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ジェンテ3巻のジジと幼女がツボすぎて我慢できなかった。今は反省している。
本編から10年後設定。捏造しまくり。本当に二人が大好きなだけだから、読んでも怒らないでくだしあ。










 10年もすると子供は見違えるほど成長する。つい先日まで幼子だと思っていた女の子が、この間単身でローマに引っ越してきた。挙げ句、意中の相手を目当てに、日々通っていたリストランテにシェフ見習いとして就職した。思い立ったらすぐに実行する、この行動力は昔から変わらない。むしろ、彼女は体が大きくなったということ以外、ほとんど変わっていない。色素の薄い髪も、猫のような瞳も、お喋りでませた性格も。そして、ジジが大好きだということも、高校を卒業した今でも、彼と『ごっこ遊び』をすることも。
「チャオ、ジジ。早速だけど、明日のは私と遊んでくださらない?」
 リストランテ『カゼッタ・デッロルソ』でジジと顔を会わせるやいなや、マッダレーナな一番にそう開口した。明日は、リストランテは定休日だ。
「また『ごっこ遊び』か?」
 ジジの問いに、彼女は肯定するように笑みを浮かべる。10年前と変わった、数少ないところだった。昔は、こんな色気のある笑い方はしなかった。
「そうよ。明日は、『恋人ごっこ』をしましょう」
 映画のチケットがあるの、と彼女は紙切れを2枚ひらひらとなびかせた。この発言に、なんとなしに話を聞いていたクラウディオが驚いたような顔をする。ルチアーノは眉間に皺を寄せた。しかし他の従業員達は、面白そうな顔をする。
 10年前も、マッダレーナのようにただ一人を目当てにシェフ見習いになった女の子がいた。ただ、そんな彼女とマッダレーナの違うところは、相手への積極性だ。
「……わかった」
 しばらく思案するように黙っていたジジは、やがて小さく言った。すると今度は、マッダレーナは嬉しそうな、子供っぽい笑顔を見せる。
「約束よ」
 待ち合わせ場所を確認すると、彼女は念を押すように言って、仕事の準備に取りかかった。


 翌日。
 ジジが約束よりも早く待ち合わせ場所を訪れると、すでにマッダレーナはそこにいた。いったいいつからそこにいたのだろう、とジジは思う。
 声をかけずに遠くから彼女を観察した。妙にそわそわとしていて、何度も時計を確認している。
 不意に彼女が視線に気が付いたように、腕時計から顔をあげてこちらを見た。途端に安堵したような表情になる。
 ジジはマッダレーナに近寄った。
「すまない、遅れて」
「本当よ。セニョリータを待たせるなんて、ダメね」
「昼は奢ろう」
「そのつもりよ」
 口を開けば、いつもの彼女だった。先ほどまではあんなにそわそわとして、不安そうだったのに。どうやら本当にジジが来てくれるかどうか、心配していたらしかった。
「さぁ、行きましょう」
 自然な動作で、マッダレーナがジジの腕に自分の腕を絡める。ジジはしばらくそれを見つめて、『恋人ごっこ』か、と納得した。
 並んで歩きながら映画館に向かう。その道中、彼女はよく喋った。ジジが相槌を打つだけでも、ダムから水が流れるように止め処なく、その形のいい唇から言葉が発せられる。
 マッダレーナが持っていた映画のチケットは、最近話題の恋愛映画だった。並んで椅子に座ると、彼女が今度は指を絡めてくる。それを握り返すと、彼女は驚いたようにジジを見た。そして、暗がりの中で笑う。
「いいわね。雰囲気がある」
 満足そうに言った。
 映画の内容がまったく頭に入らないまま、ジジはどうして自分がこんなにもマッダレーナに懐かれているのだろうと考える。はじめて声をかけられた時から、彼女はずっとジジ、ジジと言って傍に寄ってきた。
 ジジは自分が面白い人間ではないと自覚している。それに10年前より皺も増えたし、更に目も悪くなった。反面、マッダレーナは年々美しくなっていく。年寄りにかまうよりも、同年代の男を相手にした方がいいのではないだろうか。
 ジジは彼女にこんなに懐かれる理由がわからなかった。だが、彼女と一緒にいるのは嫌ではない。
「映画、ちゃんと見てなかったでしょう」
 上映が終わると、彼女はそう言った。頷くと、あなたらしいわ、と肩をすくめる。怒っている様子も、呆れている様子もなかった。予想していたことなのだろう。
 マッダレーナはジジに高望みをしない。ジジがどういう人間なのかをよく理解している。だから彼女と一緒にいても、自然体でいられるから楽だった。
「次はお昼ね。近くにリストランテがあるの。そこで食べましょう」
「あぁ」
 当然のように腕を絡めてくるマッダレーナを、ジジはエスコートした。
 入ったリストランテは、店の雰囲気こそいいが、フリオやテオのおかげで舌が肥えているせいで、味はあまり満足できるものではなかった。
「これなら、まだ私が作った方が美味しいわ」
「それは、どうだろうか」
「言ったわね」
 軽く睨みつけてくる彼女を、ジジは無言で流した。実際、まだまだ修行中な彼女の手料理は、この店のものと50歩100歩だった。逆に言えば、料理をはじめたばかりでこの店で出されるものと同等のレベルなのだから、彼女には才能があるのかもしれない。しかし、『カゼッタ・デッロルソ』で出すにはまだまだだ。
 ジジが会計を済ませ、二人は街中に出る。当てもなくローマ市街を見て回った。面白そうな店を見つけては、マッダレーナがジジを引き連れて入って行く。彼女と店を回るのは楽しく、ジジは自分でも驚くほど早く時間が過ぎていくのを感じた。


 18時を示す鐘が鳴る。その時には、二人は最初の待ち合わせ場所に戻ってきていた。
「今日は楽しかった?」
 目を合わせながら尋ねてくるマッダレーナに、ジジは頷く。
「楽しかった」
 ふふ、とマッダレーナが笑った。
「上出来ね。『恋人同士』なら、そう言うべきだわ」
 どうやら彼女は『恋人ごっこ』の最中だから、ジジがこう答えたと思ったらしい。実際は、本当に楽しんでいたというのに。どうしたらそれが伝わるものか、とジジは思案する。
 すると、マッダレーナの美しい顔が近付いてきた。
「…………」
 互いの唇が触れ合う。それだけで、すぐに彼女は離れていった。
「やっぱり、デートの締めはこれね」
 己の唇を指先でなぞりながら、彼女は満足そうに言った。
「私も今日は楽しかったわ。チャオ、明日またカゼッタで」
 手を軽く振って、マッダレーナがきびすを返す。ジジはとっさに腕を伸ばすと、彼女の手首を掴んだ。驚いたような表情で振り返る。しかし驚いているのは、ジジも同じだった。完全に、無意識だった。
 どうしようかと考えて、ジジは昨日の彼女の言葉を思い出す。
「明日は、『恋人ごっこ』をしましょう」
 今日はまだ、終わっていなかった。自分達は、まだ『恋人同士』だ。
「家まで送ろう」
 今はこの台詞が一番相応しいと思った。
 マッダレーナが、今日一番の笑顔を見せる。
「なら、家に寄っていって。夕食をご馳走するわ」
 絶対、美味しいって言わせてあげるんだから、と彼女は意気込んだ。
「一度、カゼッタに寄って欲しい」
「なに、忘れ物?」
「いや、ただワインを取りに行くだけだ」
「勝手に持ち出しちゃっていいの?」
「あぁ」
 本当にいいんだろうか、とマッダレーナは思ったが、ソムリエの彼が言うのだからいいのだろう、と結論付ける。
 二人は寄り添い合いながら、暗くなりかけているローマの街を歩いた。
 翌日、店の一番上等のワインがワインセラーから消えているのに気が付いて、ロレンツォが困ったような顔をするのだが、それはまた別の話。


END











ちなみにまだ二人は付き合ってないよ。
マッダレーナはとっととちゃんと告白すべき。
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プロフィール
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シノハ
性別:
女性
自己紹介:
1月14日生まれの新潟県民。

ジョジョラーでケモナーでおっさん&おじいちゃんスキーでSHK国民。
最近はfkmt作品に手を出してます。
乙一作品と三原ミツカズ作品と藤田和日郎作品も好き。
節操なしの浮気性です。
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