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ジョルノとジョルノの母親の話です。この二人は仲良し親子、だといいなぁ。

 

 

 

 


 長かったようで、実はとても短い期間しか経ってはいなかったが、地元に帰ってくるととても懐かしいと感じた。それはたぶん、この数日間で体験したできごとの内容が濃すぎたせいだろう。自分達はあれだけ必死になって、それこそ生死の境をさ迷いながら戦っていたというのに、この街は欠伸がでるほど穏やかで、どこか笑えてしまう。
「ただいま。母さん、いる?」
 玄関のドアを開けながら、家に上がり込む。地元に帰ってきてから僕が真先に向かったのは、学校の寮ではなく実家だった。最近まったく家には帰っていなかったから、母に会うのはほぼ一ヶ月ぶりだ。
 バタバタと奥の方で騒がしい足音がきこえる。かと思えば、母が姿を現した。彼女は僕の姿を見て驚いたように大きく目を見開く。そして、こちらにむかって駆け出してきた。
「ハルノ!あなた、学校にも行かずにどこに行ってたのよ」
 広げられた彼女の腕の中に抱きしめられてしまう。正直、この反応は予測していなかったのでこちらも驚いてしまった。そこまで息子に対して愛のない母親ではなかったが、ここまでストレートに愛情表現をする母親でもなかったはずだ。
「寮に戻ってなかったって聞いて、私、本当に心配したんだからね」
 まさか、と言いそうになったが、僕を抱きしめながらこちらを見上げる彼女の目じりに涙が溜っているのを見て言葉を呑みこむ。代わりに、ごめん、と一つ謝った。
 予想外の反応ではあったが、とりあえず母が元気そうだったので安心した。真先に実家に帰って来たのは、母の安否を確かめるためだ。万が一、ボスが今回のことで母のことについて調べ、彼女に危害を加えていたらどうしようかと思っていた。だが、流石のボスもあの短い期間ではなにもできなかったようだ。
 僕が小さかった頃、母は僕をあまり構ってくれなかったが、それでも彼女のことは嫌いではない。彼女はただ、自分の時間を自分の好きなように使っていただけなのだ。僕も今は自分の好きなように時間を使っているから、これはお互い様だった。
 彼女は一人の母親である前に、ただの女だった。それに10代の時に僕を産んだから、まだまだ遊びたい盛りだったはずだ。だからしょうがないんだと思う。実際、今こうやって見ている母はまだ十分に若くて、幼い頃にあまり世話をしてもらえなかったというのも手伝って、彼女を相手にしていると母親というよりも歳の離れた女友達、という感じだ。
 ふと熱心な視線を感じて、僕は母の方に目を向ける。彼女は猫のように、じっとこちらを見ていた。
「なに?顔になにかついてる?」
 尋ねると、彼女は首を横に振りながら僕の体を解放した。そして、腕を伸ばして僕の頬を指先で一撫でする。
「ハルノ、なんか・・・、感じ変わった?昔から大人びた子だと思ってたけど、また一段と大人びたわね」
 そりゃあ、生死の境をさ迷っていれば精神的にも成長するし、そうなれば顔付きも変わるだろう。しかし彼女に本当のことを言うわけにもいかないため、適当に一ヶ月ぶりだからそう見えるんじゃないの、と言っておいた。すると母は、なにかに気がついたような顔をする。ニヤリと、意地が悪そうに笑った。
「わかった。ハルノ、彼女ができたんでしょ。あの人に似て、顔だけは良いから女の子にはもてるだろうし」
「とりあえず顔だけは良い、っていう言葉はそっくりそのままお返ししとく」
「やだ、褒めないでよ。照れるじゃない」
「嫌味で言ってるんだよ」
 照れたようにばしばしと僕の肩を叩いてくる彼女に、小さくため息をつく。僕は人を自分のペースに巻き込んでしまうのが得意だが、どうもこの人が相手だと自分のペースに巻き込めない。下手をすると、逆にこちらが彼女のペースに巻き込まれてしまう。変なところで、血の繋がりというものを感じた。
 あの人、というのは、おそらく僕の実父のことだろう。もしかしたら、母も父に対して嫌味を込めて顔だけは、なんて言ったのかもしれない。…なんて家族だ。顔は良いけど、性格がアレだなんて。いやきっと、僕はまだましだ。父のように、女遊びをしたあげく子供を認知しなかったということは、今のところないのだから。
「彼女を作るのはいいけど、ちゃんと避妊はするのよ」
 僕の考えていることを読んだように、母は急に真剣な表情と声色で言った。思わず、圧倒されてしまう。この言葉は、母親としてのものだったのか、それとも実体験に基づいた言葉だったのかは読み取れなかった。ただ、あまりにも彼女が真剣だったので、僕は無言で頷く。避妊もなにも、僕に彼女なんていないのだが。もしかしたら母は、数日間行方をくらませていたのは僕が女のところに入り浸っていたからだと思っているのかもしれない。そう思われるのは心外だったが、否定するとますます誤解されそうだったので、結局なにも言わないでおいた。
「あーあ、男ってみんな、私から離れていくのね。寂しくなっちゃうわ」
 どこか拗ねたような口調で母が呟く。男とは僕と実父のことだろうか。
「子供、作ろうかしら。今度は女の子。一緒にショッピングに行ったり、映画を見に行ったりするの」
 僕に意見を求めるような目で、母は尋ねる。もしかしたら、この言葉は僕に対するあてつけの意味もあったのかもしれない。僕にもうちょっと構ってくれと言ってるのだろうか。
「母さんだってまだ若いんだから、作ったら?ちゃんと育児ができるなら、ね」
 こちらもあてつけのように言ってやると、母は少しムッとしたように目じりをつり上げてこちらを睨んできた。しかしすぐに、悲しげな顔になる。少し、言い過ぎただろうか。なんて、僕は悪くないのに母に対してこう思ってしまうあたり、僕は彼女のペースに巻き込まれてしまっている。
「・・・映画、行こうか。これから」
 僕が呟くように言うと、母は先ほどとは打って変わって目を少女のようにキラキラとさせた。とても、15歳になる息子がいるとは思えない。まぁほとんど育児なんてしなかったので、母親特有のストレスなんて、彼女は感じていなかったのだろうけど。だから、若々しいままなのだ。
「デート?」
 母が尋ねる。デート、なのだろうか。母親と?それとこれとは違うような気がするが、とりあえず彼女の話に合わせておくことにした。
「まぁ・・・それでいいよ」
 僕が諦めたように言うと、母は嬉しそうな声を上げて僕の腕に自分の腕を絡めてきた。あ、なんか本当にデートするみたいだ。
「デートだったら男の方が女の子に奢ってあげるものよ、ハルノ」
「なにそれ、息子にたかるの?母さん」
「何日も無断外泊して母親を心配させたんだから、当然でしょ」
 理由はどうであれ、無断外泊をしてしまったのは事実なので、それ以上はなにも言えない。やっぱり女性の相手って面倒くさいな、と思いながら、それでも母に対して不快には思っていない自分がいて、それなら別にいいかと思った。

 


END

 

 

 

ジョルノとジョルノの母親は仲が悪くなければいいという願いをこめて。
この二人は親子というよりも、友達感覚だといいです。

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1月14日生まれの新潟県民。

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