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高校生早人と吉良。
ちょっとずつ歩み寄る。

 

 

 


 キラヨシカゲ、という言葉が耳に入り、足を止めて反射的に振り返った。数歩離れた先で、三人の男性がなにやら話し合っている。みなすでに成人しているようだが、まだ歳若い。20代になったばかりぐらいだろう。一人は背も高く、顔の彫りも深い。さぞ女の子からもてることだろう。ヘアスタイルが物凄く、個性的ではあるが。もう一人は身長は平均よりも少し高いぐらい。絵に描いたような悪人顔をしている。でも雰囲気からはあまり悪い感じはしない。きっとその顔のせいで、人から敬遠されることもあるだろう。最後に、平均よりも身長が低い男。髪の色素が薄く、優しげな顔をしている。
 彼らがキラヨシカゲと言ったのは明らかだった。この三人以外に、僕の周りには人はいない。なぜキラヨシカゲの話をしているのだろうか。数年前に行方不明になった人物の噂話を今更しているとは到底思えない。それに、彼らはなにやら真剣に話し込んでいる。まさか、と思う。まさか、彼らはキラヨシカゲが殺人鬼だと知っていて、追っているのではないだろうか。その場合、彼らもまたスタンドという不思議な能力を持っている可能性が高い。
「あの、すみません」
 僕は彼らに声をかけた。三人分の目が、一斉にこちらを見る。僕が声をかけた理由を探っているようだった。
「吉良吉影のこと、知ってるんですか?」
 その名前を出すと、急に顔つきが変わった。雰囲気が張り詰める。やはり、と思った。彼らは、キラヨシカゲが殺人鬼だと知っている。そして、探しているのだ。
「そういうお前こそ、知ってんのか?」
 一番背の高い男が僕に尋ね返す。さて、どうしたものか。はっきり言ってしまえば、知っている。というか、表向き家族として一緒に暮らしている。それを言えば、彼らはすぐにでも僕の家へやってきて、キラヨシカゲを捕まえようとするだろう。そんな雰囲気だ。
 彼らはキラヨシカゲを捕まえて、どうするのだろうか。警察にこいつは殺人鬼だと言って渡したとしても、証拠がないから笑い話にしかならないだろう。なら殺すだろうか。証拠が残らないように、スタンドという能力で。しかし、目の前にいる彼らが誰かを殺すような人間には見えない。島流しかな、なんて、のん気にそんなことを考えてしまう。
「・・・今は、知らないんです。もう何年も会ってないので。ただ昔、まだ僕が小さい頃、遊んでもらってて」
 嘘を付いた。あからさまに、彼らは落胆したような顔をする。
「吉良吉影のこと、探してるんですよね。もし見つけたら、彼に言ってもらえませんか?『川尻早人が会いたがっていた』、と」
 自分の言葉があまりにも白々しすぎて、薄ら笑いが浮かびそうになる。それをこらえながら、僕は言った。僕の名前は明かしても大丈夫だろう。僕の考えがわかる超能力者でもない限り、川尻早人という名前からキラヨシカゲの居所を突き止められるわけがない。キラヨシカゲは今、川尻浩作の顔を持って生活しているのだから。
 じゃあこれで、と僕は会話を切り上げようとする。その時初めて、一番背の低い男がずっと僕の手を見ているのがわかった。どうやら彼らはキラヨシカゲが生粋の手フェチであることも知っているらしい。
「綺麗な手だね」
「ありがとうございます。昔、吉良吉影にもよく言われました」
 本当は、今も言われているけど。
 小さく彼らに手を振って、僕はこの場を後にした。


「今日、あんたを探してる人達に会ったよ」
 言うと、彼は眉をひそめる。昼間に会った男性達の身体的特徴を述べると、更に眉間の皺は深くなった。
「心当たりがありそうだね」
「ありすぎて困る。・・・そうか、あいつらまだ私を追ってたのか」
 後半は呟くように言った。どうやら、あの男性達と彼は面識があるようだ。無意識なのか右手で左の手を撫でている。昔、そこを怪我でもしたのだろうか。よく考えれば、僕は彼と何年も一緒に暮らしているというのに、彼の過去をまったく知らない。どんな両親がいたのかとか、どんな子供だったのかとか。何度か見たことのある、腕の内側にある煙草の火を押し付けられたような火傷の痕が、今の彼の殺人衝動に関係があるのかもしれないし、ないのかもしれない。彼の過去というのにあまり興味がなかったので、聞いたことはなかった。
「仗助達に、なにか言ったか?」
 一瞬誰だろう、と思って、すぐに今日出会ったあの三人のうちの誰かのことだと気が付く。
「言ってないよ。僕の名前は言ったけど、それぐらいは大丈夫だと思うし」
「だろうな。言ってたのなら、私はこうやって我が家に帰ってこれてない」
 我が家、という言葉に少し抵抗を覚えたが、僕は結局なにも言わなかった。その言葉が彼の口から自然と出てきたように見えたから。
 彼にとってこの家がどんな意味を持っているのか、そして僕と母がどんな意味を持っているのかを時折考える。ただの自分の素性を隠すための隠れ蓑だろうか。それとも、本当の家族のように思ってくれているのだろうか。やはり、聞いたことがないのでわからない。
「不可解なやつだ、お前は」
 突然言われて、僕は彼の方を見た。
「なんで?」
「普段から私を殺したいと言っているくせに、そんな素振りも見せない。それに、今回も仗助達に私のことを言わなかった」
「だって、敵の敵は味方だとは限らないじゃない」
 はぐらかすように言うと、彼はじっとこちらを見つめたまま視線を逸らさない。僕の意図を読み取ろうとしているようだった。だがやがてもう一度、不可解だ、と呟く。そして視線を逸らした。
 そうかも知れない、と思う。僕の行動は、彼にとって不可解だろう。でも僕にとっても、彼の行動は不可解なのだ。川尻浩作として生き、朝には会社に出勤して、遅くとも夜の7時には帰ってきて僕達と一緒に食事を取る。僕達を養うことに対して少しでも嫌な顔はしたことはないし、なにより彼は母を大事にしてくれている。あまり表立って態度には示さないが、雰囲気でわかる。だから母も、彼を愛しているのだ。自分が平穏に暮らすためとはいえ、まったくの他人である僕達にそこまでしてくれるのはなぜだろうか。
「あんたは家族が欲しかったの?」
 なんの脈絡もない言葉に、彼はもう一度視線をこちらに向ける。普段、僕と似てほとんどその表情は変えないが、今はわずかに驚いたような顔をしていた。そして僕も驚いた。この言葉は、声に出して言うつもりはなかったのに。
「ごめん、今の言葉忘れて」
「・・・そうなんだろうか」
「うん?」
 僕に問いかけているような口調でもあったし、自問しているような口調でもあった。
「私は普通に生きていたら、お前と会うこともなく、おそらく一生独身だっただろう」
「だろうね」
「しかし、ない物ねだりをしていたつもりもなかった」
「うん」
 彼にしては珍しく、要領を得ない喋り方だ。それでも僕は彼の言葉に耳を傾けた。
「本当は、どうだったんだろうか」
「家族が欲しかったかどうか、ということ?」
「昔、得られなかった、つつましいながらも、幸せな家庭」
 その言葉に子供の頃の彼を垣間見た気がしたが、口は挟まない。
「私はそれを求めていたのか?」
「・・・僕に聞かれても、わかるわけないじゃない」
「それもそう、だな」
 彼の過去がどうであれ、彼が今どう思っているかであれ、僕にはまったくわからない。でも、彼が僕達を心のどこかで大事にしてくれているということは、知っている。本人が自覚しているかどうかは別だけれど。
「ねぇ、吉良さん」
 滅多に呼ばない名前で呼んで、こちらに注意を向けさせる。案の定、彼は興味深そうにこちらを見た。僕は数年前に殺されてしまった実父に心の中で詫びながら、口を開く。
「あんたはどうしようもない殺人鬼だけど、でももうちょっと、僕はあんたとの家族ごっこに付き合ってもいいと思ってるんだ」
「・・・そうか」
 ほんの少しだけだけど、彼が微笑んだ気がした。

 


END

 

 


このパラレルワールドには一応仗助達はいるようです。今後出るかどうかは別として。
今更ですがこの時の吉良は私の中では40歳前後です。39歳~42歳ぐらいの間辺りでいいんじゃないかと思います(曖昧)
承太郎の例もあるので意外と4部本編よりも外見は若返ってるかもしれない。個人的にはちゃんと歳相応であってほしいけど。

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1月14日生まれの新潟県民。

ジョジョラーでケモナーでおっさん&おじいちゃんスキーでSHK国民。
最近はfkmt作品に手を出してます。
乙一作品と三原ミツカズ作品と藤田和日郎作品も好き。
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