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父の日なトリディアとシュガ+リンです。早吉良は間に合いませんでした。期待していた方がいらっしゃったら本当にすみません・・・。
相変わらずシュガ+リンはパラレル設定です。パラレル設定については以前の記事を参考に。
トリッシュとディアボロの場合。
真新しいエプロンを身につけて、料理のレシピ本とにらめっこをしながら忙しそうに動き回っているトリッシュを見て、ディアボロは先ほどから気が気ではなかった。いつもなら上げ膳据え膳が当たり前の彼女が、今日に限ってキッチンを占領している。なんでも今夜は自分が夕食を作るというのだ。正直、二重の意味で大丈夫だろうか、と思わずにはいられない。ディアボロはトリッシュが料理をしている姿なんて見たことがなかった。ちなみに上げ膳据え膳なのはただたんにディアボロが甘やかしているだけで、トリッシュがどうこうというわけではない。
「本当に手伝わなくて大丈夫なのか?」
もう何度目になるかわからない質問をされたトリッシュの細い肩がヒクリと揺れた。かと思えば、振り向きざまにスパイス・ガールで手に持っていた包丁をこちらを心配そうに見ている父親に投げつけた。いきなりのことに驚いたディアボロは、反射的にキング・クリムゾンで時を飛ばしてしまう。だが結果的にそれがよかった。気が付いたら彼の背後の壁に刃を半分くらいまで埋めた包丁が突き刺さっていたのだから。もし時を飛ばしていなかったら、壁の変わりにディアボロの額に包丁が埋まっていたことだろう。そう思い、ディアボロは冷や汗を流しながら自分の反射神経に感謝した。伊達に何度も死んでいない。危ない直面にあうのは嫌というほど慣れている。
「何度も何度も同じ事を言わせないでちょうだい!あんたはただ座って料理ができるのを待ってればいいのよ」
そう気の長い方ではないトリッシュは、軽く目じりをつり上げながらディアボロを睨む。先ほどは運良く難を逃れたとはいえ、二度目は確実に当ててくるだろう。そう思うと、もう黙っているしかない。
無言で何度も首を上下に振るディアボロを見て、トリッシュは満足したように、よし、とつぶやいた。
トリッシュはカツカツとヒールを鳴らしながら壁に突き刺さっている包丁のそばまで来ると、柄を握りしめて力一杯引っ張った。ミシ、という音が聞こえた後に包丁が抜ける。こういうシーンを見ると、スパイス・ガールでなくてトリッシュ自身でも壁に包丁を埋めるのは簡単なんじゃないだろうかとディアボロは思ってしまった。そんなこと、怖くて絶対に言えないが。
トリッシュが自分の横を通ってキッチンに戻る時、ディアボロは顔を青ざめさせながら、壁に空いているであろう穴をどうやって塞ごうかと考えていた。
またレシピ本とにらめっこをしながら、料理が再開される。口には出さないが、ディアボロはやはり心配でしょうがない。彼女が怪我をしないだろうかとか、そしてちゃんと人の食べられるものを作れるのだろうかとか。今のところ、料理に関してはなんらハプニングは起こっていないように見える。ほのかに漂ってくる匂いも普通にいい香りだ。だからといって、油断はできない。
本当ならば口は出せなくとも彼女の近くで見守っていたいのだが、先ほどそうしようとしたらトリッシュに大人しく座っていろとボディブローを決められたので、それもできない。
「・・・大さじ一杯ってどれくらいなのかしら」
不意に、ぼそりと声が聞こえた。慌ててトリッシュの方を見れば、彼女は眉間に皺を寄せて難しい顔をしながらレシピ本を睨んでいた。一気にディアボロの緊張が高まる。頼むから自分に聞いてくれ。心の中で何度もそう願った。しかし、現実は非情だ。
「まぁいいか」
どぼどぼと、なにやら白い粒状のもの……ディアボロが思うにおそらく塩、が鍋の中に放り込まれていく。どうやら彼女は一杯の意味をはき違えているらしい。もちろん大さじ一杯といえば、専用の計量スプーン一すくい分、という意味で、大雑把にたくさん入れる、という意味ではないのだが。いや、それよりも塩が大さじ一杯の時点でまずおかしい。どこか見間違えているのではないだろうか。
娘の行動を見て、ディアボロはドナテラを思い出す。彼女もまた、今の娘と同じことをしていた。できることならこういうところだけは自分に似て欲しかったと思う。自分なら、几帳面なぐらいきっちりと計るというのに。
「トリッシュ、一つ聞いてもいいか?」
そろそろ沈黙しているのが辛くなってきたディアボロは、少しでも彼女の真意を知ろうと口を開く。
「なによ」
少しぴりぴりとした声で、トリッシュは振り向かないまま言った。
「どうして急に、料理なんてしようと思ったんだ?今までずっと私がしていたんだ、無理はしなくていいんだぞ」
ディアボロの言葉に、またトリッシュの肩がヒクリと揺れた。まさかまた怒らせてしまったのだろうかと、ディアボロは体を震わせる。飛んでくるであろう包丁に身構えたが、しかし予想に反して、いつまでもそれが飛んでくることはなかった。
ゆっくりとトリッシュがこちらに振り返る。その顔は、心なしか赤くなっていた。
「あんた、今日がなんの日か知らないの?」
唐突にそう言われ、ディアボロは頭を捻る。しかし答えは出なかった。そんな彼に、トリッシュはじれったそうに一点を指差す。ディアボロがその指の示す先に目を向けると、そこにはカレンダーがあった。今日の日付の所を見ると、なにやら赤いペンで囲ってある。よく見れば、そこには小さな字で、父の日、と書かれていた。
その瞬間、ようやく今日がなんの日かを知り、そしてトリッシュがなんのために普段やりもしない料理を作っているのかを知って、ディアボロは感動のために言葉を失った。最愛の娘は自分のために、料理を作ってくれていたのだ。
カレンダーから視線を外して、ディアボロはトリッシュを見る。すると、彼女はふいと目を逸らした。やはり、顔がわずかに赤い。
「いっつも家事をしてもらったり、ジョルノに押し付けられているとはいえ仕事をしてるんだから、今日ぐらいは親孝行したっていいでしょ」
いい訳をするように、トリッシュは言った。それからすぐに料理に戻ってしまう。ディアボロは幸せすぎて嗚咽を漏らしてしまいそうになりながら、今度こそ大人しく料理ができるのを待った。心の中でドナテラに何度も、良い子を産んでくれてありがとう、と感謝を述べていた。たとえこの後、ディアボロの前に運ばれてきた料理が見た目は完璧でも、やはり料理の腕は母親似らしく塩の味しかしなくても、だ。
次の日、せっかく娘が作ってくれたのだと根性と愛情で料理を完食したディアボロは、塩分過多で見事に体調を壊していた。だがトリッシュに看病してもらえたため、それはそれで幸せだったらしい。ただ、料理だけはなにがあろうとも絶対にもう作らせないと誓った。
END
シュガーとリンゴォの場合。
テーブルをはさんで向かい合うようにして座らされたリンゴォは、テーブルの上に置かれている両手で持てるほどの大きさの空の桶と、立ってこちらを見下ろしているシュガーを交互に見た。自分がこうして座らされているということはなにかしらの用事があるのだろうが、その目的がわからない。彼女の行動はいつも唐突で、リンゴォの予測できないものばかりだった。なので無意識に身構えてしまう。
「シュガー、これは・・・」
「リンゴォは今日がなんの日かご存知ですか?」
リンゴォの言葉を遮って、シュガーは尋ねた。
なんの日、なのだろうか。リンゴォは記憶を探って考える。こうやって聞いてくるぐらいなのだから、なにか意味のある日のはずだ。シュガーの誕生日ではないし、自分の誕生日でもない。二人で作ったなにかしらの記念日でもなかったはずだ。
「すまない、俺にはなんのことだか・・・」
真面目なリンゴォは、本当に申し訳なさそうに謝る。そんな彼を見て、シュガーはくすくすと喉を鳴らして笑った。
「いいんです、初めからあなたが知っているとは思ってませんでしたから」
「・・・・・・」
相手が気分を害さなかったのはよかったが、果たしてこれでいいのだろうか。リンゴォはそう思ったが、悪びれもなく言われてなにも言い返せなくなる。結局、リンゴォは黙ったまま言葉の続きを待った。
「今日は世間では父の日と言って、父親に感謝を表す日なんだそうです」
「父親に感謝を・・・」
「えぇ。なのであたしの父親のかわりであるリンゴォに、プレゼントをしようと思って」
シュガーの言葉に、リンゴォは深く感動してしまう。なにか見返りを期待してシュガーを預かっていたわけてばない。だがこうやってシュガー自らなにかプレゼントをくれるというのはとても嬉しいものだった。しかしそうなってくると、目の前に置かれている桶が気になってしまう。まさかこれがプレゼントだろうか。
そう思っていると、シュガーはリンゴォに背を向けて部屋の隅に置いてある古くなった木箱のもとへ向かった。それはシュガーの玩具箱というか、宝物を入れているもので、決して他の人間には触らせてくれないものだった。箱の中を手探りで目的の物を探している。やがて見つかったのか、シュガーは手の中におさまるほどのそれを持って再びリンゴォの前に立った。
「人形か?」
彼女の手におさまっていたのは、手作りらしい人形だった。決して可愛いとはいえないデザインだが、どこか愛嬌のある顔をしていた。おそらくシュガーがリンゴォにプレゼントをしようとよく見えない目で一生懸命に作ったのだろう。
「そうです。でもまだ完成ではありません」
「まだ?」
リンゴォが見る分にはもう完成しているように見えるが、いったいなにが足りないのだろうか。そう思っていると、シュガーはいったん人形をテーブルの上に置いた。それから、先ほどからテーブルの上に乗っていた桶に両手を添えた。呼吸を整えるように小さく息を吐くと、神経を集中させるように両目を瞑る。すると、なにも入っていないはずの桶の底から透明な水が溢れ出てきた。見る見るうちにそれは桶を満たし、やがて入りきらなくなって添えていたシュガーの手とテーブルを濡らす。その段階になって、シュガーはようやく瞼を開けた。目の前で非現実的なことが起こっていたが、これが彼女のスタンド能力と知っていたので、リンゴォはなにも言わずにただ意図の読めない彼女の行動を見守る。
シュガーは濡れた手を気にしないまま、再び人形を手に取った。それを水で満たされた桶の上にかざす。それを見て、まさか、とリンゴォは思った。
「この人形をこの水の中に入れて、高価なものに変えたら完成です」
「なっ、待てシュガー・・・」
制止させようとリンゴォは手を伸ばしたが、すでに人形はシュガーの手から離れていた。ぽちゃんと音を立てて、人形が水の中に落ちる。こうなったらもう彼女のお決まりの質問が始まってしまう。そうなる前に、リンゴォは自分の手首に巻いている腕時計に手を伸ばした。その時計のつまみを回し、マンダムを発現させる。6秒間だけ、時間が巻き戻った。
「この人形をこの水の中に入れ・・・」
シュガーがその台詞を言い終わる前に、リンゴォは彼女の手から人形を取る。その行動に、シュガーは目を丸くしてリンゴォの方を向いた。
「どうしたんですか?」
「人形は、このままでいい」
「え?でも、私のスタンドならもっと綺麗なものにできますよ」
「このままがいいんだ」
純粋にシュガーが手作りしてくれたものがいい。そっちの方が、ずっと嬉しい。リンゴォがそう伝えると、シュガーは不思議そうに首をかしげた。
「そうなんですか?」
「あぁ」
「・・・リンゴォがそう言うのなら、いいんですけど」
彼女自身はあまり納得していないようだったが、それでもそう言った。
「シュガー、ありがとう」
大事そうにシュガーの作ってくれた人形を抱きながら、リンゴォは心の底から礼を言う。すると、シュガーはにこりと可愛らしい笑みを浮かべた。
「どういたしまして。そしてこちらこそ、いつもあたしを大事にしてくれてありがとうございます。これからもどうか、よろしくお願いしますわ」
「あぁ、もちろんだ」
親しげにシュガーがリンゴォに抱き付く。その細い体をリンゴォはためらいがちに、しかししっかりと抱き返した。
END
料理が得意な男と料理が苦手な女の子の組み合わせが大好きです。というか主夫が好きです。
シュガ+リンはどこまでも仲良しさんだといい。
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