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からサー読破したよ記念。でもほんとはアル涼が書きたかっただけ。
二人で仲良くしてればいいじゃない・・・!
エレオノール様の元へ行く途中で、涼子という娘とすれ違った。そのまま通り過ぎるはずだったのだが、彼女に手を握られてしまう。まさかそんなことをされるとは思っていなかったので、私はわずかに驚いて娘を見た。すると彼女は、少し申し訳なさそうな顔をした。
「あの・・・あの時は助けてくれてありがとう。ごめんね、怪我をさせちゃって」
あの時、というのは、モン・サン・ミッシェルのことだろう。あれは別に彼女を助けたわけではなく、エレオノール様の命令に従っただけだ。それに、怪我というのも違う気がする。
ブリゲッラの手によって、私の体はずいぶんとボロボロになった。それを大方エレオノール様に直していただいたが、それでもまだ完全ではない。
「私のせいで怪我をさせちゃったんだから、私が直してあげられればいいんだけど・・・」
この娘と話すことはないはずだった。だから早く手を振りほどけばいい。しかしそうしようと思っても、私の体は動かなかった。体が重く、まるで歯車が錆付いているようだ。なぜだろうか。こんな力の弱い人間の手など、簡単に振りほどけるはずなのに。
私自身が、この娘の手を振りほどくのを拒んでいるから?
ふとそんな考えが浮かんで、すぐに否定する。拒んだところでどうなる。そんなこと、なんの益にもならないというのに。
私がどうすることもできずに佇んでいると、彼女はそうだ、と呟くようにして言う。
「私はアルレッキーノの体は直せないけど、髪を結いな直してあげることはできるよ」
いきなりなにを言うのか。別にそんなこと、してもらわなくてもいいのに。
「ずっと帽子かぶってると髪の毛ほつれるでしょ。結い直してあげるからついてきて」
そう言って手を引かれた。私にはこの娘にかまっている暇はないというのに。それでも私の体はなお重く、自分の思うようには動かない。
「娘、私は別に・・・」
そんなことをしてもらわなくてもいい、と言う前に、私を引っ張って前を歩いていた彼女が振り返った。少し眉根を寄せて、頬を膨らませる。
「あのねー、私にはちゃんと『涼子』って名前があるの。娘娘って失礼じゃない」
これは、怒っているのだろうか。それでもあまり怒気は感じなかった。名前を呼んでもらいたいという感情も、よくわからない。娘と呼ぶのと名前で呼ぶのと、どうちがうのだろうか。人間の感情は、私には複雑すぎる。
でもなぜか、呼ばなくてはいけないと感じた。おかしい。エレオノール様やフランシーヌ様に命令をされているわけじゃないのに。
「リョーコだよ、リョーコ」
「りょ、リョーコ?」
その瞬間、彼女は口端をつり上げ、すっと猫のように目を細めた。一拍遅れて、彼女が笑ったのだと理解する。どうしてこのタイミングで笑うのか、私にはわからなかった。笑わせようとしていたわけではない。ただ名前を呼んだだけで、彼女は笑った。私が膨大な年月をかけてもフランシーヌ様にして差し上げられなかったことを、彼女にはたったこれだけでできてしまった。それを不思議に思う。
彼女に手を引かれてやってきたのは、彼女が寝室として使っている部屋だった。椅子に座らされて待っていると、櫛を手にしたリョーコが背後に立つ。帽子を取られ、髪を縛っていたゴムも解かれた。櫛が髪を梳く。
「やっぱりいいなー、綺麗な金髪。憧れちゃう。アルレッキーノを見てから、一度はこうやって髪を梳かしてみたかったんだよね」
今にも歌い出しそうなほどリョーコはご機嫌だった。実際、小さく鼻歌を歌っている。
「これはリョーコが私になにかをしたいのではなく、リョーコが私にしたかったのではないのか?」
「えへへ、ほんとはそうなんだけどねー」
時折髪に指を絡めながら、丁重に梳いていく。以前にも、誰かにこうやって髪を梳いてもらったことがあったのを思い出した。他でもない、フランシーヌ様がわざわざしてくださったのだ。私の髪を優しく梳いて、結ってくださった。
何十年ぶりだろうか。こんなふうに、誰かに髪を触られるのは。フランシーヌ様以外に触られているというのに、不思議と不快には思わなかった。もっと違う、別のなにか。浮遊感にも似たような感覚。おそらく人間はこういうのを、心地良いと呼ぶのだろう。
「髪が長いといじりがいがあっていいよね。また今度結ってあげてもいい?」
再びゴムで私の髪を結いながら、リョーコは尋ねてきた。振り返り、彼女を見る。期待に満ちた表情だった。
「自分の髪があるだろう」
「でも短いからいじりがいがないんだよね」
「伸ばせばいい」
「うんでも・・・ほら、私が長くしたって、似合わないから」
自分の髪を抓みながら、リョーコは困ったような顔で言った。ころころと表情を変える人間だ、と思った。
「なぜそう思う。似合うのだから、伸ばせばいいだろう」
「ちょっと、思ってもないのにそんなこと言わないでよ。見たことないくせに」
リョーコはまた頬を膨らませた。確かに私は髪を伸ばしたリョーコを知らない。しかしだからこそ、見たいと思う。そしてそんなことを思う自分に、酷く驚いた。
「・・・すまない、適当に言って」
「別にいいよ。それに冗談でも似合うって言われたの初めてだったから、嬉しかったし」
私はリョーコの手から櫛を取った。そして立ち上がり、私が座っていた椅子に今度は彼女を座らせる。リョーコの背後に立ち、先ほど私にしてくれたのと同じように櫛で髪を梳いた。できるだけ優しくできるように、頭の中で先ほどの彼女の手つきを反すうする。
私の行動が予想外だったのか、最初は体を強張らせていたリョーコだったが、やがて緊張を解くようにして息をはいた。なにを言うでもなく、私のさせたいようにさせてくれる。
柔らかい髪だった。リョーコは私の髪を綺麗だと言っていたが、彼女の方がずっと美しいと思う。それはきっと、リョーコが生きているからなのだろう。人工的に作られた私のものとはまったく違う髪。
「リョーコ」
「うん?」
一旦手を止め、私は名前を呼ぶ。すると彼女は振り返った。
「髪が長かろうが短かろうが、私はリョーコの髪を梳こう。どんな長さであれ、この髪が美しいということに変わりはないのだから」
私の言葉にリョーコは驚いたように目を見開く。だが次の瞬間には、再び笑っていた。それも先ほどよりも、ずっときらきらとした笑みだった。
「うん、ありがとう。アルレッキーノ」
リョーコは様々な表情を見せる。なにより、私に笑顔を見せてくれる。
フランシーヌ様、私はあなたを笑わせることはついにできませんでしたが、この少女を笑わせることはできるのです。それもこちらが笑わせようと意図しているわけではないのに、こんなに綺麗な笑みを見せてくれるのです。そんな時、胸の歯車が不規則に軋むのです。この感情をなんと表せばいいのでしょう。リョーコの言葉を借りるなら、『嬉しい』と言うのかもしれません。フランシーヌ様、あなたに作り出されてから、こんな気持ちになるのは初めてです。
「先ほど、また私の髪を結ってもいいかと尋ねたな」
また笑って欲しい。私に笑いかけて欲しい。
「頼んでもいいのか?」
「もちろんだよ。だからアルレッキーノもまた、私の髪を梳いてね」
「あぁ、約束しよう」
きっとリョーコの傍にいれば、私の知らない感情をまだまだ教えてくれるだろう。それならば、私は嬉しい。
END
アルレッキーノの髪の色がわかりませんでした。とりあえず金髪で。
コロンビーヌと勝も書いてみたいなー、とか。パンタローネも。
勝はいろんなおにゃのことフラグ立てまくってるのに最終的に誰ともくっつかないとか・・・!
せめてリーゼかコロンビーヌとくっついてほしかったよ。
しかもへーまもリーゼとフラグ立てたのに最終的にはリョーコとかね。もうシノハさん吃驚だよ。アル涼涙目だよ。
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