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予告していた通りにハロウィンでリゾディアを。むしろリゾ→ディア?
うちのリゾットが不遇に見えるのは多分気のせいだと思います。
「なんだ、吸血鬼のコスプレか?」
出会い頭に早々、ゆったりとソファに座っていたボスは俺に向かって言った。なんのことだと思い、しばし逡巡して、今日がハロウィンだということを思い出す。だからって、それはない。こっちは素だ。いつも通りだ。黒を貴重にした服も、赤い目も。
「嫌味か、露出狂のくせに」
一年中肌をさらしている男に言われたくもない。コスプレみたいな服を着ている奴に。
俺の言葉に、ボスはやれやれというふうに鼻を鳴らした。そして無言で立ち上がり、どこかへ行ってしまう。後を追ってもうざがられるだけだろうし、どうせすぐに戻ってくるだろうと俺は先ほどまでボスが座っていたソファへ腰をかけた。
それから予想した通り、ボスはすぐに戻ってきた。両手に一つずつ、透明な袋にラッピングされたクッキーを持って。その二つを目の前に差し出される。
「・・・くれるのか」
「ハロウィンだからな」
珍しいこともあるものだ。この守銭奴男が物をくれるなんて。
見た感じ、手作りのようだった。ほとんど一日中家にいるボスは、当然時間も多く余っていて、どうやら彼は暇になると家事に走るタイプらしかった。なので俺は彼が料理上手だということをよく知っている。ケーキやクッキーなどのデザートや菓子系も例外ではない。
「ただし」
俺が手を伸ばしかけると、制止をかけるように彼は言った。口端をつり上げ、ずいぶんと楽しそうに笑う。なんだか凄く嫌な予感がするんだが。
「やるのはどちらか一つだ。自分で選ぶといい」
彼の意図がわからず、俺は説明を求めるようにしてボスを見る。一つとはどういうことか。つまり、どちらも味が違うということか。だがボスの口から出た言葉は、俺の予想の斜め上を行っていた。
「ちなみに一つは私が作ったもので、もう一つはトリッシュが作ったものだ」
伸ばしかけていた手を瞬時に引っ込める。なんというロシアンルーレット。ボスが作ったものを選び損ねれば、間違いなく地獄が見れるような気がした。
彼の娘は料理が下手だ。壊滅的に下手だ。どこをどうやったらそんな味になるのかと問いたくなるほどだ。料理の腕だけは父親に似て欲しかったと、心底から思っていた。ボスが言うには、自分のチームの者に配ろうとわざわざ作っていたらしい。非常に女の子らしくてよろしいが、少しは自分の料理の腕を自覚してもらいたい。心の中でトリッシュのチームの者に合掌をした。
「さぁ選べ。遠慮はいらん」
むしろ全力で遠慮をさせて欲しい。きっとボスはこうやって俺で遊ぶために、わざわざ自分もクッキーを作ったのだろう。上司が部下で遊ぶな。万が一にでも死んだらどうしてくれるんだ。
覚悟を決めなくてはいけない。彼はなにがなんでも、どちらかを俺に選ばせようとするだろう。ならばなるべく早く決断をしなくてはいけない。最悪、俺が選ばなかった場合、無理やり口の中に突っ込んでくるということもありえる。彼は気が長い方ではないのだから。
任務中と同じくらい、もしくはそれ以上に神経を集中させて二つのクッキーを見比べる。トリッシュの作ったものは味がどれだけ酷くても、見た目だけは完璧なのが腹立たしい。見ただけで判断をするというのは、ほぼ不可能だ。
「ボス」
「なんだ」
「ヒント、お願いします」
思わず敬語になってしまう。だがこれは本当にヒントがないと駄目だ。
「暗殺には直感力や運というものも必要になってくるんじゃないのか?常に最前線で暗殺をしていたお前なら大丈夫だ」
無責任なことを言ってくれる。直感力はともかく、運というものが俺にはあまりないということくらい、自覚している。なのでできるだけ彼から情報を引き出したい。
「優秀な部下が死んでもいいのか」
「自分で優秀とか言うな。というか、貴様はトリッシュの料理をなんだと思っている」
「バイオ兵器」
蹴られた。だったらなんでお前は娘の作ったクッキーでこんな悪質な悪戯をしているのだと問いたい。
だが自分のために、ここは素直に謝っておいた。ここで臍を曲げられてヒントがもらえなかったら困る。本当に困る。任務中に死ぬのはかまわないが、食中毒で死ぬのはごめんだ。
「まぁ可愛い部下のためだからな。ヒントはやらんでもない」
白々しい。可愛いだなんて、思ったこともないくせに。だがもちろん、口に出しては言わない。ただヒントを待つ。
「私の作った方のクッキーには、貴様に対する愛情がたっぷり詰まっている、とでも言っておこう」
ふふん、と鼻で笑いながら、臆面もなく似合わない台詞をさらりという。
ヒントでもなんでもないうえにハードルをはね上げやがった…!
内心で叫び声を上げる。自分の頬の筋肉が引きつるのがわかった。愛情だなんて、あからさますぎる嘘だ。こんな金銭欲と性欲と娘への愛でできているような男が、少なくとも俺に愛情なんて向けるはずがない。よくて自分のペットに向けるような愛だ。自分で言っていて悲しくはなるが、事実だから仕方がない。
だがしかし、これで絶対に外すことができなくなった。好きな相手にそんなことを言われてしまったら、男として外せない。おそらくボスはそこまで計算してでの発言なのだろう。むかつく。
「どっちにする?私はどっちでもいいんだぞ」
いつもより声が楽しそうだ。完全にこの状況を楽しんでいる。俺は5分ほど悩み、考えた結果、結局直感で行くことにした。こちらから見て左のクッキーを指差す。
「そっちだ」
その瞬間、ボスはここ一年見てきた中で一番いい笑顔を見せた。それはもう見とれてしまうほどの。……死んだかもな、俺。
それから二日間、俺は嘔吐と熱に悩まされた。
トリッシュ、いったいなにを入れたらこんなことになるんだ。
ベッドで寝ている間、クッキーに入れられている材料を検討してみたが、結局答えは出なかった。そして怖くて、作った本人にも聞こうとは思わなかった。
「ここまで生命の危機を感じたのは、今まで生きてきてはじめてだったぞ」
「よかったな、貴重な体験ができて」
クッキーを食べてから三日目、俺はボスにそうもらした。ベッドの横に椅子を置いて本を読んでいた彼は、顔をあげて口端をつり上げる。この三日間、苦しんでいる俺を見て彼はご機嫌だった。看病をするわけでもないくせに、ずっと俺の傍を離れずにこちらを観察していたのだから、本当に趣味が悪い。
「あんたの娘だろ。それなのになぜあんなに料理の腕が壊滅的なんだ。本当に血は繋がっているのか?」
「・・・なにか言ったか?」
「・・・いや、別に」
スタンドを構えながらすごまれる。
「料理の腕は母親似なんだ。ドナテラの料理も酷かったからな」
昔のことを思い出しているのか、わずかに彼の顔が青ざめた。
「なんだ、あんたの恋人は魔女かなんかだったのか?」
「貴様、さっきから私に喧嘩を売っているのか」
再びスタンドを構える。だからそんなのだったらはじめからこんな悪質な悪戯をするなと言いたい。自分でとやかく言う分にはいいが、他人から言われるのが嫌なのだろうが。
「結局、ボスが作った方のクッキーはどうしたんだ?娘にやったのか?」
まだ残していて、俺にくれないかと淡い期待をしながら聞いてみる。すると彼は真実を口にした。
「あぁ、そのことだがな、最初から私の作ったクッキーなど用意してなかった」
……は?
「お菓子をくれないと悪戯するぞ、と言われてもうざいからな、トリッシュが作ったのを少しもらっておいた」
悪魔だ。悪魔がここにいる。
ここに来てようやく、俺は彼の言っていた、どっちでもいい、という言葉の意味を正しく理解した。どっちを選んでも、同じだったというわけか。ピザの角に頭をぶつけて死ねばいいのに。
「この三日間、なかなか楽しかったぞ」
「ボス・・・とりあえず夜道を歩く時は注意しておけ」
「残念ながら、夜道なんて歩かない」
あぁ、引きこもりだものな。
いい加減転職をした方がいいのではないかと半ば本気で思いながら、俺は深いため息をついた。
END
ハッピーハロウィン?
リゾット頑張れ、超頑張れ。
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