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パラレルな男と猫の話の続きです。折り返し地点。イチャイチャのターン。
ぺたりと、男が猫の裸の肌に触れた。人間の姿の時に彼から触れてくるのは珍しい。そしてセックスの後に、ベタベタとしてくるのも珍しい。普段ならば、終わってしまえば一人でシャワーを浴びに行ってしまうか、あまりにも疲れた時はさっさと寝てしまうというのに。
こちらから触ると怒るくせに、と思いながら、猫は男の好きなようにさせてやった。彼は腕を指先で撫で、それから胸元、腹を撫でる。なにかを確認するような手つきだった。
緩い刺激を受け続けながら、向こうから触ってくるというのも問題だな、と猫は思った。また彼を抱きたくなってしまう。猫は自身で性欲には淡白な方だと思っていたが、どうやら男に対してのみ違っていたらしい。
「なんだ、さっきから」
これ以上触れられると手を出してしまいそうなので、猫は男に問いかける。男は手を止め、猫の顔を見た。不満そうにわずかに眉間に皺が寄っている。なんなんだ、と猫は思った。
なにが不満だ。ちゃんとあんたが満足するくらい、奉仕をしてやっただろう。
「猫のくせに鍛えられた体をしている、と思ってな」
それはお前も一緒だろう、と猫は思う。男は基本引きこもりのくせに、素晴らしくバランスの取れた体をしている。いったいいつ鍛えているのだろうか。この体系を維持するには、定期的に体を動かしていないと駄目だろう。この家の地下にでもトレーニングルームでもあるのかと、猫は疑っていた。
面白くなさそうに、男はまた猫の肌を撫でる。なにが面白いのか、それとも面白くないからやっているのか、何度も腹筋の割れ目を撫でていた。猫は彼の手首を掴んでそれをやめさせる。すると金色の瞳で睨まれてしまった。
「気に入らん。普段は外をふらふら出歩いているか、ベッドでごろごろしているだけのくせに」
悪かったな、暇で。
とは、声に出しては言わなかった。実際、やることがないのだからしょうがない。自由に猫や人間になれるのと、体内に寄生しているムシのおかげで鉄分を操れる能力を買われて彼に敵対する者の暗殺を任される時があるが、それ以外は普通の猫と同じように時間を潰すしかない。彼以外の人間と関わり合うつもりもなかった。
「いいだろう。あんただって、十分見れる体をしてるじゃないか」
むしろどちらかといえば、細身の猫よりもいい体をしている。モデルとかをやればいいのに、と猫は思っていた。彼は全力で嫌がるだろうが。
猫の言葉に、男はつまらなそうに鼻を鳴らす。
「鍛えているんだ、当たり前だろう。だが貴様は、なにもしていないのにそれだ」
彼は変なところで拗ねることがあるから困る。そんな時、猫は男のご機嫌取りに頭を使わなくてはいけない。なにも言葉を返さなくても不機嫌になるし、当然下手なことを言っても不機嫌になる。
なぜ自分が人間に気を使わなければいけないのか、と思うが、そろそろこれが当たり前になってきたのでもう諦めた。彼はそういう男なのだ。考えてもしょうがない。
男は世の中はある程度の我侭が通るということを知っている。そしてその我侭を通すだけの力を持っている。力と知恵、権力と富、そして男にしては整った顔立ちを持っていて、どのようにすれば一番自分の都合のいいように物事が進むのかを彼はよく理解していた。だから猫はたとえ相手が人間であれ、彼に逆らえなくてもしょうがないと思っている。
ただたんに飼い慣らされてしまっているだけ、というのを、猫はいつまでも否定し続けていた。
「化物特権だ。諦めろ」
「煩い、黙れ。男として納得がいかん」
そんなことを言われても困るのだが。自分が言葉を誤ったことに気が付き、猫は小さくため息を付く。
「・・・お前は『女』、だろう」
思わず漏れた言葉に、すぐにしまった、と思った。猫の言わんとしていることに気が付いたのか、男は不愉快そうに目を細める。だがすぐに口端をつり上げて笑った。嫌な予感。
男は猫の手を振り解くと、そのまま腕を伸ばして猫の顎を取る。まずい、と猫は思った。男は完全に捕食者の目をしている。背中を嫌な汗がつたった。
「ずいぶんな物言いだな、畜生の分際で。なんなら私が貴様を『女』にしてやろうか」
この男はどちらもいけるのか、と場違いな感想を持つ。だが今はそんなことを考えている場合ではない。間違いなく貞操の危機に直面している。
「遠慮しておこう」
「この私が言っているのだぞ。遠慮するな」
赤い舌で下唇を舐められながら言われる。普段からそれだけ積極的なら嬉しいが、今はまったく嬉しくはない。
「・・・俺が悪かった。先ほどの言葉は撤回するから、本当に止してくれ」
受け手に回ったことがないので無理だ。未知の扉を開ける気もまったくない。
猫が必死に謝ると、男は再びつまらなそうに鼻を鳴らしてから手を離した。なにも言わずにベッドから立ち上がり、部屋から出て行こうとする。シャワーを浴びに行くのだろうと猫は思った。彼の背中からは、あからさまに不機嫌だというオーラが放たれていた。
どうしたものか、と思い、猫も立ち上がって男に並ぶ。すると睨まれてしまった。
「ついてくるな。畜生と一緒に風呂に入る趣味はない」
「初めて会った時は入っただろう」
黙殺された。そんな彼に後ろから抱き付く。互いに足を止め、首だけ振り返った彼の目を覗き込む。
「頼むから機嫌を直してくれ」
長い髪を掻き分けて白い首筋を露出させると、そこにざらざらとした舌を這わせる。牙がうずいたが、噛み付くのは我慢した。ただ許しがもらえるように、優しく舐める。
愛撫をするように舌を使われて、ひくりと男の喉が動いた。
「おい・・・っ、やめろ」
小さく抵抗してきたが、力はこちらの方が上なので全身で彼を抑え付ける。
「女なんかと言って悪かった。あんたはそこらの女よりも、ずっと最高だ」
その体も、血肉の味も。
男の体が熱を持ってくる。このままなし崩しに許してくれればいいと、猫は思った。もっと言えば、再びベッドかバスルームで二回目に持ち込めるといい。そんな期待を込めて、猫は男に口付けをする。彼の口腔内を犯しながら、先ほど自分がされていたように男の肌を撫でた。男の体が小さく震え、鼻にかかったような声を上げる。
いける、と猫は思った。このまま男を崩せる。しかしそう思った瞬間、みぞおち辺りに鈍い痛みを感じた。男から口を離し、小さく呻く。どうやら男に肘打ちをされたらしい。完全に油断をしていたので、まともに喰らってしまった。痛みのために体が猫の姿に戻ってしまう。
そんな猫を、男は冷たい目で見下ろした。
「私がそんなことで丸め込めると思ったか、馬鹿め」
同じく冷たい声で言い捨てると、部屋から出て行ってしまった。床に爪を立てて痛みに耐えていた猫は、やがて一つ深呼吸をする。
ままならない。あの男だけは、ままならない。今までどんな人間も、自分の容姿にほだされて甘い顔をしたというのに。まったく、厄介だ。思いどおりにならない男にはまってしまっている自分が、酷く厄介だ。
鈍い痛みを抱えたまま、猫は小さく喉を鳴らして笑う。まぁそれもいいだろう、と思った。たまには人間に振り回されるのも悪くはない。むしろ彼のああいうところを気に入っている。化物である自分を恐れずに、手駒にしてしまった男。楽しいではないか。あの男も、今のこの関係も。
ひとしきり笑ってから、猫はその姿のまま歩き出す。そしてもう一度男にちょっかいを出すために、彼がいるであろうバスルームに向かった。
END
ボスは実は筋肉の付きづらい体質で、あの体系を維持するのに結構苦労してるんじゃないかなぁ、と思って。
あと、3話で終わる・・・はずです。私が途中で挫折しなければ。
リゾットには女王様なボスに萌えて仕方がない今日この頃です。
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