なぜなら銀太郎の姿が見えない父は、私が銀太郎の体に父の手を触れさせてやってもなにも感じない。確かにそこには銀太郎がいるのに、父はそれが認識できないのだ。だとすれば、私が銀太郎に触れたりだとか体温を感じたりだとかいうのは、目で見た情報が直接脳に影響をもたらしている可能性が高い。
 なんて、そんなことを考えたところで結局はどうでもいいのだが。私にとって大事なのは、確かに銀太郎がこの世に存在しているということだ。
「銀、起きてー、ぎーん」
 腹を撫でたまま呼び掛ける。するとぴくぴくと大きな耳がわずかに動いた。しばらくそれを観察していると、やがてゆっくりと目蓋が開かれる。意思の強そうな瞳に私の姿が写りこんだ。
「おはよう、銀。よく眠れた?」
「まこと、お前学校は終わったのかよ」
「とっくにね。だから帰ってきたんじゃない。それよりも、動物としてこんなに誰かが近づいても起きない、っていうのはどうかと思うよ」
「なっ!神使である俺を動物扱いすんなよ!」
 体を起こしながらこちらを睨み付けてくる。しかしいつもの姿ではなく狐の姿で怒鳴られてもまったく恐くはない。むしろ可愛いと思う。といっても、普段の姿も十分に可愛いが。しかしそれを言うと銀太郎は(単なる照れ隠しなんだろうけど)怒ってしまうので、口には出さない。
「だって今は動物の姿してるじゃない」
 わしわしと頭を撫で回してやる。しかしそれも長くは続かなかった。急に銀太郎がいつもの獣と人を掛け合わせたような姿に戻ってしまい、私はしゃがんだ姿勢のまま彼を見上げる。
「もうちょっと撫でていたかったのに」
「お前、俺のことペットかなにかと勘違いしてるだろ」
「いえいえ、まさか神使サマに対してそんなことないですよ」
「白々しい」
 立ち上がりながら言う私に銀太郎は鼻を鳴らしながら言った。実際のところ、別にペットとまでは思っていないし、彼が神掛かり的な力を持っていて敬うべき存在だ、というのはわかっている。だがどうしても先程みたいに無防備に眠っていたりだとか、ミカンを人間のように美味しそうにほうばっているところだとかを見ると、なんとなく私達に近いような存在に思えてしまう。そしてなにより彼を見ていると和んでしまうのだ。銀太郎に威厳というものが足りないんじゃないかと思ったが、やはり言うと怒られてしまいそうなので私は代わりに質問をする。
「いつも天気がいいとお昼寝してるの?というか、私が学校に行ってる間ってなにしてるの?」
 私の言葉に、銀太郎は少し考えるように腕を組んだ。
「大抵は一人で寝てるかだな。たまにお前の親父が付けてるテレビ見てたり」
 神の使いがお昼寝。そしてテレビ。いったいどこの主婦だ。
「俺はこの神社の敷地から出ねぇし、お前以外に姿は見えねぇから暇でしょうがない」
 一度言葉を区切り、銀太郎は私の目を見た。そしてすぐに顔をそらしてしまう。毛皮があるからそんなことなんてわかるはずもないのだが、なんとなく私には銀太郎の顔が赤くなっているように見えた。
「だから、まことが学校から帰ってくるの結構楽しみにしてるんだぜ?」
 ……母さん、この日ほどあなたの血を引いているのに感謝したことはありません。銀太郎の姿が見える子に産んでくれてありがとう。
 私はもう何年も前に死んでしまった母に感謝しながら、銀太郎に抱きついてその豊満な胸の毛に顔をうずめた。
「なんでそんなに可愛いことを言うかな、もう!」
「可愛いって言うな!つーか抱きつくな!」
 銀太郎が私の体を引き離そうとしてくるので、私はますます強く彼に抱きついた。呼吸ができなくなるんじゃないかというくらい深く胸の毛に顔をうずめる。
 互いの服でへだてていても強く銀太郎の体温を感じた。照れているせいかそれはいつもよりも高く感じる。確かに今、銀太郎は私の腕の中にいるのだと実感した。それを幸福に思う。私はもう、何年も一緒にこの温もりと過ごしてきた。おかしな話だが、私は母に抱かれるよりもはるかに多く銀太郎に抱かれている。まだ幼い頃、母がいない寂しさで泣いていた私を抱きしめて安心させてくれたのは彼だ。私はいつも最後は泣き疲れて、銀太郎に抱かれたまま眠っていた。そんなことを思い出して、私はとたんに懐かしくなる。
「まこと、いい加減に・・・」
「銀太郎!」
 彼の言葉をさえぎって、私は抱きついたままうずめていた顔を上げた。いきなり私が大きな声を上げたため、彼は驚いたような顔をする。
「な、なんだよ」
「一緒にお昼寝しようよ、久しぶりにさ」
「はぁ?」
 私の言葉を予想していなかったのか、銀太郎は間抜けな声を上げた。
「駄目かな」
「駄目っつーか、さっきまで寝てたから眠くねぇし」
「じゃあ私だけ寝るから、その間そばにいてよ」
「なんで俺が・・・」
「ねぇ、お願い」
 なにか言おうとまた彼が口を開きかけたが、私と目が合ってそのまましばらく固まる。私のおねだり攻撃をくらうといい。そう思いながら、私はじっと銀太郎を見つめた。
 やがて銀太郎は私から顔をそらして口を開く。
「き、今日だけだからな」
「うん、ありがとう、銀」
 私はまた可愛いと言ってしまいそうになるのをこらえながら、笑顔で言った。
 抱きついていたのを解放してから、私は銀太郎の人間とは若干違う構造をした手を握る。やはりその手は暖かい。その温もりを感じながら、私は彼の手を引いた。
「家に行こう。お昼寝が終わったらミカンを食べようね」
「あぁ」
 ミカンに反応したのか、彼の大きな尻尾が左右にゆれる。そしてそれと同時に私の手を握り返してくるのが伝わった。

 

END




作者の落合さんってほかに漫画を描いてないんでしょうか。
なんかどこかで見たことのある絵柄なんですが・・・気のせいかね。

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1月14日生まれの新潟県民。

ジョジョラーでケモナーでおっさん&おじいちゃんスキーでSHK国民。
最近はfkmt作品に手を出してます。
乙一作品と三原ミツカズ作品と藤田和日郎作品も好き。
節操なしの浮気性です。
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